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湊の担任教師・谷岡の訪問
古いアパートの二階に上がり、谷岡は明神湊の家のインターホンを鳴らしました。返事はなく、部屋の明かりもついていません。谷岡はいないなら仕方がないとすぐに諦め、スマホに入ったプライベートの連絡を確認しながら階段を降ります。
そんな谷岡の様子に、学校帰りのフタバが遠くから気がつきます。担任の先生として、湊の家を訪問しているようでした。フタバは谷岡が真っ当に仕事していると思い、珍しいものだと観察します。
谷岡は先程連絡が来た飲み会の誘いを、迷わず行くと返事してアパートを後にしました。
フタバは谷岡が帰って行った後、湊の家の窓を見上げます。湊と渚は出かけているのかなと思い、自分も部屋に帰りました。すぐに制服を脱ぎスエットに着替えます。ニュースの天気予報で最近の雨模様がランドリー現象だと、表現されていました。フタバは帰り際に買ってきたポテトチップスをつまみながら、『…ばっかじゃなかろうか?』と一人でぼやきます。
誰も頼れない湊
湊は黒松の車に女性の死体を残し、鍵をかけてその場を後にします。『悪いのは僕じゃありません』とまた何度も自分に言い聞かせました。湊はとにかくここを離れようと、急ぎ足で地上に向かいます。渚の身が危ないのに捕まるわけにはいかないと、湊は必死でした。
湊は死体が見つかる前に交番でお巡りさんに頼ろうと思いつきました。”妹と弟”もしくは”甥っ子たち”が迷子だと、説明するつもりで交番に向かいます。ところが交番前の掲示板を見て衝撃を受けます。指名手配犯の顔写真の中に、この男の顔が並んでいました。
オールバックの髪にサングラス姿。湊は胸ポケットに入っていたサングラスで変装したつもりでしたが、かえって手配写真そのものの姿になっていました。大急ぎで髪を乱し、サングラスを外して交番から引き返します。
湊は誰にも頼る事ができないんだと思い知り、涙を浮かべて絶望しました。
遊園地を後にする
その頃、湊の身体に入る黒松は遊園地の最寄駅にいました。遊園地で死体が見つかったという騒動が起きなかった為、自分の身体に入っている湊が自首してしまう可能性はないと安堵します。自分の身体を追うには渚が邪魔でした。まずはこの少年の素性を知ろうと身の回り品を漁ります。それによって千葉県I川市に住み、携帯は持たない、ネグレクトで母親は不在で、恐らく渚以外に兄弟がいないと予想できました。黒松は渚を連れて湊の自宅に帰る事にします。
たくさんの人が電車に乗り込む中、黒松も渚の手を握って自宅方面に向かう電車に乗りました。ドアが締まり電車が発車した瞬間、ドア越しに渚へ手を伸ばす自分の姿が目に飛び込みます。湊が人混みの中に渚と自分自身の姿を見つけ、追いかけてきたのでした。
自分の身体に入り込んだ少年の必死の形相に黒松はほくそ笑みます。黒松は自分の身体と湊の身体が入れ替わった事を確信しました。そして、湊が六月の遺体を騒ぎにする事なく処理し、金の入ったカバンを持っていた事に満足します。
天からのギフト
帰りの電車、黒松は湊の身体が格好の隠れ蓑である事に気がつきました。警察にも恫道会にも追われていない潔白の身体です。この身体でまずは、大金の入った自分のカバンを取り戻そうと考えます。カバンは湊が渚を追って勝手に運んできてくれるはずです。黒松はこの際割り切って、前科のある古い身体を捨てようと考えていました。
湊と対峙した時、少年の身体は腕力で黒松の身体に劣りますが、渚という人質がいればそれも問題ありませんでした。
黒松はこの出来事を『思っても見なかった天からのギフト』だと笑みを浮かべます。第5話へ続きます。
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