監督:新藤風 2017年1月に東京テアトルから配給
島々清しゃの主要登場人物
花島うみ(伊東蒼)
ヒロイン。沖縄地方の小中一貫校に通う。音に敏感なために常に耳当てをしている。
北川祐子(安藤サクラ)
全国各地で公演をするヴァイオリニスト。子どもたちの情操教育にも熱心。
花島昌栄(金城実)
うみの祖父で「おじぃ」の愛称で親しまれる。民宿「宝生」を経営。
花島さんご(山田真歩)
うみの母。沖縄本島で舞踊を習う。お酒の飲み過ぎで周囲に心配をかけている。
真栄田(渋川清彦)
サックス奏者を目指していたが現在は漁業に従事。よそ者に警戒心がある。
島々清しゃ の簡単なあらすじ
地方巡業のために沖縄の離島を訪れた北川祐子が出会ったのは、音楽の才能がありながら孤独を感じている少女・花島うみです。
祐子のアドバイスで部活動を始めたうみは、フルートの音色を通して少しずつ周りの人たちに心を開いていきます。
うみの祖父の急死によって公式の行事は自粛せざるを得ませんが、お世話になった祐子のために地元の小中学生が手作りの演奏会を開いてくれるのでした。
島々清しゃ の起承転結
【起】島々清しゃ のあらすじ①
文化と学習のレベルを上げるために東京から招かれた北川祐子は、この島では唯一の音楽鑑賞会ができる慶良間小中学校へ到着しました。
音楽室でケンカをしていたのは女子児童の花島うみですが、ちんだみ(調弦)が狂っているというひと言で祐子は彼女の聴覚が人並み以上に優れていることを見抜きます。
体育館の中ではバドミントン部が練習しているために、祐子は集中してリハーサルができません。
静かな場所があるとうみが紹介してくれたのは秘密の浜辺、祐子がお礼にバイオリンで披露したのはバッハ作曲「G線上のアリア。」
うみを自宅まで送り届けると祖父に当たる昌栄がカンカラ三線で屋嘉節を披露してくれた後、夕食までごちそうしてくれました。
米軍機の墜落をいち早く察知したことはうみのことは地元紙にも取り上げられていて、その音感には調査員も脱帽するほどです。
母親のさんごは那覇にいるために昌栄が面倒を見ているそうで、独りぼっちのうみに祐子は音楽をやってみるようにアドバイスをしてみます。
【承】島々清しゃ のあらすじ②
「特別音楽教室」と銘打って祐子はヴァイオリンを弾き始めましたが、うみは出だしを聞いただけで伴奏が外れていることに気が付きました。
ピアノの調律は数年前に1度だけ業者に頼んだだけで、ろくに手入れもしていなかったのでしょう。
その場で騒ぎ出したうみは校長によって摘まみ出されてしまいまい、教室は険悪なムードのままでお開きです。
この1件でますます校内で浮いてしまったうみのことを心配した祐子は、休暇を取ってしばらくここに滞在することにします。
吹奏楽部に入部が決まったうみでしたが、相変わらずメンバーとはうまくいっていません。
フルートを担当することになったうみは楽器の頭の部分だけを取り外すと、自宅に持ち帰って夜遅くまで練習をしていました。
みんなと一緒にきれいな音が出せるようになれば自分の耳もよくなり、離れて暮らしているさんごも帰ってくるような気がしていたからです。
ハーモニカ、チューバ、トランペット、スネアドラム… 放課後にひとりでフルートを吹いていたうみの側にはいつの間にか部員たちが集まっています。
【転】島々清しゃ のあらすじ③
管楽器を詳しく教えられる人を探していた祐子は、若い頃はライブハウスに出演していたという漁師の真栄田に頼みにいきました。
自分の認めた人としか組まないという真栄田はお手並み拝見とばかりに、島太鼓のリズムに合わせてサックスの即興演奏を始めます。
このテストを受けて立つことになった祐子は、ヴァイオリンでまったく同じフレーズを弾きこなし負けていません。
祐子の腕前を認めたて臨時のトレーナーを引き受けた真栄田の方針は、全員を基礎ができていない初心者として扱うことです。
チューニングの真っ最中に雑音に耐えきれなくなったうみは、いつものように耳を押さえて座り込んでしまいました。
自分の音だけでなく隣の人の音も聞くこと、うみが大きな声でわめいても音出しは止めないこと。
練習中のルールをしっかりと約束することで、ようやくうみも新入部員として受け入れてもらえます。
すっかり上達してきた教え子たちに祐子が配ったのは、琉球民謡「島々清しゃ」の楽譜です。
【結】島々清しゃ のあらすじ④
慶良間吹奏楽部のミニコンサートが10月18日の日曜日に開かれる予定でしたが、前日の夜に昌栄が亡くなったために急きょ取り止めになりました。
久しぶりに島に帰って来たさんごは、有名な師匠の下で学んでいるという舞踊「かじゃでい風」を海辺のお葬式で披露します。
母の舞いを見ていたうみもフルートを取り出すと大きく息を吸い込んで、演奏するのはすっかり上達した島々清しゃです。
葬儀には参列した祐子でしたが、約束していたコンサートが中止になってしまったことが申し訳なく合わせる顔がありません。
翌朝にはこっそりと島を立ち去ろうとしていたところ、うみを先頭にそれぞれの楽器を完璧にマスターした子どもたちが駆け付けてきます。
祐子を満足させるレベルの合奏をするためには、自分の音だけでなく仲間の音も聞かなければなりません。
いつまでも耳をふさいでいる訳にはいかないと吹っ切れたうみは、耳当てを外して母に預かってもらいみんなの輪の中に飛び込んでいくのでした。
島々清しゃ を観た感想
美しく晴れ渡った南の島の青空に、アメリカ軍の戦闘機がけたたましい爆音を発しながら飛び交う不吉なオープニングです。
いち早くその不吉な音を察知したのが戦争を知らない世代、花島うみだというのも運命的ですね。
小さな漁船から波止場にこの島に降り立ったのは、いかにも都会的なたたずまいの若い女性・北川祐子。
時おり映し出されていくのは雑音であふれた東京、南の楽園のような島の静けさとのコントラストが際立っていました。
世代の隔たりがあるふたりのあいだで交わされる言葉こそ少ないものの、感受性と才能をぶつけ合うかのような共演が琴線に触れます。
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