監督:ニマ・ジャヴィディ 2021年1月にオンリー・ハーツから配給
ウォーデン 消えた死刑囚の主要登場人物
<役>所長
ヤヘド(ナヴィド・モハマドザデ)
自分の出世のためなら、囚人などどうなってもよいと考える冷酷な男。<役>社会福祉士
カリミ(パリナズ・イザディアール)
消えた囚人を無罪だと信じる正義感の強い女。<役>アフマドの妻(セタレ・ぺシャニ)
夫がまだ生きていていると信じる妻。
ウォーデン 消えた死刑囚 の簡単なあらすじ
刑務所が引っ越しの作業をしています。
囚人を新しい刑務所に移送しました。
だが新しい刑務所から囚人が一人足りないとの電話があります。
所長と看守たちが、旧刑務所でその囚人捜しに躍起になります。
一方、社会福祉士の女が旧刑務所を訪問します。
さらに囚人の妻も登場し、なお一層囚人捜しに拍車がかかります。
果たして囚人はここにいるのでしょうか?逃げ出たのでしょうか?生死はどうでしょう?
ウォーデン 消えた死刑囚 の起承転結
【起】ウォーデン 消えた死刑囚 のあらすじ①
雨の中。
刑務所では引っ越し作業が急ピッチで行われていました。
数々の死刑囚の命を奪ってきた絞首台も外されようとしています。
所長は腕の立つ囚人に新しい絞首台の制作を強引に依頼しました。
初めは嫌がっていましたが、過去の汚点を突かれしぶしぶ引き受けることにしました。
囚人を乗せたバスが新刑務所に向かって出発しました。
旧刑務所では軍の大佐がやってきました。
出迎えた所長に昇進を伝えます。
冷静を装いながらも裏の洗面所で小躍りするかのように喜ぶ所長であります。
電話が掛かってきます。
それは新刑務所からで、囚人が一人足りないという知らせでした。
このままでは昇進の話が無かったことになるので、看守たちを集合させ経緯を聞きます。
監視体制の整った刑務所では外への逃亡は無理と考えた所長は、まだ囚人が旧刑務所にいるに違いないと大捜索が始まりました。
だが見つかりません。
囚人も必死です。
普通のところには隠れていません。
所長がマイクを使い、囚人に話しかけます。
扉を開けて出てきたら、今までの事は不問にすると伝えました。
扉が開きます。
【承】ウォーデン 消えた死刑囚 のあらすじ②
扉を開けて現れたのは、社会福祉士のカリミでした。
カリミはアフマドという囚人の調査をしていました。
この刑務所に現れたのもアフマドの事を聞き出すためです。
対応した所長はシャープな性格のカリミに、淡い恋心を抱きます。
だがカリミは所長に、アフマドは直近の控訴審で死刑が確定した事を伝えます。
残っていた囚人の証言からアフマドが靴墨を極秘に入手していたことを知ります。
再び大捜索が始まります。
洗濯室や機械室をくまなく捜しましたが靴墨の黒い跡が見つかるだけでアフマドは見つかりません。
カリミは先約があるので離れると所長に言います。
所長はその用事が終わったらすぐ戻ってくれと言います。
牧場主から借りた犬が洗濯室で吠えます。
洗濯機の中にアフマドが飼っていたカエルがいました。
残っていた囚人が、黒い人影が岩山のほうに逃げていったと証言します。
カリミが戻ってきました。
カリミが残っていた囚人と隠れて、何やらひそひそ話をしています。
カリミは実はアフマドが無罪だと信じて疑わないのです。
どうにかして逃がしてやりたいという強い想いを抱いていました。
カリミは洗濯室で、どこかにいるアフマドに話しかけます。
それを所長に見つかってしまいました。
恋心を打ち砕かれた所長はカリミに刑務所から出ていくように言いました。
【転】ウォーデン 消えた死刑囚 のあらすじ③
刑務所の外では解体業者が待機していました。
近くで飛行機の滑走路を建設するため、いち早く刑務所を取り壊さなければならないのです。
さらにアフマドの妻が娘を連れて来ていました。
夫がまだ生きていて中にいると信じて疑わず、解体を阻止するためです。
所長が解体業者と話し合い、もう少しだけ待ってもらうように頼みました。
刑務所の中でアフマドの妻が、夫の無実を訴えましたが取り合ってもらえません。
娘がいないことに気づき、捜します。
娘は独房にいました。
娘が人形を手にしているのを見た所長が、アフマドと接触したにちがいないと思い、娘を激しく尋問します。
あまりの恐ろしさに娘が失禁してしまいます。
人形は看守がプレゼントした物でした。
途方に暮れる所長が、壁に描かれた首吊りの落書きを凝視します。
独房の扉が勝手に閉まってしまいました。
看守を呼んでも応答がありません。
体当たりで何とか脱出した所長が、とうとう最終手段に出ました。
刑務所を完全密封して、催涙ガスを放出したのです。
それでもアフマドは現れません。
ベッドで横たわる所長に、男の老人が面会に来ました。
老人はアフマドが無実だと判っていたが言えなかったこと、アフマドの死刑を中止してほしいと涙ながらに訴えました。
所長のそばに、アフマドが飼っていたカエルがひっくり返って死んでいました。
【結】ウォーデン 消えた死刑囚 のあらすじ④
所長はアフマド捜索を断念し、全員の撤退を命じました。
数台の車が刑務所を離れていきます。
途中で所長が停止を命じました。
皆で岩山に隠れて、双眼鏡で刑務所の門を覗きます。
カリミは、アフマドの無実を証言した老人を送り届けました。
その後、はっとして刑務所に戻ります。
門の奥に人影らしき者が現れました。
カリミは岩山に隠れる所長たちを見て、車を門に激突させます。
人影は奥に逃げ込みました。
軍の大佐が現れ事情を聞きます。
が、所長はまだ真実を言いません。
早く撤退するように促されて、ようやく諦めました。
所長がうなだれながら車の座席に座ります。
何気に横の資料を見ました。
絞首台の設計図でした。
何かを察した所長が廃棄された絞首台を積んだトラックを追いかけます。
それを見たカリミが、アフマドの妻と娘を乗せて後をつけます。
所長がトラックに追いつき、停止させます。
荷台の絞首台の中から荒い息づかいが聞こえます。
所長が荷台に乗って、絞首台の当て木を一片剥がして中を見ました。
カリミたちの車が追いつき、心配そうに見つめます。
所長は何事も無かったかのように荷台を降り、トラックを出発させました。
絞首台の隙間から妻と目が合い、明るい空の景色を映しながらエンドロールを迎えます。
ウォーデン 消えた死刑囚 を観た感想
イラン映画と言うことで、静かな流れで進行するのかなと思っていました。
が、見事なまでに打ち砕かれました。
アメリカ映画にも匹敵するかのようなサスペンスフルな展開、嘘か真実か判らない囚人たちの証言などがミステリアスに進んでいきます。
社会福祉士カリミの存在もどこか怪しげで拍車をかけています。
特筆すべきはラストの所長がトラックの荷台に積まれた絞首台の中を確認するシーンです。
そこからカメラは中にいるであろうアフマドの目線で、最後まで進んでいきます。
所長と目が合った時の絶望感、トラックが動き出して妻と目が合った時の安心感、その対比が秀逸だと感じました。
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