監督:石井裕也 2014年5月にファントム・フィルムから配給
ぼくたちの家族の主要登場人物
若菜浩介(妻夫木聡)
若松家の長男。生真面目な性格。
若菜玲子(原田美枝子)
浩介の母親。ある日人格が変わってしまう。
若菜俊平(池松壮亮)
浩介の弟。自由気ままだが、両親に愛されている。
若菜克明(長塚京三)
浩介の父親。何もできない典型的な父親。
若菜深雪(黒川芽以)
浩介の妻。
ぼくたちの家族 の簡単なあらすじ
若松家はどこにでもある普通の家庭でした。
しかし、ある日突然、母親の玲子が余命1週間と告げられてしまいます。
そのことがきっかけとなり、隠されていた若松家の問題が次々と明らかになり、家族の絆が試されます。
一旦バラバラになった家族が、母の病気をきっかけに関係を見つめなおし、そこから再生していくヒューマンドラマです。
ぼくたちの家族 の起承転結
【起】ぼくたちの家族 のあらすじ①
若松家の長男、浩介は結婚後独立し家を出ています。
妻の深雪は妊娠3か月で、心身ともにつらい時期でした。
浩介は母の玲子に深雪の妊娠を告げると、たいそう喜んでいました。
次男の俊平は大学生ですが、プラプラしておりまともに大学に通っていませんでした。
いつも玲子に甘え、玲子も俊平可愛さにお金を都合していました。
その玲子は夫の克明と二人で暮らしていますが、最近物忘れがひどいことを気にしていました。
俊平にそのことを相談しますが、「大丈夫でしょ」と軽く受け流されてしまいました。
ある日、深雪の両親を交え、食事会が開かれましたが、その席で玲子は深雪の名前を間違えたり、意味不明なことを口走ったりします。
そして浩介の名前を呼び間違ったりしてしまい、場の雰囲気は最悪なものになりました。
玲子の様子をおかしいを想った浩介は、翌日玲子を病院に連れていきます。
そこで、医者から聞かされたのは玲子の脳に「脳腫瘍」があり余命1週間の命であることでした。
【承】ぼくたちの家族 のあらすじ②
玲子はその日のうちに入院することになりました。
家族会議のため、俊平も若松家にやってきます。
そこに病院から玲子が暴れていると連絡があり、駆け付けた浩介に対し、玲子は「あなた誰?」と言います。
ショックを受ける浩介に、追い打ちをかけるように俊平のことは覚えている玲子でした。
そして玲子は俊平に若松家の不満を語りだします。
浩介が中学の時に引きこもっていたこと、夫の稼ぎの少ないこと、そして「本当は家族でハワイに行きたかった」こと。
その夜、家族で病院に泊まることになりましたが、克明はうろたえてしまい頼りになりません。
俊平はのんきに玲子の病気を楽観的にとらえていました。
浩介は母の突然の余命宣告に心をみだされながらも、仕事や自分の家庭、母の看病など、長男として頑張ろうと奮闘します。
気楽な俊平に腹を立てる浩介ですが、俊平に「中学の時に引きこもってから、家族がバラバラだ」と言われてしまい、なにも言えなくなってしまいました。
【転】ぼくたちの家族 のあらすじ③
母の余命宣告も現実として受け止めきれない浩介。
そこに俊平から電話があり、玲子がサラ金からお金を借りていたことが判明しました。
玲子には借金が300万以上あり、会社を経営する克明にも莫大な借金があることが分かります。
家のローンも残っている状態でした。
手術するにもお金がかかるため、浩介は妻の深雪に相談します。
しかし、今まで余裕のある生活を送っていた玲子たちに同情できないと、深雪はお金の援助をはっきりと断ります。
なおかつ、病院に見舞いに行くこともできないと言われてしまいます。
そんな中、手術や薬ではどうにもならない状況のため、在宅での看取りを医者から勧められます。
浩介は望みを捨てず、治療してくれる病院を何件も探し回ります。
その浩介をみた俊平も、なんとかしようと動き出しました。
浩介は病院の玲子の見舞いに行き、今までたくさん迷惑をかけたことを詫びます。
すると玲子は「そんな昔のことはいいから、辛いときは笑おう」と屈託ない笑顔で言いました。
その玲子の笑顔に浩介は涙が止まりませんでした。
【結】ぼくたちの家族 のあらすじ④
病院を探し回っていた浩介たちは、運命の医者に出会います。
玲子の病気は「脳腫瘍」ではなく「悪性リンパ腫」の可能性があると指摘を受け、玲子は詳しい検査を受けることになりました。
そんな中、浩介たちは玲子の隠していた手紙を発見します。
その手紙にはあくまで子供たちに迷惑を掛けたくないという玲子の気持ちがしたためてありました。
玲子は悪性リンパ腫の診断を受け、治療を受けることになりました。
安心した浩介たちは家族3人で泣きました。
玲子はその後、治療が効果を表し回復に向かっています。
浩介は転職を決めました。
俊平も大学を辞め、克明の仕事を手伝うことに決めました。
浩介の妻、深雪も見舞いに訪れ、一度も見舞いに来なかったことを深く詫びました。
玲子は笑顔でお腹の子供に向かって「おばあちゃんですよ」と語りかけました。
これから若松家は家族で団結し、残された借金を返すために頑張ろうと決めました。
バラバラになりかけた家族が再び強い絆で結ばれたのでした。
ぼくたちの家族 を観た感想
母の病気をきっかけに、うわべだけ平和にしている家族の崩壊と再生を描いた良作です。
石井監督の、人間の描き方はとても冷たいように見せかけて、実は奥底はとても暖かいと感じさせてくれます。
妻夫木聡さんの悩める長男像も良かったですし、池松壮亮さんがとにかく魅力的です。
こういうふらふらした人たらしっていそうですよね。
借金を断った深雪も決して冷たい人間なのではなく、自分の子供と家庭を守ろうとしたことが伝わってきます。
誰でも共感できるような話ですし、とてもリアリティがあります。
ひさしぶりに実家の様子を見に行きたくなる、そんな作品ですね。
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