【ネタバレ有り】逃げろ、手志朗 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:吉森大祐 2019年1月に講談社から出版
逃げろ、手志朗の主要登場人物
古畑手志朗(ふるはたてしろう)
会津藩藩士。
藤堂平助(とうどうへいすけ)
新撰組八番隊長。手志朗の身柄を預かる。
土方歳三(ひじかたとしぞう)
新撰組副長。
山南敬助(やまなみ)
新撰組総長。
いと(いと)
山南の下女。
逃げろ、手志朗 の簡単なあらすじ
会津藩士として幕末の京都の警備を続けていた古畑手志朗は、ある時に何者かに父親を暗殺されてしまいます。復讐に燃える手志朗が新たな所属先として選んだのは新撰組でしたが、そこは絶対的な上下関係と制裁の嵐が吹き荒れる恐怖の集団です。肉体的にも精神的にもボロボロになっていく手志朗を救ったのは、ある少女との出会いでした。
逃げろ、手志朗 の起承転結
【起】逃げろ、手志朗 のあらすじ①
元治元年(1864年)10月の晴れた日の午後に、古畑手志朗の父・敬之助が何者かによって暗殺される事件が発生しました。
敬之助は会津藩の洋学指南役としてだけではなく、槍術の達人として数多くの藩士から尊敬を集めています。
その一方で息子の手志朗は、武道よりも学問が大好きなおとなし目の性格です。莫大な父の財産と会津若松にある広大なお屋敷を相続して、6歳年下の許嫁のおていと結婚さえできれば他に何も望むものはありません。
血の気の多い会津の仲間たちは敬之助の無残な遺体を目の前にして、敵討ちに燃えています。しかしながら会津藩は京都の警備を帝から命じられているために、勝手な行動に打って出る訳にはいきません。
そこで手志朗は藩を追い出されて武闘派集団・新撰組の客分となり、たった独りで犯人を見つけて敬之助の無念を晴らす羽目になります。
局長の近藤勇から歓迎を受けた手志朗が所属することになったのは、藤堂平助が率いる八番隊でした。
【承】逃げろ、手志朗 のあらすじ②
新撰組を支配しているのは副長の土方歳三が定めた厳しい軍中法度になり、違反すれば切腹は免れません。
京都市内のパトロールと称して宿屋や問屋から見かじめ料を要求したり、浪人に言いがかりを付けて斬りかかったりとやりたい放題です。
そんな隊の横暴ぶりに頭を悩ませているのが、穏健派の藤堂であり総長の山南敬助でした。
元来が上品な家庭で生まれ育っただけあって、手志朗は自然と藤堂や山南たちと行動を共にすることになります。
他の幹部連中が遊郭に繰り出していったある日の夜、手志朗は山南の自宅へと招かれてふたりっきりでお酒を飲みます。
山南の食事や身の回りの世話をしているのは、いとという名前の若い女性です。
手志朗は彼女に心惹かれていき、何時しかふたりは身分の違いを乗り越えて恋人同士となっていきます。手志朗は父親の敵討ちも国に残してきた婚約者のおていのことも全てを放り出して、いとと静かな暮らしを送ることを夢想してしまうのでした。
【転】逃げろ、手志朗 のあらすじ③
元治2年(1865年)に入ると山南・藤堂一派と近藤・土方グループとの対立は深まる一方で、新撰組内部では粛清が囁かれるようになりました。
山南は江戸の坂本竜馬とも前々から交流があり、京都を脱出して彼らと合流する計画を手志朗に打ち明け仲間に引き入れます。
手志朗といとの仲もお見通しのようで、彼女を一緒に連れていくことも了解済みです。決行日は2月22日の夜更けになりいとが山南と手志朗の通行手形を持ってきて大津で落ち合う予定でしたが、敢えなく山南は土方に捕まってしまいます。
いとは土方の愛人でありスパイでもあったため、山南の企みは全て筒抜けでした。
今では心から手志朗を愛してしまったいとは、彼に僅かな旅費を渡して土方に密告することなく見逃します。山南がいないため江戸に向かう訳にはいかず、手志朗は会津に帰るしかありません。
実家のお屋敷は父と親交が深かった西郷吉十郎が預かっているために、ほとぼりが冷めるまで匿ってもらえることになりました。
【結】逃げろ、手志朗 のあらすじ④
手志朗が京都から逃げ出して、3年が経過していました。世の中の急激な西欧化により仇討ちは時代遅れとなり、手志朗は父の財産や土地を自動的に受け継ぐことになります。
藩主に仕えて朱雀隊五番隊長にまで昇格して、プライベートではおていと結婚してふたりの子供も授かり幸せ一杯です。
京都での出来事を忘れかけていた5月のある日、3年ぶりに土方と再会を果たしました。ボロボロの甲冑を身に付けて顔面傷だらけなその姿には、かつての勢いも面影はありません。
山南や藤堂を始めとする数多くの仲間を裏切って今日までを生き長らえてきた土方は、この期に及んで手志朗に助けを求めます。怒りの余りに一喝するとその場を立ち去って、次の日には仙台方面へと向かったようです。ただひとつ手志朗にとって心残りだったのが、いとの現在の消息を聞き出せなかったことでした。手志朗は土方と共にやって来た新撰組副長助勤の斎藤一と、会津に迫り来る官軍を迎え討つ決意をするのでした。
逃げろ、手志朗 を読んだ読書感想
地元で順風満帆なエリートコースを歩んできた主人公の古畑手志朗が、突如として荒くれ者の集まりである新撰組のメンバーになってしまうオープニングがユーモアたっぷりでした。
登場キャラクターたちは着物を身に纏って時代設定こそ幕末になりますが、現代のブラック企業に入社していく若者を思い浮かべてしまいます。
手志朗が土方派と山波派の抗争に翻弄されていく展開は、派閥争いに巻き込まれた新入社員とも言えるのかもしれません。
無骨な男たちが繰り広げていくドロドロの権力闘争の合間にも、仄かなロマンスが描かれていて良かったです。
コメント