監督:黒澤明 1961年4月に東宝から配給
用心棒の主要登場人物
桑畑三十郎(三船敏郎)
用心棒
新田の卯之助(仲代達矢)
丑寅の弟
馬目の清兵衛(河津清三郎)
賭場の親分
新田の丑寅(山茶花究)
清兵衛の子分
権爺(東野英治郎)
居酒屋の主人
徳右衛門(志村喬)
造酒屋、丑寅の後見人
用心棒 の簡単なあらすじ
浪人の三十郎が清兵衛に用心棒として売り込み、対する丑寅の子分を、瞬く間に殺害します。
清兵衛は用心棒にと思いますが、金額が高過ぎます。
そこへ丑寅の弟、卯之助が現われ、一時休戦にさせます。
三十郎は、丑寅本人の指示で、子分に役人殺しさせ、自供させた上、清兵衛へ渡します。
今度は丑寅が清兵衛のせがれを人質に取ります。
逆に清兵衛は、徳右衛門の情婦を人質にします。
三十郎は丑寅側につき、情婦を逃がすのですが、清兵衛の仕業だと逆上した丑寅は激化します。
ところが、情婦を逃がしたのは三十郎だという、手紙が見つかり、丑寅の拷問を受けます。
隙を見て逃げ出した三十郎は、丑寅一家と対決し、切り倒し町を去ります。
用心棒 の起承転結
【起】用心棒 のあらすじ①
浪人、桑畑三十郎が宿場町、馬目宿にあらわれます。
野犬が人の手をくわえて歩く、そんな物騒な宿場町なのですが、ならず者が取り囲む中、居酒屋へ入り込みます。
居酒屋のあるじ、権爺は風体の上がらなさそうな三十郎に、タダで飯を食べさせ、賭場の跡目相続争いで、二大勢力がしのぎを削っているらしいことを話します。
賭場の抗争とは、元締めの馬目の清兵衛が新田の丑寅を差し置いて、与一郎に跡目を継がせたのが実態だったのです。
逆上した丑寅は後見人に造酒屋徳右衛門にしたのですが、対立した双方は泥沼化したままで、町の産業の絹は取引されず、荒ぶだけの状態でした。
三十郎はあらましを聞き終えると、飲み代で町を平和にする約束をします。
そして三十郎は権爺の居酒屋で思案した挙句、妙案を思いつき実行に移します。
三十郎は馬目親分清兵衛のもとで、自分を売り込み、もう一方で親分の丑寅の子分3人を瞬時に切り倒しました。
清兵衛は三十郎の腕をみて大金50両で用心棒にするのです。
これを聞いた清兵衛の女房おりんは、納得がいかず、その半金でよいので、三十郎を亡き者にしろと強欲な女房でした。
【承】用心棒 のあらすじ②
三十郎は清兵衛とおりんの話を盗み聞きし、丑寅一家との対決で前金25両を返し、清兵衛との用心棒の件を断ります。
三十郎は当初の目的である、双方の親分同士を戦わせ共倒れさせるつもりでしたが、八州廻りの役人が来るとの通報で中止になりました。
対決寸前で行き場を失ってはいますが、八州廻りの役人が滞在する中でも、三十郎を巡る双方の駆け引きは続きます。
そんな中、ある宿場で役人殺害の知らせがくると、八州廻りの役人は馬目宿を後にします。
10日間滞在した八州廻りの役人がいなくなり、双方の三十郎を巡る争いも激しくなるであろうと、誰もが予想しますが、争奪戦は鳴りを潜めたままです。
丑寅一家の三男、新田の卯之助が馬目宿へ戻り、丑寅と清兵衛双方の手打ちさせていました。
そんな中、三十郎は、丑寅の子分が八州廻りの役人を、早く馬目宿から追い出すため、宿場で役人を殺害したという、話を聞くのです。
自白した丑寅の子分2人を捕らえ清兵衛は大喜びで買い取るのです。
清兵衛は手打ちを破断にしますが、卯之助が白状した下手人を殺害し、清兵衛のせがれの与一郎を人質にすることで立場は逆転します。
今度は清兵衛が丑寅の後見人である徳右衛門の情婦おぬいを人質にし、与一郎との交換を打診するのです。
【転】用心棒 のあらすじ③
こうして、清兵衛と丑寅の交換は終わります。
ところが、三十郎はおぬいが元は農婦の女房で、一目惚れした徳右衛門は、丑寅一家の権威を借りて博打の借金の形にし、無理矢理自分の情婦にした経緯を知ります。
さらに、幼い子供がいることで義憤に駆られます。
そこで、おぬいを逃がそうと丑寅一家の用心棒となり、見張りを殺害します。
おぬいを助け出した三十郎は、おぬいら3人家族に丑寅からもらった用心棒代を渡し、馬目宿から逃がします。
丑寅一家は、おぬいが逃げたのは、清兵衛の所業だと思い憤慨し、多左衛門の屋敷に火を放ちますが、今度は清兵衛に徳右衛門の酒樽を襲われ、大樽を壊されます。
宿場町は大混乱で、いたるところで死人がで阿鼻叫喚の図となります。
一方で、おぬいの夫小平は、わざわざ宿場町に戻り、三十郎へのお礼の手紙を、権爺に預けます。
いきさつを知った、権爺は三十郎に好意を抱きます。
おぬいが、宿場町から逃げた真相を知った卯之助は、逃亡が清兵衛の所業ではなく、三十郎だと考えます。
三十郎は手紙が動かぬ証拠となり、丑寅一家に連行され、拷問を受けます。
おぬいをあきらめきれずにいた、徳右衛門の隙を見て、三十郎は権爺のところへと脱出するのでした。
【結】用心棒 のあらすじ④
徳右衛門から、かろうじて逃げることに成功した三十郎は、権爺の指示で、棺桶に入り助けだされます。
丑寅一家は、三十郎が清兵衛一家のもとで、かくまわれているものと信じ、清兵衛の屋敷に火を放ちます。
清兵衛の女房おりんは切り倒され、清兵衛とせがれの与一郎は、縄張りと交換に命乞いするのですが、卯之助に短銃で殺されてしまいます。
三十郎は、念仏堂で傷を癒していましたが、棺桶屋の知らせでは、丑寅一家から傷を受け、介抱してくれた権爺が捕まったというのです。
棺桶屋が権爺から預かった、刀を差し、護身用にと権爺からもらった包丁を懐に、ふたたび町へ向かいます。
三十郎は町の通りに着くと、丑寅一味が現われます。
権爺はつるされていましたが、まだ命はありました。
にらみ合いの末、卯之助が短銃を構えようとする瞬間、三十郎は懐から取り出した包丁を、腕めがけて命中させ封じ込みました。
丑寅一家は切り倒され、われを失った多左衛門は、屋敷内の徳右衛門を殺害します。
三十郎は権爺の縄を切り放ち、宿場町をあとにします。
用心棒 を観た感想
世界を代表する巨匠黒澤明の作品で、主演に三船敏郎を迎えての傑作時代劇です。
三船はヴェネツィア国際映画祭男優賞を受賞し、アカデミー賞衣裳デザイン賞ノミネートされてます。
セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』でリメイクされたのは有名な話です。
娯楽性を追求するため、時代考証は多少犠牲にされています。
冒頭で野犬が人の手をくわえているシーンはホラー映画かとも思えますが、仲代達矢演じる、卯之助は何故か、短銃にマフラーのいで立ちで、西部劇でも見ているような気にさせ大衆受けを狙っています。
卯之助が登場するシーンはさらに、砂塵が舞い、大風が吹き荒れて、人物風景が効果よく現われています。
ニヒルな三十郎と合わせてご覧ください。
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