「サヨナライツカ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|辻仁成

サヨナライツカ(辻仁成)

【ネタバレ有り】サヨナライツカ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:辻仁成 2002月7月25日に株式会社幻冬社から出版

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サヨナライツカの主要登場人物

東垣内豊(ひがしがいとうゆたか)
航空会社イースタンエアラインズの広報部社員である、バンコクの駐在事務所においては上司である桜田に次ぐNo.2。在留法人や日本人会との関係づくり、安定した顧客確保が重要な仕事。尋末光子と婚約している。

真中沓子(まなかとうこ)
婚約者がいる身の東垣内の心を乱す謎の美女。世界の名門と謳われるザ・オリエンタル・バンコクのスイートで暮らしている。

尋末光子(たづすえみつこ)
東垣内豊の婚約者。育ちがよく才色兼備。父親が教鞭を取る東京大学大学院の出身で、イースタンエアラインズの創業者の未亡人とこの父親が懇意にしていた縁で、東垣内と婚約した。

安西安道・順子夫妻(あんざいやすみち・じゅんこ夫妻)
母方の親戚夫妻。油田の研究でバンコクに駐在していたが、ある時、東垣内に一言の連絡もなく隣国のビルマに引っ越していく。

サヨナライツカ の簡単なあらすじ

『人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと愛したことを思い出すヒトにわかれる』。自身の出世と成功のために堅実な人生を送ってきた主人公は、タイプのまったく異なる2人の女の間で気持ちが揺れ動きます。『愛したことを思い出す』情熱的で刹那的に求め合う沓子との狂おしいほどの愛欲の日々、『愛されたことを思い出す』控えめで奥ゆかしい婚約者の光子との半生を描いた作品です。

サヨナライツカ の起承転結

【起】サヨナライツカ のあらすじ①

禁断の関係の始まり

東垣内豊は、結婚は受験や就職よりも人生に重要な影響をもたらすという父の教えで学生時代から嫁探しに精を出していましたが、初めてその父の眼鏡に適う女性と出会いました。

その女性は、謙虚さや奥ゆかしさを兼ね備えた才色兼備な女性で、さまざなな政治的配慮もあり婚約に至ったのです。

その婚約者を日本に置いて単身タイのバンコクで働く東垣内は、婚約を報告するための友人との集まりで、その後の人生でも忘れることのできない女と出会います。

光子が男の一歩二歩後ろを歩くような奥ゆかしさを持つ女性である一方、男を振り返らせる動物的なフェロモンを放つ女に東垣内は一時的に惹かれてしまうのでした。

出会ったタイミングが東垣内の婚約を友人に報告する集まりでのことだったため、その女が一週間後に突然東垣内の部屋を訪ねてくるまで、東垣内の側には彼女の存在など意識に片隅にもありませんでした。

部屋を訪れた女は体当たりによる奇襲作戦を仕掛け、萎縮ぎみだった東垣内のさまざまな気持ちを解き放ち、それがのちに2人が関係の始まりとなりました。

【承】サヨナライツカ のあらすじ②

甘い日々

東垣内豊は真中沓子からの夕食の誘いを受け、ロビーで待ち合わせをしていました。

自宅への誘いを受け沓子が進むままについていくと、そこはザ・オリエンタル・バンコクのスイートルームでした。

沓子はそこを自分の家だと言いましたが、東垣内はなぜ自分と年端の変わらない女がこんな暮らしができるのか、いったいこの女は何者なのか・・・不安と後悔に苛まれました。

絢爛な部屋にある天蓋の付いたチーク材のベッドで2人は夕食のことも忘れて何度も求め合いました。

そうしている間だけ、東垣内はすべてを忘れて幸福でいられたのです。

自分が感じている不安もなにもかも沓子には見透かされている、そんな主従関係を東垣内は気に入ってもいました。

東垣内は元々ひとりっ子で、率先してリードしてくれる姉のような沓子の前では日本男児を振りかざしたり去勢を張る必要がなく、そういった沓子との関係は彼にとって気楽なもので、婚約者の光子とのあいだにはない感覚でした。

タイでの日本人同士のコミュニティは狭く、人目をはばからずに逢瀬を重ねる2人の関係は次第に公に噂されるものとなっていきました。

【転】サヨナライツカ のあらすじ③

迫り来る現実

東垣内と沓子の関係が公に噂されるようになり、上司から注意を受け同僚から叱咤されても2人のふしだらな関係は続いていました。

2人の姿を見かけても一時のように驚かれなくなった一方で、周囲から投げかけられる視線は一致して冷たいものになっていました。

東垣内の会社での立場も難しいものとなり、家族同然に接してくれていた日本人会とも疎遠になりました。

タイ北部に住んでいた東垣内の母方の親戚である安西夫妻が、東垣内に一言の連絡もなく隣国のビルマへ転勤していたことが分かったのもこの頃でした。

心優しい彼らを後ろめたくさせてしまったことに衝撃を受けながらも、東垣内は沓子との関係を断つことはありませんでした。

挙式が間近に迫り、東垣内が婚約者である光子と連絡を取り合っているのを感じ取った沓子は、半ば見て見ぬふりをし、それは彼女の精神を擦り切らせることになります。

そんな沓子の様子を見て、出会った当初は彼女を怒らせて結婚を妨害されることを恐れていた東垣内は、出世や安定を手離したとしても、この刺激的な生活こそが人生の幸せなのではないかとさえ考えるようになっていました。

【結】サヨナライツカ のあらすじ④

残された時間

2人に残された少ない時間の中で、時の流れの速さは通常の月の何倍にも感じられ、沓子は憂さを晴らすように買い物に没頭し、東垣内がいない寂しさを紛らわすようになっていきました。

しかし最後には東垣内との日々を過去のものと心に留めて、クリスマスにタイへやってくる婚約者と入れ違いで東京に戻ることを告げます。

『愛していた』と突然伝えた沓子に、東垣内は涙を堪えることができませんでした。

今まで築いてきた人生を台無しにする冒険もできず、破天荒な力や運命を逆転させる強い精神も持つことができなかった自分を悔んでの涙でした。

そうして沓子は東垣内のもとを去り、東垣内は沓子の犠牲と光子の忍耐を無駄にしないために、本当の好青年になるべく心を切り換えるのでした。

沓子と別れて25年、かつての好青年は世界各地での活躍や創業者の未亡人のバックアップもあり、イースタンエアラインズの中で次期社長の声が上がるほどの立場を得ていました。

社の式典に参加するために訪れたタイは、ビルが立ち並び変貌を遂げた大都市がある一方で、沓子と行ったあちらこちらの通りは過去のまま東垣内の記憶を鮮明に立ち上らせるものでした。

かつて沓子と愛し合ったザ・オリエンタル・バンコクに到着すると、そこには25年分の年を重ねた沓子が立っていました。

25年ぶりに気持ちを確かめ合った2人でしたが、しばらくして沓子が体調を崩し命の期限が迫った時、若かりし頃には口にすることを自分に許さなかった言葉を、東垣内は沓子に伝えることができたのでした。

サヨナライツカ を読んだ読書感想

頭がよく回転も早い冷静な部分と、半面感情に流されたり甘えから投げやりな気持ちになる部分を併せ持つ主人公。

したたかで自由に振り舞う部分と、最終的には相手を想う気持ちで身を引く沓子。

控えめで奥ゆかしい部分を持ちながらも、しっかり手綱を締めて生活を支える強さのある光子。

人間は誰でもそういった両面性を持ち合わせるものなのだと思うと、日常生活で触れ合う周囲の人間にもそれぞれドラマがあるのだろうなと感じました。

また、アユタヤやチャオプラヤー川などの地理、トムカーガイやカオソーイなどの料理の描写がとても具体的で、行ったことはありませんが2人が過ごしている様子が頭に浮かんできて、すっと物語に入り込んでしまう印象がありました。

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