監督:ウェイン・ロバーツ 2020年8月にキノフィルムズから配給
グッバイ・リチャード!の主要登場人物
リチャード・ブラウン(ジョニー・デップ)
主人公。大学で英文学を教えている。人生を物語と捉えていて神を信じない。
ヴェロニカ・ブラウン(ローズマリー・デウィット)
リチャードの妻。奇抜なオブジェを手掛けるアーティストで投資家に人気がある。
オリヴィア・ブラウン(オデッサ・ヤング)
リチャードの娘。同性愛者であることを公言している。
ヘンリー・ライト( ロン・リヴィングストン )
ヴェロニカと不倫中。学問よりも学校経営に熱心。
クレア(ゾーイ・ドゥイッチ )
ヘンリーの大学に通う。父は社会的地位があり母は美人。
グッバイ・リチャード! の簡単なあらすじ
末期ガンを告知された大学教授のリチャード・ブラウンは、余命を有効に活用するために奔放に振る舞います。
妻のヴェロニカと不適切な関係にあるヘンリー・ライト学長からは冷遇されますが、型破りなリチャードを慕ってくる教え子も多いです。
職務にも一区切りを付けてヴェロニカとも和解をしたリチャードは、ひとりで死期を迎えるために旅立つのでした。
グッバイ・リチャード! の起承転結
【起】グッバイ・リチャード! のあらすじ①
背中に張りと違和感を感じていたリチャード・ブラウンが病院で精密検査を受けてみると、医師からはステージ4の肺がんだと告げられました。
肺に見つかった腫瘍は相当に悪い状態だそうで、発見が遅かったために脊椎と副腎に転移している恐れもあるそうです。
入院して過酷な治療を続けても生存確率がせいぜい5パーセントほどアップするだけ、何もしなければ生きられる見込みは半年ほど。
自宅に帰って夕食の席で報告するつもりでしたが、先に妻のヴェロニカが浮気をしていることを告白してきます。
よりによって相手はリチャードの勤め先の大学で学長と総長を兼任していて、寄付金を集めることに熱心なヘンリー・ライト。
さらには娘のオリヴィアからは同性のパートナーを紹介されたために、病気のことを言い出すタイミングがありません。
自らに残された時間がそう長くはないと悟ったリチャードは、妻子には好きにさせる代わりに自分もやりたいことをやって思う存分に楽しむつもりです。
【承】グッバイ・リチャード! のあらすじ②
お酒やマリファナを片手に出勤、気にいらない男子は強制的に退場、気にいった女子はトイレに連れ込んで個人的に指導… 職場でもこれまでとは根本的にやり方を変えていくことに決めたリチャードに、ほとんどの学生たちは背を向けて教室を去っていきました。
残った数名のメンバーたちと交流を深めるために、講義を早めに切り上げてバーや公園などキャンパスの外へと誘い出します。
出席しなくてもレポートを提出しなくても成績は自動的にA評価を与えて、本を読む喜びを徹底的にたたき込むのが目的です。
自身もアメリカ文学史にその名を刻むような名作を書くつもりで研究休暇の取得を申請しますが、ヴェロニカとの一件で因縁のあるヘンリーからは認めてもらえません。
リチャードの教授室のすぐ下の中庭には嫌がらせのように、クレアが製作したモニュメントが設置されました。
悪趣味で巨大なタワーのせいでますます奇行が目立つようになったリチャードのことを、ヘンリーのめいでもありここの学生でもあるクレアが心配しています。
【転】グッバイ・リチャード! のあらすじ③
ガン患者の自助グループに体験入会してみたリチャードでしたが、他の参加者たちやカウンセラーとは話が合わずに場の雰囲気にも溶け込めません。
早々に切り上げてひとりでバーで酔っ払っていると、たまたま近くを通りかかったクレアが1杯ごちそうしてくれました。
出身はニューヨークのアップステート、学費を援助してくれる裕福な父親、整った顔立ちを授けてくれた母親。
典型的なニューイングランド人種だという彼女は、俗物のおじよりも勇敢で自分の意志を貫くリチャードのことを尊敬しているそうです。
ふたりは店内で音楽に合わせてダンスを楽しんでいましたが、突如としてリチャードの容体が急変したために緊急搬送されます。
病院に泊まって明け方になって帰宅してきたリチャードのことを、夜通し眠らずに待っていたヴェロニカはあきれて物も言えません。
自分とヘンリーへの当て付けのように女子大生に手を出しつつ、愛人のところにでも入り浸っているのだろうと誤解しているのでしょう。
【結】グッバイ・リチャード! のあらすじ④
今学期の最後の1コマまで無事にやり遂げたリチャードは、辛抱強く自分についてきてくれた若者たちにアドバイスを送りました。
才能を無駄にしないこと、世間の98パーセントを占める凡庸な人間に屈しないこと、人生で巡ってくるたった1度のチャンスを逃さないこと。
同僚たちやそのパートナーが出席するパーティーにも顔を出して、ヘンリーの女癖の悪さと予算の私的流用をぶちまけます。
ようやくわだかまりが解けたヴェロニカにガンを告白できたのは、打ち上げが終わってふたりっきりになった時です。
この町を出てどこか遠くに行きたいという夫の気持ちを尊重するために、ヴェロニカは「グッバイ、リチャード」とだけ声を掛けて引き留めません。
旅の出発の前には恋人にフラれて落ち込んでいたオリヴィアに、心の底から愛を伝えて力いっぱい抱きしめます。
長年に渡って愛用してきたクラシックタイプのメルセデス・ベンツに乗り込んだリチャードは、ハンドルを握ると地平線へと続く道をどこまでも走らせるのでした。
グッバイ・リチャード! を観た感想
仕事は一流大学の英文学教授、妻は美しく才能にも恵まれた芸術家、愛車はドイツ直輸入のヴィンテージカー。
望むものをすべて手にして勝ち組コースを歩んでいたはずの主人公リチャード・ブラウンに、予告もなしに突き付けられる現実が残酷すぎます。
社会的な地位もあり節度のある行動を求められてきた反動からか、本能の赴くままに暴走していく姿には笑わされるでしょう。
うわべだけは理想の家族を演じてきた妻・ヴェロニカとの関係と、初めて本気で向き合っていくなど人間的には憎めません。
「生きる権利と死ぬ義務」というリチャードのセリフからは、限られた人生を自分らしく全うすることを考えさせられました。
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