監督:蜷川幸雄 2003年3月に東宝から配給
青の炎の主要登場人物
櫛森秀一(二宮和也)
17歳の高校生。母の友子、妹の遥香を守るため、自宅に居ついた友子の2番目の夫であり、元義父である曽根隆司の殺害を計画する。
櫛森友子(秋吉久美子)
秀一と遥香の母。最初男の夫であり、秀一の実父を交通事故で亡くしている。今は知り合いのインテリアショップで働いている。
櫛森遥香(鈴木杏)
秀一の妹。14歳の中学生
曾根隆司(山本寛斎)
友子の二人目の夫。暴力が原因で友子と離婚後、突如、櫛森家に現れ、居つくようになる。
福原紀子(松浦亜弥)
秀一のクラスメイトで美術部員。
青の炎 の簡単なあらすじ
17歳の少年・櫛森秀一。
彼は、普通の高校生として過ごす傍らで、ある計画を思案していました。
突如として現れ、櫛森家に居ついてしまった母・友子の2番目の夫であり、秀一の元義父である曾根隆司。
母はどうしてか、曾根を家に受け入れ、追い出そうとはしません。
秀一は、母と妹との平穏な暮らしを守るため、完全犯罪による曾根殺害を計画し、遂行します。
青の炎 の起承転結
【起】青の炎 のあらすじ①
17歳の高校生・櫛森秀一。
彼のクラスでは石岡拓也がずっと登校していませんでした。
クラスメイトの笈川から、「石岡が学校に来ないのは両親と兄を殴ったからで、秀一がそれを焚きつけた」という噂の真相を尋ねられます。
秀一は単なる噂と否定しつつも、「まともに話ができない相手には実力行使しかない。
時には力づくで守らなければいけないこともある。」
と返答します。
帰宅後、母・友子、妹・遥香と団欒しているところに、曾根が酒を要求してきました。
要求のままに酒を渡す友子の態度を秀一は批判します。
ガレージにて秀一は、テープレコーダーに「曾根に対する怒り」と「曾根を排除できるのは自分だけ」だと吹き込むのでした。
後日、秀一は、ふとしたきっかけでクラスメイトの福原紀子とデートをすることになります。
ガレージで紀子とのデートについてテープレコーダーに記録しているところに、遥香の悲鳴が聞こえてきます。
駆けつけた秀一はバットを振りかざし、遥香に掴みかかる曾根を威嚇します。
秀一に対し、曽根も声を荒げますが、一触即発のところで友子が止めに入ります。
友子はガレージに籠る秀一に、遥香は曽根の連れ子で、秀一とは血のつながった兄妹ではないことを明かします。
そして、来年の春に15歳になれば遥香は実父である曾根の承諾なしに友子の養子になれることを伝え、それまで我慢してほしいと頼みます。
その後、話をしようと友子の部屋へ行く秀一でしたが、曾根の部屋から聞こえてくる友子の喘ぎ声を耳にします。
激情に駆られ、ナイフを手に取りますが思いとどまり、その場で泣き崩れる秀一。
そして、「曾根の計画的殺害」を決意します。
【承】青の炎 のあらすじ②
偽名を使い、「ひどい二日酔いに似た効果」を引き起こす薬を入手した秀一は、曾根の酒に少しずつ薬を混入させていきます。
完全犯罪へ至る方法を探る秀一は、法医学の本から感電死による殺害を考案します。
そして、準備を整えた秀一は、ついに殺害計画を実行に移します。
課題を外で描くためと美術の授業を抜け出し、自宅にて薬の効果で眠る曽根を感電死させ殺害します。
その後、アリバイ工作のため、「完成途中の絵」を事前に用意しておいた「完成させた絵」にすり替えて学校へ戻ります。
帰宅した秀一は自ら通報し、捜査を担当する山本英司が聴取に訪れます。
後日、曾根の死は解剖の結果から病死ということになり、秀一は自らの完全犯罪が成立したことに歓喜します。
普段の生活に戻る秀一でしたが、回収しようとした犯行道具が隠し場所から無くなっていることに気づきます。
ほどなくして、バイト先に石岡が来て金を要求してきます。
たしなめる秀一に石岡は、「親父殺し」の秘密をバラすと脅してきます。
【転】青の炎 のあらすじ③
犯行道具を発見し、持ち帰ったのは石岡だったのです。
やむを得ず秀一は一週間後に30万円を用意する約束を取り付けます。
その後、遥香は「遥香が秀一とは血が繋がっていないこと」、「曾根が癌を患っており、老い先短いこと」、「死ぬ前に遥香に会うために櫛森家に来たこと」を以前、曾根から告げられたと秀一に明かします”自分が直接手を下さなくても、曾根は癌でどのみち死んでた”秀一は途方に暮れます。
石岡との約束の期日に、秀一は金を用意できなかった代わりに、バイト先のコンビニで店員が秀一ひとりの時に、コンビニを襲いに来た石岡に金を明け渡すという強盗計画を持ち掛けます。
計画を承諾した石岡は打ち合わせ通りにコンビニに押し入りますが、秀一は突然予定外の行動を取ります。
二人はもみ合いになった末に、秀一がナイフを突き刺し、石岡は死亡してしまいます。
秀一は今回の事件で再び山本と顔を合わせることになりますが、帰宅を許されます。
【結】青の炎 のあらすじ④
後日、秀一は警察署にて山本から事情聴取を受けることになります。
山本は、コンビニの監視カメラ映像を見せつつ、今回の事件について不自然な箇所を列挙していきます。
山本は石岡が死亡したのは事故によるものではなく、秀一が刺し殺したのではないかと指摘します。
取り調べ後、登校する秀一ですが、事件の影響を受け、学校での居心地が悪くなり、たまたま居合わせた紀子と共に帰宅します。
秀一はやりきれない想いや殺人を犯したことを紀子に告白します。
ほどなくして、秀一は再び取り調べを受けることになります。
山本は、犯行当日に秀一が授業を抜け出していたことや、曾根の遺体の歯に被せられた銀が熱で溶けていたことから、秀一が感電死させたと推察します。
さらに、石岡の自宅から秀一の犯行に使った道具が発見され、それをネタに脅されたため、石岡まで殺害したのではないかと突きつけます。
観念した秀一は、友達に別れを言いたいことを理由に、自白まで1日だけ猶予を貰います。
秀一は紀子に別れを告げた後、こちらへ走ってくるトラックに向かっていきます。
青の炎 を観た感想
殺人の犯行動機が、ただ家族を守りたかったという純粋さ故に、当作の顛末は非常に儚く、非常に切ないものがあります。
完全犯罪を成立させながらも、曾根の病体の真実を知ったときのシーンですが、「自分がやらなくても、どうせ死んでた。
俺、バカみたい。」
この悪意すら感じる皮肉な結末に対する秀一のやりきれなさを表した虚空を眺める表情が個人的に強く印象に残っています。
殺害計画に関して、道具の調達経緯や実験といった、準備から実行までの描写が非常にリアルで見応えがありました。
原作未読で視聴しましたが、十分に楽しめる内容でした。
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