映画「アメリカン・ヒストリーX」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|トニー・ケイ

映画 アメリカンヒストリーx

監督:トニー・ケイ 日本公開2000年2月に日本へラルドから配給

アメリカン・ヒストリーXの主要登場人物

デレク・ヴィンヤード(エドワード・ノートン)
白人至上主義の青年。父親を黒人に殺害された過酷がきっかけで、怒りに身を任せた人生を歩む。

ダニー・ヴィンヤード(エドワード・ファーロング)
デレクの弟。兄に強く憧れている。

ボブ・スウィーニー(エイヴリー・ブルックス)
ダニーが通う学校の校長。白人至上主義に傾倒するヴィンヤード兄弟を、正しい道に導こうと奮闘する。

キャメロン・アレクサンダー(ステイシー・キーチ)
白人至上主義集団DOCの創始者。デレクのみならずダニーもその手中に収めようとする。

ラモント(ガイ・トリー)
陽気な黒人受刑者。デレクに立ち直るきっかけを与える。

アメリカン・ヒストリーX の簡単なあらすじ

現在でもアメリカに蔓延する、人種差別を題材にした作品。

主演はエドワード・ノートンで、本作品出演のため大幅に肉体改造を行い、徹底した役作りがされました。

「ファイト・クラブ」の頃のような華奢な青年から大きく見た目が変貌した姿は、強烈な印象を与えてくれます。

高校の優等生であったデレクは、父親が黒人に殺害されたことがきっかけで大きく生まれ変わります。

黒人殺害事件を起こし、刑期を終え出所した彼は、再び生まれ変わります。

アメリカン・ヒストリーX の起承転結

【起】アメリカン・ヒストリーX のあらすじ①

怒りと憎しみの人生を歩む青年デレク

カリフォルニア州デニス・ビーチに、家族と共にアパートで暮らすデレク・ヴィンヤードは、白人至上主義に傾倒する若者で、鍛え上げた肉体にスキンヘッド、胸に刻み込まれたナチスのシンボルであるハーケンクロイツがトレードマークの青年です。

ある夜のこと、デレクは同じ白人至上主義グループに所属するステイシーとベッドを共に過ごしていると、銃で武装した黒人グループが、彼の自宅前に息を潜めてやってきます。

このグループは、以前デレク率いる白人グループとバスケットコートの使用権を賭けて勝負し、いざこざの末コートを譲ることになったグループでした。

その様子を、自室の窓から覗いていた弟のダニーは、そのことを告げにデレクの部屋を訪れ、デレクは銃を携帯し腹を括った表情で黒人グループを迎え撃ちます。

結果的に返り討ちにし、デレクは殺人罪で3年間刑務所に投獄されてしまいます。

そして3年後、デレクの出所を間近に控えた頃、警察内でも彼がシャバに復帰することを警戒しており、ピリピリとした状態でした。

【承】アメリカン・ヒストリーX のあらすじ②

弟のダニーとデレクの出所

デレクだけではなく、高校生の弟ダニーも兄への強い憧れから白人至上主義を掲げており、兄と同じくスキンヘッドの風貌で、学校内でも黒人グループと揉めたりするなど、思想と共に行動面でも差別的な言動が目立ちます。

学校での課題も、ヒトラーの著書である「我が闘争」からの影響が強い、白人至上主義の主張が色濃いレポートを提出するなど、校内でも問題視されていました。

学校長であるスウィーニーは、彼のレポートを却下し、新たな課題として「アメリカン・ヒストリーX」と題する、デレクが白人至上主義になった経緯や彼の言動が家族にどのような影響をもたらしたかなどのレポートを、改めて提出するように指示します。

その一方で、刑期を終えたデレクがついにシャバに戻ってくるのですが、髪の毛も生え揃っており以前のように怒りに充ちた表情も無くなり、穏やかな風貌で自宅に帰ってきます。

ダニーや家族は彼を温かく歓迎し、しばらくぶりの再開に場の空気も和みますが、デレクが所属している白人至上主義集団DOCのメンバーである、セス・ライアンがデレクの出所を嗅ぎ付け家にやって来ます。

セスやDOCのメンバーと接触していること、スウィーニーからの連絡で差別的な思想が強いことなどの理由でダニーを心配したデレクは、ダニーにDOCのパーティーに行くことを禁じます。

ダニーはデレクがまるで別人のように変わったことに戸惑いますが、言い付けを守り自宅で待機します。

【転】アメリカン・ヒストリーX のあらすじ③

DOCの創始者キャメロンとデレクのカリスマ性

デレクが有色人種を憎むようになったきっかけは、消防士である父が消火現場で黒人に射殺されてしまったからで、それ以来憎しみと怒りに充ちた人生を歩んできました。

そのネガティブな感情を上手く突き、利用するためにデレクに近づいたのが、DOCの創始者であるキャメロンでした。

キャメロンは、知的で聡明且つカリスマ性も持ち合わせたデレクを利用し、洗脳することで手を汚さず自身の思い通りに動かし、有色人種の働くスーパーマーケットを襲撃するなど、数々の蛮行を行っていました。

デレクもキャメロンの下に付いて以来、有色人種への憎しみが強まり、人種への意見が違えば家族にも攻撃的になるなど、白人至上主義の思想を加速させます。

そして、セスに誘われるがままDOCへのパーティーへ出向き、キャメロンと話しをつけるため、ダニーを置いて乗り込みます。

しかし、自宅待機中のダニーの下に、DOCのメンバーが訪れて来たため、ダニーはデレクとの約束を破りパーティーに出掛けてしまいます。

【結】アメリカン・ヒストリーX のあらすじ④

最悪の結末

パーティー会場に着いたデレクはキャメロンに会いに行くと、その場で居合わせたダニーを帰し、弟と共に脱会の意思を伝え、その場を去ります。

強引にDOCとの繋がりを絶ったデレクにダニーは感情を爆発させ、服役中に何があったのか聞きます。

刑務所内でも、受刑者のミッチ・マコーミックが仕切る白人至上主義のグループに属していたデレクでしたが、ある日ミッチがヒスパニック系の受刑者から薬物の取引をしている所を目撃し、グループと距離を置きます。

反対に、刑務作業を共にする黒人ラモントと関係が良好になり、それを良く思わなかったミッチ達は、デレクに暴行とレイプを行います。

その件以来、ミッチ達とさらに距離を置くようになったデレクは、ラモントに「完全に孤立してしまった今なら、黒人からも命を狙われる。」

と警告されます。

しかし、デレクは出所まで何の被害も無く、実はラモントが根回ししてくれたお陰だと気付きます。

有色人種の中にも損得なしで行動してくれる人物が存在することを自身の身で知ったデレクは、それ以来考えを改めて、憎しみにまみれた生き方と決別します。

ダニーもその考えに従い、それまでの生き方を変え、新たなスタートを切るのでした。

次の日の朝、デレクは保護司との面会と職探しがてら、ダニーの登校に連れ添いますが、スウィーニーと警察官に街の黒人達とDOCの抗争が始まりそうだと聞きます。

スウィーニーは、デレクにDOCに説得するように提案し、命の危険を感じながらも了承します。

デレクはダニーに、昨夜自宅前で怪しい車が出入りするのを見掛けたため、警戒するように告げ彼を見送ります。

しかし、彼を見送ったデレクの前に昨夜と同じ車が横切ったため、急いでダニーの元へと駆けつけます。

しかし、ダニーはトイレで以前トラブルを起こした黒人生徒に背後から銃で撃たれ絶命しており、駆けつけたデレクはダニーの亡骸を抱き寄せ、泣き叫ぶのでした。

アメリカン・ヒストリーX を観た感想

本作の舞台であるデニス・ビーチのような、異なる人種が共存し絶えず揉め事やいざこざが起きるような環境の過酷さは、世界規模で見ると治安が良い日本では理解しにくいですが、人種差別によって人としての価値を決めつけたり命を落としたりすることは、無意味でただ虚無感が募る愚かな行為だと、この作品を見て改めて強く感じました。

主演のエドワード・ノートンによる鬼気迫る演技力は、そんな悲しみが強く表現されており、他の役者を完全に喰ってしまうほどの強烈な存在感は、物語に最後まで惹き付けるほど個性的です。

世界規模で深刻な社会問題である人種差別を、ショッキングな形で問題提起した作品ですので、色々な方に見てもらいたい作品です。

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