映画「合葬」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|小林達夫

映画「合葬」

監督:小林達夫 2015年9月に松竹メディア事業部から配給

合葬の主要登場人物

秋津極(柳楽優弥)
主人公。上野彰義隊の18番隊に所属する。武士として死に場所を探している。

吉森柾之助(瀬戸康史)
あだ討ちを理由に体よく武士の家を追い出される。武芸全般が苦手。

福原悌二郎(岡山天音)
極と柾之助の友人。長崎で洋学を学んでいて弁舌がうまい。

福原砂世(門脇麦)
悌二郎の妹。極の婚約者。世間知らずで思い込みが激しい。

森篤之進(オダギリジョー)
彰義隊のご意見番として暴発を押さえ込む 。笛を吹くのが趣味。

合葬 の簡単なあらすじ

武闘派で徳川と運命をともにする覚悟の秋津極、養子に行った家を追い出された吉森征之助、極と妹の砂世との幸せを願う福原悌二郎。

3人はそれぞれ目的は違いますが上野彰義隊へ入隊して、江戸市中の見回りをしながら鍛錬を積んでいきます。

反逆者の汚名を着せられた彰義隊の隊員たちは次々と戦死していき、ただひとりだけ生き残った征之助はふたりの友の冥福を祈るのでした。

合葬 の起承転結

【起】合葬 のあらすじ①

さ迷う若者たちを捉えた1枚の写真

慶応4年(1868年)4月11日、300年に渡る徳川幕府の支配が終わりました。

徳川慶喜は江戸城を明治政府に明け渡し水戸へ謹慎しますが、残った武士たちが上野に立て籠って彰義隊を結成します。

そんな中で佐幕派と倒幕派の口論に巻き込まれて父親・笠井が亡くなり、敵討ちを命じられたのが義理の息子・柾之助です。

持参金目当てに笠井家に養子として迎え入れられていただけの柾之助は、命をかけてまで戦うつもりはありません。

いやいやながら屋敷を出た柾之助が団子屋でひと休みしていると、友人の秋津極と福原悌二郎が言い争いをしていました。

悌二郎の妹・砂世と幼い頃から結婚を誓い合ったはずの極ですが、今になって家督を弟に譲って徳川家の再興を目指す彰義隊と心中するつもりです。

団子屋を出て3人で写真館で記念撮影をした後、行く当てのなかった柾之助も極に誘われるままに彰義隊に入隊しました。

谷中門の春性院に駐屯する8番隊に配属された極と柾之助は、江戸市中の見回りに精を出します。

【承】合葬 のあらすじ②

決戦前の息抜き

悌二郎は秋津を除隊してもらえるように相談役・森篤之進と面会しますが、3000人ほどに膨れ上がった隊を止めることは不可能です。

力強くで連れて帰ろうとしましたが、剣と剣の勝負では極に敵いません。

極の説得をあきらめた悌二郎でしたが、森の人柄に共感して隊に残ることを決意します。

若い隊士を小料理屋「松源」に連れていって食事をごちそうした森ですが、たまたま隣の部屋にいた薩摩の軍人に因縁を付けられて乱闘へと発展してしまいました。

騒ぎの最中に階段から転倒して軽症を負った極を、献身的に看病するのが松源の仲居・かなです。

かなをひと目で好きになってしまった柾之助でしたが、極への恋文を託されてしまったのが面白くありません。

手紙を盗み見た揚げ句に、極に届けずにバラバラに引き裂いて橋の上から投げ捨てました。

死にゆく若者たちへのせめてもの手向けと、組頭からお金を受け取った隊員たちは深川の杉戸屋に芸者遊びへと繰り出します。

ひとりひとり取って置きの怪談を披露して芸者と抱き合う中でも、極が考えているのは夢枕に立った徳川慶喜のことです。

【転】合葬 のあらすじ③

剣より強いもの

道場で修行を重ねた悌二郎は極と互角に戦えるほどに上達しましたが、あくまでも剣ではなく勉学の大切さを訴えていくつもりです。

そんな中で徳川家は彰義隊を一切無関係な集団と見なして、その処分のすべてを新政府軍に委ねるとの声明を発表します。

もはや彰義隊には市中の見回りを続ける大義名分はなくなり、上野に駐屯することさえ許されません。

森は投降を直訴しますが幹部の天野の逆りんに触れて破門を言い渡され、小料理屋で酔いつぶれていたところを武装蜂起の決行派に暗殺されてしまいました。

森がいない隊に悌二郎は未練はなく、実家に戻って兄に土下座してあやまると以前にお世話になった長崎の間部のもとで一から勉強し直すように命じられます。

砂世は年齢の離れた尾関という男性のもとへ嫁ぐことが決まりましたが、最後に極の姿を見れなかったことだけが心残りです。

悌二郎は長崎に戻る前に砂世に会ってほしいと頭を下げますが、極には受け入れてもらえません。

【結】合葬 のあらすじ④

新時代の夜明けを見たのは

かなの気をひくために柾之助は極が昼から遊女のもとへ通っていることを告げ口する手紙を送りましたが、それでもかなの気持ちは動きません。

柾之助はかなにプレゼントするはずだった高価なかんざしを名前も知らない芸者に渡してして、極と一緒に出現に備えます。

上野の山が政府軍に囲まれていよいよ開戦となり、極と柾之助だけを死なす訳にはいかないと悌二郎は長崎行きを諦めて彰義隊に残りました。

雨が降りしきる中で悌二郎の遺体を発見した極は、敵の刀に傷つけられる前に首を切り落として持っていきます。

逃走中に極が背中に銃撃を受けたために、柾之助が逃げ込んだ先は戦場の近くにあった民家の納屋です。

苦しさに耐え兼ねた極は夜明けを待たずに切腹をしてしまい、翌朝にこの家の住人に手伝ってもらい柾之助はふたりを埋葬します。

極の懐から出てきたのはいつか3人で撮影した1枚の写真、新政府が江戸の名称を東京に変更したのは戦争が終わった7月11日、元号が明治に改められたのは9月8日。

兄と極の死を知った砂世は後を追うことを考えましたが、夫となった尾関の優しい言葉に引き留められるのでした。

合葬 を観た感想

幕末を生きる若者たちのやり場のない怒りを巧みに利用する彰義隊は、今の時代におけるブラック企業のようなものなのかもしれません。

無理難題を押し付けられた揚げ句に衣食住を奪われてしまう、吉森柾之助をネットカフェ難民に重ねてしまいました。

やたらとモテるくせにどこまでもストイックな主人公、秋津極役の柳楽優弥の横顔には男女を問わずに魅せられてしまうでしょう。

愛する人の生還をただひたすらに待ち続けている、影のヒロイン・砂世を演じている門脇麦のはかなげな表情も胸に焼き付きます。

現実の世界では結ばれることのなかった極と砂世が、月の光と笛の音色に導かれるシーンが幻想的です。

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