監督:グスタフ・モーラー 2019年2月にファントム・フィルムから配給
THE GUILTY/ギルティの主要登場人物
アスガー・ホルム(ヤコブ・セーダーグレン)
本作の主人公。ある事情で警察官を辞め、現在は緊急通報指令室でオペレーターとして働いている。
イーベン・オスタゴー(イェシカ・ディナウエ)
緊急通報指令室に通報してきた女性。元夫に誘拐されている模様。
ミケル・ベルグ(ヨハン・オルセン)
イーベンの元夫。イーベンを誘拐し車で連れ回している。
ラシッド(オマール・シャガウィー)
アスガーの元相棒の刑事。アスガーからある証言を裁判でするよう頼まれている。
マチルデ・オスタゴー(カティンカ・エヴァース=ヤーンセン)
イーベンとミケルの6歳になる娘。弟オリバーと共に家に残され、イーベンの帰りを待っている。
THE GUILTY/ギルティ の簡単なあらすじ
全編を通して映るのは緊急通報指令室の中のみ、主人公アスガー以外の登場人物はほぼ“声だけ“という、デンマーク発の新感覚のスリラー作品です。
あまりの面白さにハリウッドでもリメイクされ話題になりました。
緊急通報指令室でオペレーターとして働くアスガーは、その日も様々な通報を受けていました。
そんな中かかってきた一本の通報から、アスガーは思いもよらぬ事件へと巻き込まれていきます。
THE GUILTY/ギルティ の起承転結
【起】THE GUILTY/ギルティ のあらすじ①
デンマークのとある緊急通報指令室。
オペレーターのアスガー・ホルムは、かかってくる緊急通報を受けていました。
自分で麻薬を摂取して気分が悪くなったというニコライという男性には、「自業自得だろ」とため息をつきます。
「強盗にあった」というアムストラップリースという男性にはパトカーを向かわせますが、コンピューター画面に映し出される大体の通報場所から辺りは風俗街だと推測。
案の定風俗嬢から財布を盗まれたようで、アスガーは呆れてしまいます。
そんなやりとりの合間、アスガーの携帯に着信がありました。
出ると相手はブリックスという記者の女性で、“明日行われること”について取材をしたいと言ってきます。
アスガーは相手にせず電話を切りました。
上司に私用電話は控えるようにと注意を受け、アスガーは中座して水を飲みます。
席に戻り勤務時間もあと少しというところで、アスガーは考え事をしながら一本の通報電話を取りました。
コンピューター画面に映る通報者の名前はイーベン・オスタゴーという女性。
泣き声のようなか細い声で一方的に意味のわからないことを話すイーベンに、アスガーは「酔っているのか?」と言って電話を切ろうとします。
しかしその怯えたような様子からアスガーはイーベンが危険な状態にあるのではと察しました。
そしてイエスかノーで答えられる質問をなげかけ、イーベンが男に誘拐され車で連れ回されているということを知ります。
イーベンは家にいる子供と話しているフリをしていました。
携帯から場所を探り、走行中の高速道路にパトカーを向かわせるとアスガーはイーベンに伝えます。
しかしイーベンの横にいる男が電話を不審がっているのがわかってきました。
「電話を切れ」と男の声がします。
アスガーはイーベンを励ましながら、乗っている車が白のワゴン車であることを聞き出し、一旦電話を保留にして北シェラン指令室に連絡してパトカーを向かわせます。
【承】THE GUILTY/ギルティ のあらすじ②
アスガーは捜索に出たパトカーの警官と直接やり取りをしますが、パトカーはイーベンの乗るワゴン車とは別の車を捕まえてしまったようでした。
イーベンは電話を切って少し考えた後、独自に捜査を始めます。
モニターに映し出されたイーベンの自宅の電話番号を見て、アスガーは電話をかけます。
出たのはマチルデと名乗る6歳9カ月の少女でした。
マチルデは弟でまだ赤ん坊のオリバーと家に残されているようで、アスガーはマチルデの話から、離婚して別の場所に住んでいる父親のミケル・ベルグが、ナイフを持って母親イーベンを連れて行ったと知ります。
幼いながら父親の電話番号を覚えていたマチルデを褒め、アスガーは「ママを無事に連れて帰る」と約束し、警察が到着するまでオリバーと一緒に待っているように励ましました。
電話を切り、指令室に電話をかけて状況を説明しますが、あれこれ調べるのはアスガーの仕事ではないと冷たくあしらわれてしまいます。
落ち着こうとするもイーベンとマチルデのことが気になり、アスガーは苛立ちます。
隣に座る同僚に、今まで態度が悪かったと急に謝罪し、席を移動しても電話は取れるか確認して、アスガーは個室へと移動しました。
そしてアスガーはしばらく悩んだ後、イーベンの元夫・ミケルに電話をかけます。
横にイーベンがいるのはわかっていましたが、刺激しないよう、「幼い子供たちが残されているから様子を見に行ってほしい」と伝えます。
ミケルの携帯の位置情報はシェラン島を指していました。
続いてアスガーは、かつての相棒・ルシードに電話をかけ、協力を依頼します。
ルシードはアスガーの“裁判“の証人として、明日証言台に立つ予定でした。
うまく話す自信がなく、ルシードはかなりの酒を飲んでいるようです。
アスガーは半ば強引に、アマー島にあるミケルの家に向かうよう頼んで電話を切りました。
そこへアスガーあてに少女から電話があったと同僚が知らせに来ます。
【転】THE GUILTY/ギルティ のあらすじ③
すぐにマチルデからだとわかったアスガーは個室で電話を取り、家に誰か来たというマチルデに「警察だから入れてあげて」と言いました。
入って来た警察官に電話をかわってもらい、まだ赤ん坊がいるから探せと伝えますが、しばらく探し回った警察官は切り裂かれて死んでいるオリバーを発見します。
アスガーは言葉を失い、しばらく放心状態になってしまいました。
退勤時間になりますがアスガーはそのまま残ることにし、ミケルに電話をかけます。
ミケルには前科もあり、オリバーのこともあったので、アスガーはなんとかイーベンを解放するよう説得しました。
しかしミケルは電話を切ってしまいます。
そこにミケルの家の前に到着したとルシードから携帯に連絡がありました。
アスガーは、家に入って郵便物などを探って欲しいと告げます。
そしてイーベンに電話をかけ、シートベルトをした後にサイドブレーキを引いて車から降りろと指示します。
そこで電話が切れますが、アスガーはかかってきた他の緊急通報を無視してまでイーベンと連絡を取ろうとしました。
しかしやっとつながったイーベンは、ミケルによって車の貨物室に押し込められている様子です。
ミケルがレンガ職人だということで、アスガーはイーベンに、貨物室の中にレンガのような武器はないか尋ねました。
そして車が停まったらその武器でミケルの頭を殴って逃げるように言います。
うまくできるかと頭が混乱している様子のイーベンを落ち着かせるため、アスガーは世間話のような話もしました。
イーベンは少し落ち着いて、水族館の話などを語り出します。
しかし、続けてイーベンの口から出た話を聞いて、アスガーは言葉を失ってしまいました。
「お腹にヘビがいるから、オリバーはずっと泣いていた。
でもお腹を切り裂いてヘビを出したから、泣き止んだわ」そこでアスガーは全てを悟ります。
オリバーを殺したのはミケルではなく、イーベンだったのです。
【結】THE GUILTY/ギルティ のあらすじ④
直後、車が停車する音と、イーベンがミケルを攻撃するような音が聞こえて電話が切れました。
呆然とするアスガーに、ミケルが親権を争って裁判を起こしていたこと、イーベンが北シェラン精神病院に入院していたことがあるようだと、ルシードから連絡が入ります。
全てが繋がります。
ミケルはイーベンを誘拐したのではなく、精神病院へ連れて行こうとしていたのです。
アスガーはミケルに電話をかけました。
イーベンは自分を襲った後どこかに逃げて行ったと言います。
そして「どうして本当のことを言わなかったんだ」と訊くアスガーに「助けを求めても、誰も聞いてくれなかった」とつぶやきました。
何度かけてもイーベンは電話に出ません。
「まだ何かすることがあるか?」と電話をかけてきたルシードに、アスガーは「明日の裁判で嘘をつかなくていい」とつぶやきます。
アスガーはまだ混乱していました。
そこにイーベンから電話がかかってきます。
イーベンは高速道路の陸橋の上にいるようでした。
飛び降りる気だと察したアスガーは、必死でイーベンを説得します。
そして、自分がオリバーを殺したのだと認識しだしたイーベンに、アスガーは自分が犯した罪を告白しました。
アスガーは正当防衛を装って、19歳の若者を殺していたのです。
殺さなくても良かったのに、殺した、と。
そして、「ママを家に戻す、とマチルデと約束したんだ」とイーベンに言いました。
「あなたはいい人ね」イーベンはそう言って、電話は切れました。
アスガーはイーベンが飛び降りたのだと思って頭が真っ白になりますが、直後橋から降りて警察に保護されたと聞いてほっと胸をなでおろします。
アスガーは電話を切りました。
そして携帯を手にフラフラと歩き出し、同僚たちが見つめる中部屋を出て、廊下の奥でどこかに電話を掛けようと耳に携帯をあてました。
THE GUILTY/ギルティ を観た感想
一見単調な、ほぼ電話でのやり取りのみで進んでいくストーリー。
しかし見るものをしっかり引き付けて、どんどん引きずり込んでいきます。
声だけで伝わる緊迫感に、イーベンは今どんな状態で、うまく逃げられるのか?とハラハラし、アスガーにも何かの事情が絡んでいるのがわかってきて、そして最後の展開で大きな衝撃が胸に響きます。
イーベンが抱える「罪=ギルティ」に触れ、自分が犯し、ごまかそうと考えていた罪に向き合うことを決めたアスガー。
最後、アスガーは誰に電話をかけにいったのか。
警察か、元妻か、それとも他の誰かか。
それはわかりませんが、覚悟を決め、次の一歩へ踏み出したアスガーへの救いを描いたドラマのようにも思えました。
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