監督:ダンカン・ジョーンズ 2010年4月にSPEから配給
月に囚われた男の主要登場人物
サム・ベル(サム・ロックウェル)
ルナ産業との3年契約で月で暮らす宇宙飛行士。採掘された資源を地球に送る仕事をしている。
ガーティ(声)(ケヴィン・スペイシー)
サムの生活をサポートするAIロボット。会社を裏切って驚きの行動を見せる。
テス・ベル(ドミニク・マケリゴット)
地球に残るサムの妻。サムとの関係は微妙。
イヴ・ベル(カヤ・スコデラリオ)
まだ幼いサムの娘。
月に囚われた男 の簡単なあらすじ
デヴィッド・ボウイの息子であるダンカン・ジョーンズがメガホンを取った、悲しくてちょっと切なくもなるSFスリラー。
月で一人孤独に仕事に従事するサムは、あることをきっかけに、隠されたとんでもない秘密を知ってしまいます。
サムに残された時間はあとわずか。
突如現れた”もう一人の自分”とともに、なんとか”サム”が地球に生還できるよう命を懸けて月からの脱出を試みます。
月に囚われた男 の起承転結
【起】月に囚われた男 のあらすじ①
近未来。
ルナ産業は地球の主要エネルギー資源であるヘリウム3を供給する産業で、サム・ベルがたった一人で月で採掘の仕事に従事していました。
契約は3年間。
あと数週間で契約満了で地球に帰れます。
サムの仕事は採掘された資源を回収し地球に送ること。
AIロボのガーティのみが話し相手で、毎日独り言をつぶやきながら、妻テスからの録画メッセージを見ては娘イヴの成長に目を細めて過ごしています。
通信機の故障で、リアルタイムの通信はできません。
ある日サムがいつものように飲み物を飲もうとしていると、そこにいるはずのないテスの幻覚を見てしまいます。
そしてうっかり手に火傷を負ってしまいました。
ガーティにはよそ見をしていて…と伝えますが、「幻覚を見ていたのでは?」と言われてしまいます。
地球が恋しいサムはここ最近体調がよくありません。
その日、いつものように月面を運転しながら採掘機に向かっていたサムは、またも幻覚を見てしまい、採掘機に突っ込むという事故を起こしてしまいます。
目が覚めるとそこは基地内の治療室でした。
そこにガーティがやってきて、まだしっかり寝ておくようにと伝えます。
しかしそうもしていられず基地内を歩いていると、ガーティがルナ産業の人間に採掘機が故障していることを伝える声を聞いてしまいました。
通信はできるはずがありません。
サムは問い詰めますが、報告のために録画しているだけだとはぐらかされてしまいました。
【承】月に囚われた男 のあらすじ②
サムは外に出て壊れた採掘機の様子を見に行こうとしますが、ガーティに阻止されてしまいます。
ルナ産業が修理に人を送ると言っているから、もう外に出なくていいというのです。
不審に思ったサムは、わざと基地の機械を故障させ、その様子を見に行くという口実でなんとか外に出ることに成功しました。
事故現場にたどり着き、事故車へと入ったサムは、そこに宇宙服を着ている男が倒れているのを発見しました。
おそるおそるヘルメットの砂塵をはらうとそこにあらわれたのは自分とうりふたつの顔でした。
男を連れて基地に戻ったサムはガーティを問い詰めますが、ガーティは男の治療が先だと言います。
目を覚ましたサムのような男は、ガーティに今の自分の状況を質問しました。
ガーティはサムが以前目覚めたときと同じような言葉をかけます。
その様子をサムは見つめていました。
すべて幻覚だろうと考えていたのです。
時が経ち、サムのような男は回復して歩けるようになりました。
そしてサムを見つけ話しかけますが、サムは無視気味にあしらいます。
サムのような男は勘づきました。
事故を起こしたサムは救出されたことにされ、基地内でクローンである“2人目のサム”が覚醒し、それが事故車からサムを見つけてしまったため、サム同士が鉢合わせするという状況になってしまったのではないかと。
ここで疑問が出てきました。
では元からいるサム=自分はオリジナルなのかということです。
しばらくして会社からメッセージが届きました。
救助班を乗せたイライザ号を送る、というのです。
あと14時間で到着するとのこと。
クローンに帰る場所なんてないという2人目のサムに、サムは「自分がサム・ベルだ」と怒りをぶつけます。
ガーティに聞いてもはぐらかされるだけ。
会社に不信が募る2人目のサムは、隠し部屋があるのではないかと探し回ります。
しかしサムは模型を作りながら、以前見て回ったが何もなかったと言います。
【転】月に囚われた男 のあらすじ③
部屋が見つからずいら立つ2人目のサムは、サムが作った模型台の下を見ようとして模型を壊し、大ゲンカとなってサムが負傷してしまいました。
2人目のサムは謝りますがサムは出ていきました。
そして1人になったサムは暴力的な2人目のサムの文句や、テスとうまくいってなかったことなどをガーティに話しかけます。
「彼女からメッセージは?」と聞くも、「基地のことしかわからない」としか答えてくれないガーティ。
そして「俺は本当にクローンなのか?」との問いかけに、ついにガーティは本当のことを明かしました。
3年前、サムは到着時のクラッシュのため治療室で目を覚ましたことになっていましたが、本当はクラッシュではないこと。
そしてサムもクローンであることを告げます。
テスやイヴの記憶も移植されたものだと。
サムはショックを受けました。
翌日、2人目のサムは、2人が出会ったことは会社にとって問題だとサムに語りました。
そしてガーティが以前生で会社と会話していたような行動からルナ産業が怪しいとも言います。
2人は行動に出ました。
2人はそれぞれの車で月面を移動し、通信ができないことを確認しました。
さらに遠くに移動したところ、見たこともない塔のような機械があるのを見つけます。
どうやらこれが通信の邪魔をしているようです。
近づこうとしたときサムがひどい咳をし、先に帰ると言って帰っていきました。
2人目のサムは残って調べることにします。
基地に戻ったサムですが、そのヘルメットと宇宙服には大量の血がついていました。
さらにトイレで吐血し、歯までもが抜け落ちたことに気付きます。
自分の身の異変に不安になったサムは、コンピューターで基地のデータベースにアクセスしようとしました。
しかしパスワードが一致しません。
すると背後から伸びるガーティのアームが、正しいパスワードを入力してくれたのです。
【結】月に囚われた男 のあらすじ④
モニターに映し出されたのは、何人ものサムたちが3年の契約を終える際に残したメッセージでした。
みな体調が悪そうで、地球に帰るためのポッドに乗り込むところで映像は終わります。
サムは急いでポッドのある部屋を調べ、ついにその地下に怪しい空間を発見しました。
戻ってきた2人目のサムと入ると、そこには大量のサムのクローンが保管されており、2人は何年も同じことがサムのクローンによって繰り返されてきたことを確信します。
そしてクローンの寿命が3年ほどだとも悟ります。
サムはガーティに、なぜパスワードを教えてくれたのか尋ねました。
ガーティは「手伝うのが仕事だ」と答えます。
その後サムは通信ができる位置まで月面を移動し、地球のテスに電話をかけました。
出たのは若い女性。
そしてテスが数年前に亡くなったこと、女性が娘のイブだと知ります。
サムは急いで電話を切り、嗚咽を漏らして泣き崩れました。
イライザ号到着まであと7時間。
2人は、会社が2人を見つけたら2人とも生かしておかないだろうと考えました。
そしてサムが地球へかけた電話の映像を見た2人目のサムは、「“新しいサム”を用意しよう。
救助班が来る前に地球へ帰れ」とサムに計画を伝えます。
しかしサムの体調はどんどん酷くなるばかり。
サムは、「自分は酷い状態だ。
お前が帰れ」と告げます。
“新しいサム”が用意されました。
2人は事故現場へ向かい、サムは別れを告げ事故車の中へ入ります。
基地に戻った2人目のサムは、サムを案じるガーティの言う通りデータを消去し、さらに採掘機が電波妨害塔へ衝突するよう進路を設定し、資源出荷用のポッドから地球へ向けて飛び立ちました。
それを事故車の窓から見送り、サムは眠るように死にました。
新しいサムが目覚め、ガーティがいつものセリフで迎えます。
その後、ルナ産業の株価は地球に帰った2人目のサムの告発によって大暴落するのでした。
月に囚われた男 を観た感想
月というある意味とても閉鎖的な場所での物語、登場人物もほぼ2人のサムのみということで単調なストーリーなのかと思いきや、ラストまで続く緊張感と少し悲しくなるドラマのバランスが素晴らしく、本当に傑作だと感じました。
ハッピーエンドと取っていいのかわかりません。
ですが、過去に誰にも知られずに葬り去られ続けたサムたちの無念が晴らされたのだと思いたいです。
サム・ロックウェルが1人2役で2人のサムを演じています。
体調が悪化していくサムなど、とにかく迫真の演技が胸に響きます。
画面に映るほとんどがサム・ロックウェルのみですが、圧倒的な存在感があるからこそ成り立っている作品です。
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