【ネタバレ有り】南瓜の花が咲いたとき のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:ドラゴスラヴ・ミハイロヴィッチ 2005年6月に未知谷から出版
南瓜の花が咲いたときの主要登場人物
リューバ(りゅーば)
主人公。肉体労働者の父・アンドラと母のミリンカとの間に生まれる。
ヴラーダ(う゛らーだ)
リューバの兄。パルチザンに参加する。
ドゥシツァ(どぅしつぁ)
リューバの妹。
ストーレ(すとーれ)
町の不良たちのリーダー。
ルージャ(るーじゃ)
ストーレの母。
南瓜の花が咲いたとき の簡単なあらすじ
第二次世界大戦が激しさを増していくセルビアの首都・ベオグラードは、ナチスドイツによる強権的な支配下に置かれていました。リューバは激動の時代を、自らの拳と家族への愛する思いを頼りに生き抜いていくのでした。
南瓜の花が咲いたとき の起承転結
【起】南瓜の花が咲いたとき のあらすじ①
リューバはベオグラードの下町・ドゥシャノヴァッツで、家族5人で暮らしていました。
5つ年上のヴラーダ兄さんは第二次大戦勃発と途端に政治活動に夢中になり、7つ年下の妹・ドゥシツァはまだまだ甘えん坊です。
母親のミリンカは良妻賢母を絵に描いたような性格で、父親のアンドラは仕事が忙しくいつも家にいません。
ドイツ軍による空襲が国内で始まると学校は休みになり、リューバは悪友たちと毎日のように盛り場をうろうろするようになります。
喧嘩からギャンブルに女遊びまで、リューバたちに手解きをしたのが「アパシュ」の通り名を持つストーレです。
当時の少年たちが最も熱くなっていたのがボクシングで、リューバもストーレに誘われるままに労働者倶楽部に所属しました。
リーチがあって上背にも恵まれ打たれ強く、天性のスピードとテクニックも申し分ありません。
リューバはあっという間にベオグラード市内のジュニア選手権大会で、ウェルター級の2位にまで上り詰めていきます。
【承】南瓜の花が咲いたとき のあらすじ②
戦後のセルビアは社会主義国でありながらソ連とは一定の距離を置いていき、自主路線を取ることになりました。
ソ連と少しでも繋がりがあった者は思想警察から厳しい取り調べを受けることになり、戦時中に抵抗運動に加わっていたヴラーダ兄さんも例外ではありません。
1ヶ月以上拘留された末にようやく釈放されましたが、今度はアンドラが逮捕される始末です。
長男のために面会に行き夫のためには差し入れの包みを用意しなければならず、ミリンカはすっかり神経が参ってしまいます。
リューバはボクシング倶楽部に何とか取り成して貰おうとしますが、所属先の会長は日和見主義なために宛になりません。
遂にはリューバ自身も半ば懲罰的な、3年という長期間の兵役に就くことになりました。
赴任先のザグレブでリューバが受け取ったのは、妹のドゥシツァの訃報を告げる電報です。
休暇を貰ったリューバは汽車でベオグラードまで向かい、黒い弔旗で覆われた実家にたどり着きます。
【転】南瓜の花が咲いたとき のあらすじ③
ドゥシツァは何者かに暴行を受けた末に、金曜日の朝早くに森の中で自らの生命を絶ってしまいました。
彼女が亡くなる前日の木曜日に一緒にいた高校の女友達からの証言によると、ダンスクラブで一晩中踊っていたようです。
別れ際にドゥシツァをお店の外に連れ出したのはストーレでしたが、皆報復を恐れて警察に届け出ようとはしません。
娘の死を受け止められないミリンカは食事を取ろうとしないために、病院に入院することになります。
ドゥシツァの後を追いかけるように母親もこの世を去って、愛妻を失ったアンドラも老け込んでいく一方です。1度は自由の身になったヴラーダ兄さんは再び拘束されて、「再教育」という名目で矯正労働収容所に送られてしまいました。
満期除隊を迎えたリューバがベオグラード駅に降り立つと、アンドラが息子の大好物のチーズパイの包みを持って出迎えてくれます。
心臓が弱くなっていた父が死んだのは、それからひと月ほど経った嵐の夜です。
【結】南瓜の花が咲いたとき のあらすじ④
ストーレが結核で入院していることを掴んだリューバは、中心街から離れたサナトリウムへバスで向かいました。
久しぶりに対峙したストーレは肺の調子が思わしくなく、南瓜の花が咲く夏までは生きられそうにありません。療養所から程近い森の中で激しい決闘を繰り広げた2日後に、ベオグラードでストーレの葬式が開かれます。
式に参列することなく自宅に引きこもっていたリューバを訪ねてきたのは、黒の喪服を着ているストーレの母・ルージャです。
幼い頃から母親思いだったこと、たまたま悪い仲間に捕まって道を踏み外したこと、今でも身の潔白を信じていること。
息子と殴り合ったリューバを許すことによって、ルージャは自らの復讐を果たします。
郵便局でありったけの貯金を引き出し必要最低限の荷物をバッグに詰めたリューバが向かった先は、国境沿いの村で密入国の手引きをするスロベニア人の老人です。
捕まれば全てを失いますが、リューバは2度と故国に戻るつもりはありませんでした。
南瓜の花が咲いたとき を読んだ読書感想
第二次世界大戦下ではナチス政権によって苦汁を飲まされて、冷戦時代には社会主義国でありながらソ連から見放されたバルカン半島の小国・セルビアの数奇な運命が印象深かったです。
超大国同士の争いに翻弄されてしまうマイノリティーとしての苦悩は、21世紀になった現在の国際情勢を思い浮かべてしまいます。
ベオグラードの下町で鬱屈とした青春時代を送っている、主人公・リューバの不器用な生きざまにも繋がるものがありました。
ボクシングと生まれ育った街を愛しながらも、全てに絶望して故国を去っていくクライマックスが忘れがたいです。
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