【ネタバレ有り】ドリアン・グレイの肖像 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:オスカー・ワイルド 1962年に新潮文庫から出版
ドリアン・グレイの肖像の主要登場人物
ドリアン・グレイ
本作の主人公。誰もが目を奪われる美貌の青年。
ヘンリー・ウォットン卿
ドリアンの友人。ドリアンの美しさに執着しており、ドリアンが無知で無垢な美青年のままでいるように、いろいろアドバイスをする。
バジル・ホールワード
ドリアンの肖像画を描いた画家。肖像画の秘密を知り、ドリアンに殺される。
ドリアン・グレイの肖像 の簡単なあらすじ
美しい青年ドリアン・グレイは、いずれ歳をとり醜くなることをおそれている。けっして歳をとることのない、自身の肖像画を見つめながら彼は願う—ーー「自分の代わりにこの肖像画が歳をとってくれればいいのに」。願いは本当になり、ドリアンのさまざまな生の苦痛を、肖像画が引き受けるようになる。やがて肖像画は、だれにも修復不可能なほど醜くなってしまい—ーー
ドリアン・グレイの肖像 の起承転結
【起】ドリアン・グレイの肖像 のあらすじ①
時は19世紀末、バラの花の香り漂う初夏のある日、画家のバジル・ホールワードは、ロンドンにある、自身のアトリエの一室で、絵に最後の仕上げを加えているところでした。
それは、この世にふたつとない美貌の持ち主、ドリアン・グレイ青年の肖像画です。
部屋の隅には、親友のヘンリー・ウォットン卿が、感嘆のため息を漏らしながら、その様子を見守っています。
ヘンリーは、美について独特の感性を持っていました。
すなわち、「美、ほんとうの美というものはだね、知的表情の始まる所で終わるのだよ。
知性とはそれ自体が誇張の一形式なのであって、どんな顔の調子だって破っちまう。
このひとは断じてものなど考えはしないさ。
きっとそうだと思う。
このひとは頭脳のない、美しい生き物なのだよ」と。
そのとき、当のドリアン・グレイが部屋に入ってきました。
ドリアンは、この、聡明なヘンリーの思想にすっかり魅せられ、彼の期待にこたえるような、永遠に無垢で美しい生き物でありたいと願うようになります。
【承】ドリアン・グレイの肖像 のあらすじ②
とはいえ、人間は時間の流れに逆らうことはできません。
どんなに美しいひとも、時間とともに老いていくことをドリアンは知っています。
歳をとらないのは、肖像画に描かれた自分ばかりです。
ドリアンは願いました。
たとえ何を引き換えにしても、誰が、何がどうなろうとも、いついつまでも若く美しくありたい。
それと反比例して自分の肖像画の方が老いてみにくくなって行ってくれればいいのに。
ある日、ドリアンは、芝居小屋で見かけたシビル・ヴェインという女優に心惹かれます。
シビルも、観客席にいた美しいドリアンに目を奪われ、二人の交際が始まります。
シビルは、舞台上ではすばらしいジュリエットを演じていましが、舞台を下りて、生身の人間としてドリアンに接するうち、以前の、かがやかんばかりの演技の才能がすっかり失われ、見るも無惨な稚拙な芝居しかできなくなっていきました。
幻滅したドリアンは彼女を見限り、すがる彼女を冷たくあしらいます。
その日、肖像画に最初の異変を見つけます。
自分の態度がよくないものだったと反省したドリアンは、シビルに謝ろうとしますが、すでに彼女は自殺した後でした。
【転】ドリアン・グレイの肖像 のあらすじ③
シビルのことがあってから、ドリアンの生活はすっかり荒んだものになっていきました。
歓楽街の、魔窟のような場所に平気で出入りし、さまざまな女性を誘惑したり、ほんのはずみから、友人である化学者を殺害するなど、悪業を重ねました。
そんな退廃した生活にもかかわらず、ドリアンの見た目はまったく衰えず、20歳の美しさを保っています。
しかしそのかわりに、肖像画は少しずつ、醜く姿を変えて行きました。
そうして、ついに、誰にも見せられないほど醜く歪んでしまった肖像画を見て、恐怖を感じたドリアンはついに、画家のバジルに助けを求めます。
バジルは驚いて、ドリアンに、とりあえずの策として、これまでの罪を償うことを提案しますが、これに逆上したドリアンは、バジルを殺してしまいます。
シビルが自殺したときにはまだ改悛の情があり、亡くなった彼女の元へ駆けつけようと試みる気持ちもありましたが、ヘンリー卿から、“何を言われるかわからないから行かない方がいい”とアドバイスされるとそれを鵜呑みにして、罪から目を逸らしました。
ドリアンは、今さら後戻りすることはできませんでした。
【結】ドリアン・グレイの肖像 のあらすじ④
それでも、バジルの言ったことにも一理ある、とドリアンは考えます。
肖像画が老いて行くのが、自分の犯した罪のせいであるなら、今まで為した悪業を上回るくらいの善行をこれから積めば、肖像画は元の美しい顔に戻るのではないか、と、こう考えます。
そこで、善人の仮面をかぶり、見知らぬ他人に親切にすることから始めました。
若い女の子に、欲望を抱くこともありましたが、それをこらえて相手のために尽くしてやる、という我慢も経験しました。
そうしてしばらく経った頃、もういいだろうと肖像画を見に行くと、変わらず、肖像画は、以前の醜い姿のままでした。
どうして?悪いことをしたら醜くなり、善いことをしたら綺麗な顔に戻るのではないのか?ドリアンは混乱し、ナイフで絵を切り裂いてしまおうとします。
ナイフを絵に突き立てた瞬間、ドリアンは胸に痛みを感じ、倒れ込みます。
ドリアンがナイフで刺したのは、ドリアン自身でした。
倒れたドリアンの顔はしわだらけで醜く歪んでおり、壁には、最初に描かれたときのままの美しい肖像画がかかっていました。
ドリアン・グレイの肖像 を読んだ読書感想
悪人が、改心したにもかかわらず、最終的に罰を受けて死ぬというオチには、現代のおとぎ話を読み慣れているものとしては、衝撃を受けました。
人を殺す、もしくは死に追いやるという罪は、うわべだけの償いや、他人にちょっと親切にしたくらいで帳消しになるものではないよ、と、作者のオスカー・ワイルドに言われているようです。
ちょっと深読みすると、ドリアンは改心したように見えるだけで、他人に親切にしたのも、”こうすれば肖像画は元に戻るかな?”という実験をしたにすぎない、という風にも読めます。
それなら、肖像画が反応しなくても無理はないなあ、と。
どちらにしても、救いのない結末で、罪について、人について、いろいろ考えてしまいます。
絵と現実の人物がリンクするという、設定はファンタジーですが、非常に大人向けの作品であると感じました。
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