監督:トッド・ヘインズ 2016年2月にファントム・フィルムから配給
キャロルの主要登場人物
キャロル・エアード(ケイト・ブランシェット)
ヒロイン。娘・リンディの親権を夫と争議中。自分が正しいと思うことをやり通す。
テレーズ・ベリベット(ルーニー・マーラー)
チェコ系アメリカ人。百貨店の販売員で写真の撮影や現像にも詳しい。他人と関わるのが苦手で優柔不断。
ハージ・エアード(カイル・チャンドラー)
キャロルの夫。結婚後も母親に依存している。
アビー・ゲルハルト(サラ・ポールソン )
5歳の時からのキャロルの理解者。リンディの名付け親にもなった。
キャロル の簡単なあらすじ
デパートで働いていたテレーズ・ベリベットが、友情をこえた思いを抱いていたのはお客として来店したキャロル・エアードです。
夫・ハージと親権問題で重要な局面を迎えているキャロルのために、テレーズは身を引きます。
趣味の写真を生かしてテレーズは新聞社に転職、キャロルはひとり暮らしを始めてそれぞれの道を歩んでいくのでした。
キャロル の起承転結
【起】キャロル のあらすじ①
アイゼンハワーがアメリカ大統領となった1953年、テレーズ・ベリベットはニューヨークの高級デパート「フランケンバーグ」で働いていました。
毎朝リチャード・セムコと一緒に自転車で通勤していて、クリスマスシーズンになると従業員の全員が入り口で手渡されるサンタの帽子を被らなければなりません。
子供向けのおもちゃを販売するフロアで接客を担当しているテレーズにとっては、この時期が1番の書き入れ時で大忙しです。
娘・リンディへのプレゼントを探しているというキャロル・エアードに電車模型のセットをお勧めしたテレーズは、彼女がカウンターに手袋を置き忘れていったことに気が付きます。
伝票に控えていた住所を頼りに忘れものを小包で郵送すると、キャロルから店に電話がかかってきました。
お礼にランチへ招待されたテレーズは、間もなくキャロルが夫のハージと離婚することを打ち明けられます。
テレーズもリチャードから結婚を迫られていますが、はっきりとした態度を示していません。
今度の日曜日にニュージャージー州の自宅にまで遊びにきてほしいというキャロルからの誘いに、テレーズは不思議なときめきを感じていました。
【承】キャロル のあらすじ②
日曜日の朝にリチャードに見送られながら、テレーズはキャロルが運転する車に乗り込みました。
みんなでクリスマスを楽しむ予定でしたが、事前の連絡も入れないでハージが現れて母親に会わせるためにリンディを連れていってしまいます。
玄関で激しく言い争う場面をテレーズは目撃してしまい、パーティーは気まずい雰囲気のままでお開きです。
次の日にはハージが家庭裁判所に差し止め請求を起こしたために、キャロルはリンディと会うことさえ許されません。
これまでは共同親権で同意していていたはずが、キャロルの派手な交遊関係を「道徳的条項」として判断するように法廷で求めていくつもりです。
審問が終わるまでは相手側の素行調査に気をつけるようにと、キャロルは顧問弁護士のフレッドにアドバイスされました。
しばらくは車で気の向くままに旅に出るというキャロルに、テレーズも付いていきます。
テレーズのためにヨーロッパ行きの船のチケットを買っていたリチャードは面白くありません。
【転】キャロル のあらすじ③
キャロルはキャノンのカメラとコダックのフイルム、テレーズはビリー・ホリディとテディ・ウィルソンのレコード。
クリスマスプレゼントを交換したふたりはアメリカ大陸を西へ西へと進み、新年をアイオワ州ウォータールーで迎えました。
ここまでは安価なモーテルでそれぞれが別の部屋に宿泊していましたが、高級ホテルのスイートルームで乾杯をしてからひとつのベッドで一緒に眠ります。
隣の部屋に泊まっていたのは女性向けの裁縫セットを売っていると親しげに接触してきたトミー・タッカーで、本当の目的はふたりの動向を逐一ハージに報告することです。
昨夜の一部始終を盗聴したテープを雇い主に送ったと知ったキャロルは、テレーズのことを親友のアビー・ゲルハルトに託してひと足先にニュージャージーへと帰ります。
いつかふたりの関係が許される日がくること、その時には心からテレーズを迎え入れる覚悟があること、それまでにはお互いに連絡を取り合わないこと。
置き手紙を読んで涙を流すキャロルを、アビーは静かに見守りながらニューヨークまで送り届けました。
【結】キャロル のあらすじ④
デパートでの仕事が終わってから飲みに行った先でテレーズが仲良くなったのは、ニューヨークタイムズ紙で働いているダニーです。
テレーズがカメラに詳しいと知ったダニーは、編集部の写真担当助手を紹介してくれました。
自身も新聞記者から作家を目指しているというダニーは、個人的に楽しむだけでなく作品集やポートレートといった形で世に送り出すように勧めます。
心理療法士のもとでカウンセリングを受けることになったキャロルは、自分から親権を手放す代わりにリンディと面会する権利を勝ち取りました。
ニュージャージーの家はひとりで住むには広すぎるために売却して、ニューヨークのマディソン街に部屋を借りて家具店でバイヤーの仕事も始めるつもりです。
テレーズがタイムズで働き始めたことをアビーから聞き、キャロルは高級ホテル・リッツのレストランで待ち合わせをします。
テレーズはダニーたちとパーティーへ、キャロルはオークルームで開かれる会食へ。
食事の後にお互いの近況を報告したふたりは、ほほえみを交わしながら別々の方角へと向かうのでした。
キャロル を観た感想
新大統領の誕生とクリスマスギフトの発注で大忙しの店内で、主人公キャロル役のケイト・ブランシェットが年下の女性へと注ぐ視線が情熱的です。
「天から落ちてきたよう」とキャロルに言わしめるほどピュアなもうひとりのヒロイン、テレーズを演じているルーニー・マーラーにも魅せられますね。
肉体的な性別や世間からの厳しいまなざしに引き裂かれていく、ふたりのピュアな思いが痛切です。
お付き合いをしているリチャードからのプロポーズの返事はおろか、ランチの注文にさえ迷ってしまうほどのテレーズが思いきって下した決断が衝撃的でした。
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