映画「アーニャは、きっと来る」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|ベン・クックソン

映画「アーニャは、きっと来る」

監督:ベン・クックソン 2020年11月にショウゲートから配給

アーニャは、きっと来るの主要登場人物

ジョー・ラランド(ノア・シュランプ)
主人公。実家で羊の放牧を手伝う。好奇心が旺盛。

ベンジャミン(フレデリック・シュミット)
動物やアウトドアの知識が豊富なユダヤ人。娘・アーニャの消息は不明。

アリス・オルカーダ(アンジェリカ・ヒューストン)
ベンジャミンの義理の母親。自らの信念に基づいて行動する。

アンリ(ジャン・レノ)
ジョーの祖父。猟友会のメンバーで射撃の腕前が自慢。

ホフマン(トーマス・クレッチマン)
ドイツ軍の駐屯兵。誰とでも分け隔てなく接する。

アーニャは、きっと来る の簡単なあらすじ

第2次世界大戦下のナチスドイツによって支配されているフランス、ジョー・ラランドが知り合ったのはユダヤ人のベンジャミンです。

同胞を国外に亡命させる活動をしながら、ベンジャミンは生き別れになった娘のアーニャとの再会を待ち望んでいます。

ベンジャミンはナチの軍人によって連れ去れてしまいますが、戦火をくぐり抜けたアーニャはジョーとの対面を果たすのでした。

アーニャは、きっと来る の起承転結

【起】アーニャは、きっと来る のあらすじ①

羊と犬と熊のお導き

ヒトラーによってパリとフランス北部が分断されていく1942年、ジョー・ラランドが暮らしているのはスペインとフランスとの国境線の近く・レスカン村です。

この地方の住人たちは羊を育てることで生計を立てていましたが、ジョーの父親・ジョルジュを始め多くの大人たちは兵役に取られていました。

まだ13歳で学校に通い始めたばかりのジョーも、勉強をしながら父の代わりに家業を支えなければなりません。

いつものようにジョーが山で羊の世話をしていると、見張りの犬と野生の熊が激しく威嚇し合います。

その場に現れてジョーを助けてくれたのは、ユダヤ系の血が流れているために迫害を受けてここまで流れ着いたベンジャミンです。

いま現在では亡くなった妻の母親アリス・オルカーダのもとに潜伏中で、ふたりはユダヤ人の子どもたちを国外へ脱出させる地下運動に加担していました。

ジョーはベンジャミンたちのことは誰もにも言わないと誓ってから、すぐにその場を立ち去ります。

【承】アーニャは、きっと来る のあらすじ②

銃は奪われても恋の炎は消えない

レスカンにも少しずつナチス兵が派遣されてくるようになり、そのほとんどが地元の住人たちに威圧的でした。

村中を24時間体制で厳重警戒、午後9時30分以降は一般人の外出禁止、教会は駐屯軍の本部として占有、銃火器はすべて没収。

父親の代わりにジョーをかわいがっているアンリは狩りが大好きで、愛用していたライフルを取り上げられてしまったために面白くありません。

そんなアンリにとっての初恋のお相手が丘の上に住んでいるアリスで、彼女がレジスタンスを応援していることも知っています。

今でもアリスに恋をしているという祖父にジョーが命じられたのは、彼女のもとに闇の物資を届ける買い物係です。

丘の上まで5キロほどの険しい道のりを大量の食品を抱えて歩くジョーに、ホフマンというパトロール中の下士官が親しげに声をかけてきました。

レスカンと同じようなのどかな田舎町で生まれ育ったというホフマンに、ジョーはドイツ語の本をもらったり一緒にバードウォッチングに遊びに行きます。

【転】アーニャは、きっと来る のあらすじ③

迷える子羊に救いの手を

アリスの家もナチスの監視下に置かれることになり、ベンジャミンはひそかに子どもたちを連れて山の中腹にある洞窟に脱出しました。

ここはアンリの父親がブランデーの密造に使用していた隠れ場所でしたが、これから季節が冬になると子どもたちは寒さに耐えきれないでしょう。

ジョーの母親・リーズは季節の変わり目に羊たちを適切な環境に避難させる、「移牧」を隠れみのにすることを思い付きます。

兵士たちを教会に招待して合唱団が聖歌をお披露目している間に、子どもたちに羊飼いの変装をさせて山をこえるつもりです。

故郷で馬や牛の移牧を見たことがあるホフマンは、羊飼いの中に幼い少女が混じっていることに違和感を覚えましたが上官には報告しません。

無事に子どもたちをスペイン側に送り届けたベンジャミンでしたが、ただひとつの心残りは自分の娘のアーニャのことです。

アーニャは祖母の家があるここにきっと来ると信じているベンジャミンは、レスカンに残ることを選びます。

【結】アーニャは、きっと来る のあらすじ④

次の世代への希望を託されたふたりの孫

国境付近からレスカンへと引き返す途中でベンジャミンはナチスの検問に引っ掛かってしまい、収容所への強制送還が決まりました。

足をくじいていて歩くのもやっとな様子のベンジャミンに、ジョーは馬に乗せてあげてほしいとホフマンに頼むことしかできません。

ヨーロッパの諸国軍にアメリカが参戦してからは一気に形成が逆転して、ナチスも撤退してレスカンは以前のような静かな村に戻ります。

戦地から帰還したジョルジュはつらい記憶から逃れるためにアルコールに溺れていて、ジョーの知っている優しい父に戻るにはしばらく時間がかかるでしょう。

アンリは長年の夢がかなってアリスと夫婦になり、ジョーは大好きな祖父と新しい祖母の幸せを願うばかりです。

戦争が終わってから1年後、アリスのもとにはワルシャワに逃れて一命を取り留めていたアーニャからの電報が舞い込んできます。

すぐにでも祖母の顔を見にくるというメッセージのとおりに、ジョーは草原の向こうからひとりの女性が笑顔で手を振りながら駆けてくる姿を目撃するのでした。

アーニャは、きっと来る を観た感想

舞台となっているのはフランス南西部のピレネーで、日射しを浴びて走り回る羊やどこまでも広がっていく山あいの景色が美しいです。

時間の流れが止まった地上の楽園のようなこの場所にも、ナチス政権と戦争の不吉な影が射し込んでいました。

人種の壁を打ち破り歴史に逆らうかのように築き上げていく、ジョーとベンジャミンの友情には心が温まります。

敵国の軍人でありながら不思議な魅力を放っている、ホフマン伍長のようなキャラクターも忘れられません。

それぞれの絆が引き裂かれてしまう終盤の展開には胸が痛みましたが、ラストに待ち受けているサプライズに救われることでしょう。

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