監督:井土紀州 2012年5月にキングレコードから配給
彼女について知ることのすべての主要登場人物
鵜川(三浦誠己)
主人公。社会科を担当する教師。実家暮らしで親名義の高級車を乗り回す。
遠沢メイ(笹峯愛)
看護師だが化粧が濃く香水もきつい。異性を魅了するが同性からは疎まれる。
笠松美千代(赤澤ムック)
鵜川とは職場恋愛。物事の順序にこだわり独断で進める。
真山光男(パク・ソヒ)
メイの元カレ。競輪の八百長や武器密売など複数の違法行為に関わっている。
稲村(長宗我部陽子)
刑事事件を専門にする弁護士。依頼人の事情に踏み込みがち。
彼女について知ることのすべて の簡単なあらすじ
職場の同僚の笠松美千代と平凡な結婚生活を考えていた鵜川、その日常が一変したのは彼女の後輩にあたる遠沢メイと浮気をしてからです。
昔の恋人・真山光男から多額の金銭を巻き上げられたため、ふたりで殺害計画を考え始めます。
たったひとりで犯行を成し遂げたメイは出所後にシングルマザーとして、鵜川とは別々に生きることを選ぶのでした。
彼女について知ることのすべて の起承転結
【起】彼女について知ることのすべて のあらすじ①
栃木県わかば市の学校に赴任して3年目に突入した鵜川は、1年先輩の笠松美千代と付き合っていてゆくゆくは籍を入れるつもりです。
ふたりでスーパーに買い物に行った初夏、喫煙コーナーでチョコレートを片手に遠沢メイが話し掛けてきました。
美千代のひとつ下で高校時代には部活のチームメイトだったこと、ずっと都内の病院に勤務していてきたこと、3カ月ほど間と前から市内に戻ってきたこと。
これから夜勤だという彼女を車で送ってあげると、明らかに美千代は機嫌が悪くなっていきます。
1学期の終わりに美千代は校長に転任希望届を提出しましたが、鵜川は事前に何も聞かされていません。
教師同士が結婚した場合は同じ職場にいられないという、不文律を考慮した上での行動でしょう。
市立病院に乗り込んで勝手に結婚宣言までしてしまった美千代、自分の運命は自分で決めた方がいいとアドバイスをするメイ。
職員寮の前でメイを待ち伏せした鵜川は、非常口から中に入れてもらいそのまま彼女の部屋で一夜を明かしました。
【承】彼女について知ることのすべて のあらすじ②
終業後に合流して行き着けの喫茶店「ルポ」でコーヒーを、非番の日には映画を見に行ったりお酒を飲みに行ったり、それぞれの誕生日には腕時計を交換… 美千代とはきっぱりと別れた鵜川でしたが、メイはデートの真っ最中にも笑顔がありません。
東京にいた頃に交際していた真山光男という男から、しつこく復縁を迫られて困っていると打ち明けてきました。
足をケガして入院していた真山をメイが担当することになったのがきっかけで、一見するとかっこよく陽気で他のナースにも人気があったとか。
そんな真山が本性を現したのは別れ話を切り出した時、あいだに入ってくれた男性にケガを負わせた揚げ句に恐喝罪で逮捕されます。
裁判から実刑判決を受けるまでのあいだに、1度も面会にも来なかったメイをうらんでいるのは間違いありません。
その数日後に期末テストの試験官をしていた鵜川は真山に呼び出されますが、蛇のイレズミに赤いアロハシャツと見るからに暴力的な雰囲気です。
【転】彼女について知ることのすべて のあらすじ③
鵜川は結婚資金として用意していた100万円を、メイは貯金50万円と自らの肉体を。
手荒な手段に出ることはないとは言っていますが、その要求内容は少しずつエスカレートしていきます。
秋になってもふたりの前から消えることのない真山は、訴えられることも塀の中に戻ることも恐れていないのでしょう。
そんな最中に真山が密輸組織から預かっていた拳銃を、メイはひそかに盗み出して鵜川の目の前に突き付けてきました。
今まではシワひとつとなかった彼女の手のひらには、くっきりとした運命線が浮かび上がっています。
共犯者となることを覚悟していた鵜川でしたが、メイはその誠意と愛情の深さを確かめたかっただけです。
鵜川に渡したのとは別の銃を使って真山を射殺したメイは、自分も後を追うつもりでしたがシリンダーには弾丸が残っていません。
いさぎよく自首をしたこととメイの弁護を担当した稲村の実直な対応のおかげで、情状酌量が認められて6年ほどで仮釈放となりました。
【結】彼女について知ることのすべて のあらすじ④
鵜川が社会科準備室で資料をまとめていると、裁判が終わってから連絡を取っていなかった稲村が訪ねてきました。
あくまでも個人的な案件で会いにきたという稲村が差し出したのは、小さな男の子を撮った1枚の写真。
服役中にメイが出産した子で表向きの父親は真山ですが、その顔立ちはどちらかというと鵜川に似ています。
出所後に親族から遺骨を分けてもらって真山のお墓を建てたメイは、月命日には必ずワカバ霊園にお参りに行くそうです。
まさに今日がその日だと知った鵜川は居ても立っても居られなくなり、教室を飛び出して霊園へと向かいます。
墓石の前で手を合わせているメイは髪の毛が短くなり地味な喪服を着ていましたが、その美しさに衰えはありません。
刑期を務めているあいだも真山の顔が思い浮かんでいたというメイは、鵜川とはやり直すつもりはないそうです。
左腕にかつて鵜川がプレゼントした時計を身につけていたメイは、「さよなら、先生」とだけ告げて霊園を立ち去るのでした。
彼女について知ることのすべて を観た感想
ハンドルを握った鵜川が夜道を飛ばすオープニングは、ジャズの音色が響いていてフィルムノワールのような雰囲気です。
ピカピカの赤色セダンはハードボイルドにぴったりですが、母親から借りた車だというのが皮肉ですね。
鵜川と稲村が教室の中で6年前を回想する際には、ひぐらしがもの悲しく鳴いていて情熱的な夏の終わりを告げているかのようです。
そんな鵜川にとってはファム・ファタール、文字どおりに運命の女を演じているのは笹峯愛。
土曜の朝の某情報番組で清純派レポーターとして人気があっただけに、この映画で披露している妖艶さには圧倒されるでしょう。
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