【ネタバレ有り】まく子 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:西加奈子 2016年2月に福音館から出版
まく子の主要登場人物
慧(さとる)
本作の主人公の小学五年生。実家が温泉宿を経営している。
コズエ(こずえ)
小学五年生。母親が慧の温泉宿で住み込みで働くのに一緒に連れてこられた。
孝太(こうた)
慧のクラスメイト。お調子者だが優しい一面もある。
まく子 の簡単なあらすじ
舞台は温泉宿が立ち並ぶ集落です。主人公の慧は小学五年生で、「大人の男」に対して嫌悪感を持っています。そんな時、慧の両親が経営する温泉宿の従業員用の寮に親子が引っ越してきます。子供のコズエは慧と同じ小学五年生だが、子供とは思えない不思議な魅力を持っています。集落が一体となって取り組む祭や、コズエの親子の秘密を通して、慧は大人になるということを次第に理解するようになります。
まく子 の起承転結
【起】まく子 のあらすじ①
主人公の慧の実家は、集落の中で温泉宿を経営しています。
離れに従業員用の寮も用意してあり、常に家族や従業員に囲まれ、可愛がられて育ちました。
そんな時に、寮に親子が引っ越してきます。
子供の名前はコズエ。
美少女なのですが、謎めいた雰囲気で、慧はどう接していいのかがわかりません。
同学年ということもあり、慧とコズエは学校でも一緒に過ごすことが多くなります。
学校では目立たない慧に対して、コズエはすぐに人気者になります。
慧は父親が浮気を繰り返した経験から、大人の男に対する嫌悪感を持っています。
また、子供時代から一緒に過ごしたクラスメイトの女子が初潮を迎えてどんどん変化していくのも不気味に思っています。
子供から大人に変わっていく過程に不安と違和感を持っている慧にとって、性のにおいを感じさせないコズエはとても新鮮に映ります。
しかし、コズエは自分のことを宇宙人であると告白し、慧を混乱に陥れます。
確かに、コズエを見ていると異世界の人間を見ているような気持ちになるのでした。
【承】まく子 のあらすじ②
慧の集落では、夏に大きな祭りが行われます。
学校で学年ごとに一つのお神輿を作り、それを大人たちが祠に叩きつけて壊すのです。
一生懸命作ったお神輿をどうして大人たちに壊されないといけないのか、という疑問を慧は持っていますが、大人たちは教えてくれません。
今年もお神輿を作る時期が始まり、コズエの案で地球を模したお神輿の作成が始まりました。
お神輿作りを通して、慧とコズエは少しずつ距離を縮めます。
放課後に、人があまり来ない崖で定期的に会うようになったのですが、そこでコズエは砂や石をまくことに没頭します。
「何かをまくと絶対すぐに地面に落ちる」ということに魅力を感じているとコズエは言うのですが、それに対して慧は理解ができません。
しかし、コズエが何かをまくようになったのは慧がうっぷん晴らしに砂をまいたのがきっかけなので、自分の行動がコズエの楽しみを産んだのだと思うと少し誇らしく感じるようになります。
なごやかな雰囲気で、慧たちは祭りの日を迎えます。
【転】まく子 のあらすじ③
ついに祭りの日がやってきました。
いつも通り、各学年が作ったお神輿が祠に突っ込まれていきます。
慧たちの作ったお神輿は最後に突っ込まれることになりました。
低学年のお神輿が祠に叩きつけられて壊されるたびに、それを作った子供たちが泣いたり叫んだりします。
大人たちはそれを笑いながら見守っています。
慧はその後継に疑問を感じ、校長先生になぜこのような祭りをしないといけないのか、という疑問をぶつけます。
校長先生が何かを言おうとしたとき、温泉街で火事が発生します。
なんと、火の発生源はコズエの住んでいる部屋で、しかも放火されたようです。
この大事件のせいで、慧たちが作ったお神輿は壊されることなく、広場に放置されます。
けが人などはいませんでしたが、集落に警察官などが出入りするようになります。
集落は一気に犯人捜しのムードになり、殺伐とした雰囲気に飲み込まれました。
そんな中のある早朝、慧は精通を迎え、パニックになります。
汚れた服を洗おうと部屋を出ると、父の浮気相手が家の外にいました。
【結】まく子 のあらすじ④
慧は父の浮気相手が放火の犯人だと感じ、女を捕まえようとしますが、そこにコズエも現れて話を聞くと、女は「放火があったと聞いて心配で来た。
自分が夜中の間この宿を見守っていれば再犯は防げると思った」と言います。
嘘はついていないように思えたので、慧とコズエは女を信じることにします。
その証として、三人で広場に遺されたままのお神輿を祠に投げ入れようとします。
とても重いものでしたが、三人で力を合わせ、お神輿を完全に壊すことに成功しました。
その場で、女はもうこれ以上慧の家には近づかないことを誓い、慧はコズエに好意を告白します。
コズエも慧といると気持ちが昂ることを告白し、二人は両想いであることを確信しますが、コズエは自分は宇宙人であり、この気持ちを知った以上はこの地球を離れる必要がある、と言って姿を消します。
コズエの後にはソラという女の子が慧の家の寮に住むようになります。
コズエとはまた違うキャラクターのソラですが、少しずつ慧たちと打ち解けていくようになります。
ここで、コズエやソラといったよそからやってきた登場人物は、異なる文化からやってきた人という意味で「宇宙人」と表されてきたことが明かされます。
集落の中だけで育ってきた子供たちは、集落外の人たちの存在に目を向けるようになります。
まく子 を読んだ読書感想
全体を通して、慧の成長を感じることができて、最後まで読むと温かい気持ちになります。
決して慧は良い子供ではないですが、親との確執や、友達との微妙な関係を通してどんどん一人の男性に近づいていきます。
体の成長や気持ちの落ち込みなどは共感できる部分も多いです。
同じ人間でも多様性があってそれぞれを尊重する必要がある、ということをストーリーを通してきちんと教えてくれます。
キャラクターも一人一人が個性的で、楽しめます。
最後には慧の悩みが綺麗に昇華されているので、読んでいて達成感も得られるので、悩んだときにはこの本をまた読みたいと思いました。
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