【ネタバレ有り】きいろいゾウ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:西加奈子 2006年3月に小学館から出版
きいろいゾウの主要登場人物
武辜歩(むこあゆむ)
妻に「ムコさん」と呼ばれている。売れない小説家。
妻利愛子(つまりあいこ)
ムコの妻。ムコからは、「ツマ」と呼ばれている。
アレチ
ムコとツマの近所に住むおじいさん。
大地(だいち)
不登校の少年。ムコとツマの近所に住んでいる駒井さんの孫。
緑(ミドリ)
ムコの初恋の人。ムコの背中にある大きな鳥の刺青に関係がある。
きいろいゾウ の簡単なあらすじ
田舎にやってきた都会の夫婦、武辜歩と妻利愛子。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う。ムコの背中に大きな鳥の刺青が入っているが、ツマは理由を知らない。ツマは、動物や植物、虫などの声が聞こえる不思議な力を持っている。そんなツマを暖かく見守るムコ。ある日届いた手紙をきっかけに2人の関係に変化がおとずれ、ムコはツマを残し、東京に行ってしまう。
きいろいゾウ の起承転結
【起】きいろいゾウ のあらすじ①
動物や植物、虫などの声が聞こえるツマは、いつも何かと喋っていて、そんなツマを暖かく見守っているムコの日常。
ある日の晩、ムコはツマにムコの叔母「ない姉ちゃん」の思い出話をします。
いつも男に泣かされていてたから、ない姉ちゃんと呼んでいたのです。
ない姉ちゃんが大好きだったムコですが、ない姉ちゃんが自殺をしてしまい、第一発見者のムコは大人になった今でも傷として抱えています。
ツマはこのことを初めて知ったのです。
そしてある日は、ツマは子供のころ心臓の病気で入院していたことを、何気ない会話の中でふと言います。
ムコは、このことを知らなかったので、とてもびっくりし、心配しますが、ツマは全く気にしません。
夫婦なのに、お互い知らないことがたくさんあるのです。
ムコの日記には、ツマは大事なことを何も言わないと綴っています。
ツマはツマで、聞きたいことがあるのに聞けなくて、イライラしてしまうこともあります。
そして、ムコとツマお互いに秘密があったのです。
【承】きいろいゾウ のあらすじ②
ある日、畑のトマトをとりに行ったムコとツマは、近所に住む駒井さんの孫、「大地」に会います。
大地は東京の不登校の9歳の少年で、祖母の家に預けられていたのです。
大人びた口調の大地は、天真爛漫なツマと仲良くなります。
大地が登校拒否になった理由は、学校の授業で朗読をした時に漢字を読み間違えたのが恥ずかしくて、学校に行けなくなったというものでした。
大地はとても繊細な少年で、ズボラなツマに少し憧れの感情を抱きます。
そして、ムコは老人ホームでも働いているのですが、ある日その老人ホームのお楽しみ会の出し物で歌を歌います。
しかし、ムコは歌が下手でした。
下手だけど、一生懸命に、堂々と歌っているムコを見て、大地は勇気づけられ学校に行くことを決心します。
また、ムコが歌った歌は、ツマとの思い出の曲「グッナイベイビー。」
ムコとツマは、ツマの父に結婚を反対され、駆け落ちし、その道中の電車の中で酔っ払いが歌っていたのが「グッナイベイビー」だったのです。
この日、ツマは老人ホームからの帰り道に「グッナイベイビー」を口ずさみ、お互い歌が下手なことを初めて知ったのでした。
まだまだ、お互い知らないことが多いムコとツマでした。
【転】きいろいゾウ のあらすじ③
ある日、ムコ宛てに手紙が届きます。
その手紙は、ムコのかつての恋人「緑」の夫からでした。
手紙には「あなたの助けを請いたい」と書かれていて、ムコは返事が書けずにいました。
ツマは、ムコには忘れられない恋人がいること知っていましたが、知らないフリをしていたのです。
そして、ムコはツマがムコの日記を読んでいたことに気がつきます。
ムコは過去の日記を読み返さないので、ずっと気がつかなかったのですが、過去のページにツマが張り付けたであろう落ち葉や牛乳のキャップなどが張り付けてあったのです。
ツマもムコが自分が日記を読んでいたことに気付かれたとわかっているのに、お互い日記には触れません。
ただ、毎日毎日、日記はムコに書かれ、ツマが読んだ証を張り付けていき、2人に間に大きな溝ができてしまいます。
そんな中、ムコはかつての恋人緑がいる東京へ行くと言い出しました。
2人の関係を表すように、家の水道が壊れます。
「水道屋さん呼ぼうか」というムコ、いつもならムコが直してくれると思うツマは、ムコの手をコップで何度も何度もたたいてしまうのです。
次の日、手に包帯をしたムコは東京に行ってしまいました。
【結】きいろいゾウ のあらすじ④
東京に行ってしまったムコは、ツマに長い手紙を日記に書いていました。
そこには、緑との過去が記されていました。
緑には、夫と病気の子供がいて、絵を書く仕事をしてました。
ムコの背中の大きな鳥は、緑の絵だったのです。
ムコは緑に亡くなった「ない姉ちゃん」を重ね合わせていました。
ある日、緑の夫に2人の関係が知られてしまい、2人の関係は終わったのです。
しかし、緑は子供を亡くし、心の病にかかってしまい、緑の夫は緑によりそいますが、緑は一向に良くなりません。
緑の夫は悩んだあげくムコに助けの手紙を出したのでした。
ムコは緑と緑の夫に会い、緑たち夫婦の姿を見て、ムコにとってツマがどんなに大切な存在か気が付くのです。
ツマはムコのいない間、近所のアレチ、平木に夫婦とは何か教えを得て、ツマも自分にとってムコが大切な存在だと再度確認するのです。
ムコが東京から戻ったあと、2人は日記のこと、東京であったことについて、何も話しませんでした。
しかし、2人は以前より夫婦の絆が強くなったようでした。
きいろいゾウ を読んだ読書感想
夫婦について、考えさせられる小説でした。
最初はお互いのことを何も知らないけれど、2人で何かを乗り越えるたびに、夫婦の絆は強くなっていくものだと、この小説に教えられたと思います。
この小説は、ツマ主体で物語が書かれ、ムコの日記が補足をしていますが、同じ出来事でも、2人とも感じていることが違っていたり、それぞれの目線の気持ちがわかっておもしろかったです。
ムコとツマの他にも、夫婦が登場しますが、他の夫婦にもやはり何か問題があって、それぞれ乗り越えていきます。
夫婦には問題が次から次に起きたとしても、必ず2人で乗り越えていかなければならないことを教えてもらいました。
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