監督:ミカ・カウリスマキ 2021年2月にギャガから配給
世界で一番しあわせな食堂の主要登場人物
チェン(チュー・パック・ホング)
主人公。高級店で腕をみがき魚料理が得意。恋愛ではシャイでリードするのが苦手。
シルカ(アンナ=マイヤ・トゥオッコ)
食堂を切り盛りしながらひとり暮らし。社交辞令がダメで本音で話す。
ニュニョ(ルーカス・スアン)
チェンの息子。ひとりでいることが多く携帯用ゲーム機が手放せない。
ロンパイネン(カリ・ヴァーナネン)
シルカ食堂の常連。高齢で持病があるがリスクを恐れないのがモットー。
ヴィルプラ(ヴェサ=マッティ・ロイリ)
ロンパイネンの友人 。 生粋のフィンランド男子を自称する。
世界で一番しあわせな食堂 の簡単なあらすじ
交通事故で妻を亡くしてから荒んだ生活を送っていた料理人のチェンを救ったのは、フィンランド人のフォントロンです。
息子のニュニョを連れて海を渡った先で出会ったのが食堂経営者のシルカ、地域社会にも溶け込んでいきますがやがて帰国の時が近づいてきます。
お互いに好意を抱いていたふたりは結婚、新天地へニュニョを連れていき家族になることを決意するのでした。
世界で一番しあわせな食堂 の起承転結
【起】世界で一番しあわせな食堂 のあらすじ①
チェンがお酒を飲むようになったのは、自転車に乗っていた妻が上海の大通りで大型車と衝突して即死してからです。
タチの悪い金融業者からお金を借りてしまい取り立てにあっていたところ、「フォントロン」と名乗る男性が立て替えてくれました。
勤め先のレストランでも息子のニュニョともうまくいっていないことを打ち明けると、生まれ故郷のフィンランドまで来るように勧められます。
飛行機とバスを乗り継いでポホヤンヨキへと到着した親子でしたが、見当たるのは「シルカ食堂」と掲げてある一軒家だけ。
店内で食事をしているお客さんに聞いていてみても手掛かりはつかめず、ホテルはここから40キロ先のレヴィにまで行かないとありません。
困り果てた親子のために離れを貸してくれたのがシルカ、次の日からはチェンも調理室に手伝いに入ることに。
ヌードルとチキンを近所から調達して鶏のスープ麺に仕上げて提供してみると大好評、350ユーロとこれまでで最高の売り上げを記録しました。
【承】世界で一番しあわせな食堂 のあらすじ②
店が忙しくして放ったらかしにされていたニュニョ、時間を持て余していたために珍しい北欧の動物を追いかけて森の奥へ。
たまたまオートバイで通りかかったのが常連客のロンパイネン、迷子になりそうなところを連れ戻してくれたために大ごとにはなりません。
ふたりだけで出掛けてみるようにアドバイスされために山登りへ、チェンとニュニョは雄大な景色を眺めました。
国から持ってきた婚約指輪を頂上に埋めたチェン、我が子を力強く抱きしめます。
この日を境にニュニョも洗い物や下ごしらえを自分から覚えるようになったのは、親子の時間を持てたことが良かったからでしょう。
ペッカ・フォルストロムというアイスホッケーの選手をスポーツ雑誌で発見したのは、ロンパイネンと仲の良いヴィルプラです。
フォルストロム、フォルストロン、フォンストロン、フォントロン… ようやく探していた人物だと分かりましたが、2018年に57歳で亡くなったとのこと。
義理堅くお墓参りを済ませたチェンでしたが、お金を返せなかったことと美味しいものを食べさせることができなかったのが心残りです。
【転】世界で一番しあわせな食堂 のあらすじ③
もともと体が弱かったロンパイネンは滋養たっぷり、血圧が高かったヴィルプラも数値が改善。
腹痛と血のめぐりの悪さで悩んでいたシルカも、薬膳スープですっかり具合が良くなりました。
飲茶、トナカイの香草焼き、野菜炒め、あばら骨のバクテー、魚の甘酢あんかけ… 色・味・盛り付けにこだわり抜いた中国の伝統も少しずつ受け入れられていきますが、シルカのプライベートについてはまだ聞いていません。
かつては南部地方で結婚していたこと、子どもを授からずに8年間が過ぎたこと、夫は別の女性のもとへ去っていったこと。
60歳以上か既婚者しかいなく酒浸りが多いここでは再婚のチャンスもなく、唯一の近親者であるおばから相続したここの土地と建物だけが頼りです。
ビジネスとしての利益は薄いものの食堂を営業している時には幸せになれるというシルカ、チェンにも建前ではなく本当の気持ちを打ち明けてほしいと迫ります。
毎年恒例のダンスパーティーでふたりはペアを組んで、息のあったパフォーマンスを披露しました。
若い頃は水泳のチャンピオンだったチェン、服のまま湖に飛び込んでシルカと抱き合い大盛り上がりです。
【結】世界で一番しあわせな食堂 のあらすじ④
パトロール中の警察官が昼食を取りにやってきましたが、チェンのことを麻薬の密売人か密入国のブローカーかと疑っているようです。
入国管理局の記録を調べてみるとビザの期限がすでに切れているようで、これ以上は滞在できません。
バイクでヨットハーバーまで連れていかれたチェン、ロンパイネンは船上で自分がガンと診断されたことを打ち明けます。
医師からは見放されたこと、チェンの料理を食べると調子がよくなること、みんなに希望をくれたこと。
チェンの妻でありニュニョの母親でもある女性の命日、指輪を埋めた山へ登った一向。
ニュニョはシルカのことを「ママ」と呼びます。
ついに当局から捜査官がやって来ましたが、すでに店にはチェンの姿はありません。
相変わらず医師からはヘモグロビンが少なく薬を増やすように言われているロンパイネンですが、自分の好きなことをとことん楽しむつもりです。
中国の湖畔都市から届いた1件のビデオメッセージ、チェンとシルカがボートの上で指輪を交換しています。
ふたりのあいだに挟まれたニュニョによると、近いうちにポホヤンヨキに新婚旅行に行くそうです。
世界で一番しあわせな食堂 を観た感想
オープニングで空中から映し出されていく、広大な湖面と豊かな緑のコントラストに目を奪われます。
主人公のチェンが腕をふるう料理の数々も、色あざやかで背景とマッチしていました。
時おり回想シーンで挿入されるのは、一日中クラクションが鳴り響く大都市の上海。
その騒がしさと比べてみると、ポホヤンヨキは静かで地上の楽園と言えるでしょう。
そんな自由でのんびりとした時間が流れる北欧の小さな町にも、チェン親子を「外国人」として扱う厳然たる法律があるのがほろ苦いですね。
出自や立場を飛びこえて心を通わせていくチェンとシルカの姿からは、今の時代に求められている寛容性が伝わってきました。
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