監督:塚本連平 2022年7月にKADOKAWAから配給
TELL ME hideと見た景色の主要登場人物
ヒロシ/松本裕士(今井翼)
hideの実弟。1995年よりhideのパーソナル・マネージャーを務めている。急逝したhideが遺した未完成作品の発売、予定されていたツアーを実現させるために奮闘することになる。
I.N.A(塚本高史)
hideの共同プロデューサーで盟友ともいうべきパートナー。hide with Spread Beaverの一員でもある。冷静だがストイックな性格。
hide(JUON)
日本を代表するロックミュージシャン。X JAPAN と並行してソロ活動もしていたが、hide with Spread Beaverとして活動を始めた矢先に急逝する。
鹿島(津田健次郎)
レコード会社の重役。hideの急逝で混乱しているヒロシたちに理解は示すが、主役なきアルバム発売やツアーは不可能だと考えている。
TELL ME hideと見た景色 の簡単なあらすじ
1998年5月2日、X JAPANのギタリストとして、ソロアーティストとして活躍していたロックミュージシャンhideが急逝。
葬儀には著名人としては過去最高の約5万人が訪れ、連日ワイドショーでも特集されて社会現象にもなりました。
hideは新バンドhide with Spread Beaverとして活動を始めたばかりで、生前このバンドで出された作品はわずかシングル1枚。
マネージャーを務めていた実弟の松本裕士(ヒロシ)は、製作途中だったアルバム発売や予定されていたツアーをなんとか実現させようと動きだします。
しかしそんなヒロシには数々の困難が待ち受けていました。
TELL ME hideと見た景色 の起承転結
【起】TELL ME hideと見た景色 のあらすじ①
1998年10月22日 あの日から173日。
hide with Spread Beaver のメンバーたちは気合を入れ、ステージへと向かいます。
ヒロシ(松本裕士)はその姿を誰よりも緊張した様子で見つめていました。
手には蝶の形のブローチを握りしめています。
1976年横須賀。
秀人と裕士の兄弟は海岸へ行きました。
秀人は海を指さしながら、「何が見える?」と裕士に訊ねます。
「千葉県?」と答える裕士に、「あの向こうにはアメリカがある。
そしてその向こうには未来があるんだ」と秀人は言いました。
家ではいつも母親がたくさんの手料理を用意していました。
しかしたくさん食べる秀人と比べて、裕士は小食です。
母親はいつも、いっぱい食べないから秀人のように頭が良くなれないんだと言い、秀人を褒めていました。
祖母の働く美容室に行っても、祖母は成績のいい秀人にだけお小遣いをあげます。
秀人がそこにあった蝶のブローチをジッと見つめていると「おもしろいよね、こんなにキレイになる前は芋虫なんだから」と祖母は笑いました。
秀人は学校では大人しく、肥満児ということでつらい経験もしていました。
そんな鬱憤を晴らすかのようにロック音楽にのめりこみ、大ファンのKISSのレコードを手に「俺はこれになる。
ロックをやる」と意気込んでいました。
1998年5月1日 亡くなる前日。
テレビ番組の収録で1stシングル「ROCKET DIVE」を披露したhideは、これからの予定を告知し、楽屋へと戻りました。
ひどく肩が凝っている様子で、ヒロシは肩をもみながら気遣います。
その後メンバーたちと飲みに出かけましたが、雑誌関係者にメンバーのことを馬鹿にされたhideは激怒し、暴れ出しました。
外にいたヒロシが呼ばれてなんとかその場を収め、明け方hideを自宅まで送り届けます。
フラフラと家に入るhideに「10時に迎えに来ますから」とヒロシは声をかけました。
【承】TELL ME hideと見た景色 のあらすじ②
朝、事務所のチーフマネージャー・児玉からの電話で急いで病院へと向かったヒロシが見たのは、変わり果てたhideの姿と泣き崩れる両親でした。
母親は「なんであんたがついていてこんなことに!」とヒロシを責めます。
事務所のメンバーたちもみなショックで打ちひしがれていました。
そこに契約先のヴィクトリア・レコードの重役・鹿島が訪れ、ヒロシに葬儀の準備などいろいろサポートすると告げます。
さらに、hideとの契約にあるからと、ヒロシが社長代理をするように言いました。
ヒロシは困惑しますが引き受けるしかありません。
その横で児玉は不満そうな顔をしていました。
その夜ヒロシはふと、4年前に「母さんも安心するから」と父親から頼まれてhideのマネージャーを引き受けたことを思い出します。
容赦なくこき使われたことを懐かしみながら、hideのある言葉を思い出しました。
「やるんだったら死ぬ気でやれ。
死なねぇから」hideは完成前の曲は聴かせてくれず、ヒロシが弟だということもあまり公にしたがりませんでしたが、付き合いの長いI.N.Aには早々に弟だと明かしていました。
5月13日、シングル「ピンクスパイダー」が発売されましたが、世間ではこの時期での発売に疑問をなげかける声が出始めます。
レコード会社の会議では、鹿島が11月発売予定のアルバムの進捗状況をたずねますが、ヒロシはまだ未完成だとしか伝えられませんでした。
事務所に戻ったヒロシは、hideがやり残したことをやり遂げたい、なんとかアルバムを完成させたいとメンバーたちに頭を下げます。
やる気みなぎるメンバーたちは早速「HURRY GO ROUND」のレコーディングに取りかかりました。
一人ずつ担当の楽器を録っていきます。
I.N.Aは何度も演奏を止めてやり直しを指示し、そのストイックさにヒロシは驚きますが、メンバーは「こんなもんじゃなかったよ、hideは」と笑うのでした。
【転】TELL ME hideと見た景色 のあらすじ③
レコーディングは行われていましたが、ある日I.N.Aとメンバーが衝突してしまいます。
そしてその後どんどん作業は遅れていきました。
ヒロシはhideが昔祖母からギターを買ってもらった頃のことを思い出しました。
hideが活動していたバンドを友人と見に行ったことも頭に蘇ります。
そしてあの頃すでに、hideは誰もが憧れるカリスマ性を持っていると感じていたのです。
それにhideは親しいメンバーにでも気を遣う優しくて繊細な性格であることも、ヒロシは理解していました。
アルバム制作は完全に行き詰まってしまいました。
さらに「弟は悪魔だ」「hideが泣いている」など、ヒロシにもメンバーにも誹謗中傷の声が届くようになります。
ヒロシは、hideが自宅に入る最後の姿が頭に焼き付いていて、なんで一緒に入っていかなかったのかと悔やんでいるとI.N.Aに明かしました。
I.N.Aも「もう一度あの日をやり直せないのかな」とつぶやきます。
悪いことは続き、アルバムの発売が中止になったと連絡が入りました。
「ツアーだけでも」と食い下がるヒロシに、「主役無しで誰が見に来る?わき役だけじゃダメなんだ」と鹿島は冷たく言い放ちました。
その後メンバーたちは去っていき、児玉も辞表を提出します。
ヒロシもI.N.Aも死にたいと思うほど追い詰められましたが、ある日I.N.Aはヒロシに、パソコンに届いたhideからのメールを見せました。
そこには「文通しましょう」とあります。
I.N.Aは「俺たちを止めたのかもな」とつぶやきました。
さらに、「ヒロシに完成前の余計な音を聴かせたくない。
普通の人の意見が聞きたいから。
ヒロシならいい代弁者になれるはずだ」とhideが話していたと明かし、それを聞いたヒロシは涙を流しながら「もう一度がんばりましょう、死ぬ気で」と言いました。
I.N.Aも「“死ぬ気でやれよ、死なねぇから”よく言ってたな」と笑います。
【結】TELL ME hideと見た景色 のあらすじ④
「HURRY GO ROUND」の音源を聞いた鹿島は、涙を流しながら「hideの魂がここにある。
残りも作れ」と言いました。
しかしツアーは難しいようです。
I.N.Aはhideが以前語っていたことを思い出し、CGでhideを甦らせて映像とライブ演奏を融合させることにしました。
この後メンバーたちも再集結して、レコーディングも再開されました。
最後の曲もヒロシによる朗読で仕上がり、ついにアルバムは完成です。
そんな時、両親に送っていたライブの招待状の欠席を知らせる返信が届きます。
「お兄ちゃんを守れなかった。
でもお兄ちゃんは認めてくれた。
お前にはできるって」ヒロシは両親へ直接想いを伝え、来てくれるように頼みました。
ツアー前日。
ヒロシは鹿島に頼んでいた記者会見を開き、I.N.Aと共に想いを語りました。
ツアー当日、多くのファンの中に祖母の姿もありました。
そしてついにライブが幕を開けます。
ステージ中央に映し出されるhideは、まるで本当にそこにいるかのようです。
ファンの熱狂が会場を包み、ヒロシも感動の中にいました。
訪れていた両親も涙をこらえることができません。
そして大歓声の中ライブは幕を閉じました。
—海岸でヒロシとI.N.Aは海を見つめていました。
hideの声が残っていなくて諦めた曲があるとI.N.Aが明かします。
タイトルは「子ギャル。」
2人はこの曲を完成させることを誓いました。
—『2022年現在、父母は元気に過ごしている。
祖母は翌年に永眠。
hideの横で眠っている。
メンバーたちは今も活躍し、数年おきにhide with Spread Beaverとしてライブを続けている。
I.N.Aは現在も音楽プロデューサーとして、裕士は社長になり、二人でhideの曲を守り続けている。
「子ギャル」の発売は2014年。
完成までに16年かかった。
』ライブ終了後、楽屋にかけつけた母はヒロシをきつく抱きしめました。
TELL ME hideと見た景色 を観た感想
あの当時、hideの死後もシングル、アルバムがリリースされ、さらにツアーまで行われて多くのファンが救われました。
本作はそれを実現するまでのhideの仲間たちの苦悩、奮闘が描かれています。
全てはファンのために、hideのために。
でもゴールまでの道のりは厳しかったのだいうことがよくわかりました。
とはいっても、綺麗事だけが並べられているわけではありません。
裕士さんが兄弟だからこそ感じたhideがそこにはいて、兄への劣等感や憎しみなんかも綴られているのです。
でもその根底にあるのはhideへの深い愛だというのが伝わってきて、ラストのライブシーンは裕士さんの涙にとても感動しました。
ファンには嬉しいことに、hideの実際の映像もたくさん使われています。
hideを演じたJUONさんの雰囲気がhideにとてもよく似ているのもなんだか嬉しく、演技も素晴らしかったです。
hideが亡くなってもう20年以上の月日が流れましたが、今もhideを感じられる作品が作られることは本当に幸せなことだと思わせてくれる作品です。
hideの秘蔵写真が多く流れるエンドロールもお見逃しなく。
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