監督:ギレルモ・デル・トロ 2022年3月にウォルト・ディズニー・ジャパンから配給
ナイトメア・アリーの主要登場人物
スタン・カーライル(ブラッドリー・クーパー)
放浪中に見世物小屋へたどり着いた男。読心術をマスターし、ニューヨークで独立する。
モリー・ケイヒル(ルーニー・マーラ)
見世物小屋で電気を使ったショーに出ていた女性。スタンと惹かれあい、共にニューヨークへ向かう。
リリス・リッター博士(ケイト・ブランシェット)
スタンが出会った心理学者。聡明で美しく、スタンの考えを見抜いている。
ジーナ・クルンバイン(トニ・コレット)
見世物小屋で夫とともに読心術のショーに出ている女性。スタンに死者を利用した読心術はしないようくぎを刺す。
クレム・ホートリー(ウィレム・デフォー)
スタンが最初に辿り着いた見世物小屋の興行主。ギークの作り方をスタンに話す。
ナイトメア・アリー の簡単なあらすじ
アカデミー賞で作品賞、監督賞など4部門を受賞した「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督によるサスペンス・スリラー。
放浪生活を送っていたスタンは、辿り着いたある見世物小屋で読心術のテクニックをマスターし、さらなる成功を夢見て都会へと進出します。
しかし華やかな世界で自分の力を過信しすぎたスタンは、徐々に抜け出すことのできない泥沼へと足を踏み入れていくのでした。
ナイトメア・アリー の起承転結
【起】ナイトメア・アリー のあらすじ①
1939年アメリカ。
スタン・カーライルは、袋に入った死体のようなものを床板を剥がして作った穴に落とし、中に火を放ちました。
炎を背に荷物を抱えて出ていきます。
バスに乗ったスタンは見世物小屋に流れ着きます。
見かけた小人症の男(少佐)に導かれるように中に入ると、興行主のクレムが異形の生き物「獣人(ギーク)」を見せる、と大声で客を呼び込んでいました。
スタンはそこで、飢えて苦しんでいる男が鶏の首を食いちぎるショーを見物します。
見物料25セントを払うことなく、スタンはその場を後にしました。
その時少佐に「尾行してきたな」と声をかけられ、さらにクレムも現れます。
クレムは雨が近いから小屋の撤去を手伝ってくれないかとスタンに声をかけました。
引き受けたスタンでしたが、後からもらった賃金からはしっかり25セントが引かれていました。
さらにクレムはスタンに、このままついてくれば宿と食事を提供すると提案。
スタンは同行することを決めます。
移動後、ギークが逃げたと騒ぎになりました。
スタンも捜索に加わり発見しますが、ギークに石で頭を殴られてしまいました。
ギークは捕まりましたが、「俺は本当はこんなじゃない」とぶつぶつ繰り返しています。
その後スタンはそのまま雇われることになりました。
翌朝、スタンは近くの風呂を提供する家を訪れます。
住人はアル中のピートと妻のジーナでした。
ピートはマジシャンで、ジーナはタロットカードと読心術を得意としています。
ジーナはスタンに、ピートに気に入られれば手品を教えてもらえるかもと告げました。
見世物小屋では様々なショーが行われており、モリ—は電気を使ったショーを、ブルーノは怪力ショーを見せていました。
ジーナとピートは客の願いを読心術で当てるというショーを行っていましたが、ある日酔っていたピートがミスをし、ジーナがとっさに、亡くなった人を引き合いに感動を誘う「幽霊ショー」へと切り替えます。
【承】ナイトメア・アリー のあらすじ②
ジーナは後にあれはただのショーなのだと客に真相を伝えます。
「幽霊ショーはよくない」とジーナは言いました。
ピートがスタンに、スタンの腕時計を使っての読心術ショーを見せます。
腕時計が父親の形見で、父親と確執があったことも当てられたスタンは驚きました。
そしてそのからくりも教えてもらいます。
ジーナが暗号のようなものでピートに教えているのです。
しかし死者を利用した読心術は、これらを悪用して正常な判断ができなくなる危険性があるため、してはいけないと釘を刺されます。
クレムの元へ行ったスタンは酒を勧められましたが、酒を飲まないため断りました。
さらにホルマリン漬けの胎児を見せてもらいました。
「エノク」というその胎児は、出産時に母親を殺したといいます。
酒瓶の置き場所も教えてもらいました。
赤い蓋は猛毒のメタノール、青い蓋はサトウキビ酒の瓶です。
その後モリ—の電気ショーを見ていたスタンは、改善点を提案します。
モリ—は感心し、2人は互いに惹かれあっていきました。
スタンはモリ—に「2人で組んでショーをしよう」とささやきます。
しかしモリ—のことを見守っているブルーノは、あまり良く思っていませんでした。
使い物にならなくなったギークを捨てに行ったクレムが、ギークの作り方を教えてくれました。
酔いどれを見つけてアヘンを垂らした水を飲ませるのです。
「悪夢小路=ナイトメア・アリー」を探せばいくらでも見つかるといいます。
さらに「ギークの仕事はあくまで“一時的”だ」と言うのがポイントだとも教えてくれました。
酒を控えていたピートが、スタンに酒を持ってきてほしいとお願いしてきました。
スタンは酒置き場に行き、赤い蓋の瓶を手にピートの元へ戻ります。
ピートがうたた寝していたので、スタンはピートの手帳に手を伸ばしました。
しかし気づいたピートに「これは危険だから封印したんだ!」と言われます。
スタンはピートに、酒の瓶を差し出しました。
【転】ナイトメア・アリー のあらすじ③
翌朝、死んでいるピートが発見されました。
その様子をスタンは遠巻きに見つめています。
ある日、警察が見世物小屋に押しかけました。
モリ—の服装に問題があると指摘する保安官をスタンはたくみにごまかし、さらに読心術を使ってうまく気をそらせることに成功します。
その姿に感激したモリ—はスタンと組むことを決意します。
翌朝、ピートの手帳を手に、スタンとモリ—は見世物小屋を去っていきました。
—2年後、スタンとモリ—はニューヨークで大成功を収めていました。
しかしショーは詐欺まがいの降霊術になることもあり、スタンが失敗するモリ—に苛立ちをぶつけることも少なくありません。
この日も2人は読心術ショーを行っていました。
もちろんモリ—が暗号で知らせています。
しかし、突然心理学者のリリス・リッター博士が妨害し、自分のバッグの中身を当ててみせるよう要求してきました。
スタンは推理力や観察力を駆使して、モリ—なしでも見事バッグの中身を言い当てることに成功します。
その後、リリスが連れていたキンブルという判事に、個人的に見てほしいと頼まれます。
モリ—は嫌がりますが、スタンはキンブルの情報を得るためにまずはリリスの事務所を訪れ、キンブルの息子が若くして亡くなったこと、妻・フェリシアと共に悲しみに暮れていることを聞き出しました。
そして息子の死を言い当てるなどして2人を感動させ、大金を手にします。
ある日モリ—が招待した見世物小屋の仲間が家を訪れました。
ジーナがスタンに「幽霊ショーはやめて」と伝えますが、スタンは流しました。
キンブルを騙せたことで味を占めたスタンは、リリスから情報を得て、それを使って富豪を騙し、さらに稼ごうと考えます。
モリ—に疑われないよう大金をリリスに預け、キンブルから紹介してもらった資産家グリンドルの仕事にかかろうとしました。
しかしリリスは「グリンドルはやめたほうがいい。
抜け出せなくなる」と警告します。
【結】ナイトメア・アリー のあらすじ④
スタンはグリンドルの屋敷へ向かいますが、疑い深いグリンドルに嘘発見器にかけられてしまいます。
スタンはそれすらうまく切り抜けました。
その後スタンはリリスの事務所に忍び込み、患者用ファイルからグリンドルの情報を得ます。
グリンドルは中絶を強要した妻ドリーを亡くしていました。
グリンドルから「妻と話がしたい」と言われたスタンは、入手したドリーの写真を見て、モリ—にドリーのふりをするよう提案します。
一方、キンブルの妻フェリシアは霊視したスタンの言葉が忘れられず、息子に会うため夫を射殺し自らも命を絶ってしまいました。
グリンドルから急かされたため、スタンは嫌がるモリ—にドリーの格好をさせ、時間を守って墓地の前に出てくるように言いました。
時間になり、遠くにドリーの姿を見たグリンドルは感激します。
しかしすぐに全てバレてしまい、グリンドルは激怒しました。
スタンはグリンドルを殴りつけ、殺してしまいます。
さらに追ってきた護衛までも車で轢き殺してしまうのです。
失望したモリ—はスタンの元を去っていきました。
その後スタンはリリスに会い預けていた金を受け取りますが、それらは全て1ドル札に替えられており、さらにリリスはスタンに向けて発砲。
強盗に襲われたと警備員を呼びます。
スタンは事務所から逃げ、貨物列車にもぐり込んで街を後にしました。
—スタンは確執があった父親を見殺しにし、燃やしてしまう幻影を見ます…数日後、逃亡生活でボロボロになったスタンは、ある見世物小屋へと流れ着きました。
興行主に「読心術ができる」と自分を売り込みます。
部屋には「エノク」の姿がありました。
全く相手にしていなかった興行主が突然スタンに酒を振舞い、仕事があると言い出しました。
「“一時的”なんだよ。
本物のギークが見つかるまで」その言葉を聞いたスタンは嗚咽を漏らし、しまいには笑いながらつぶやきます。
「俺には、それが宿命です…」と。
ナイトメア・アリー を観た感想
怪物や奇妙な生物が出てくることはありませんが、ギレルモ・デル・トロ監督らしい不思議な雰囲気が漂う作品です。
初めは多少”いい人感”があった主人公スタンが、こうもわかりやすく転落していく様は見ていて滑稽でした。
なかなかの長尺ではありますが、舞台がニューヨークに移ってから物語の展開は一気に早くなり、どんどん雲行きがあやしくなっていきます。
とにかくスタンの末路が気になり、そしてあの衝撃の結末。
さすがデル・トロ!という感じでした。
終始妖艶な雰囲気を醸し出していたケイト・ブランシェットの演技が素晴らしかったです。
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