監督:吉田大八 2018年2月にアスミック・エースから配給
羊の木の主要登場人物
月末一(錦戸亮 )
本作の主人公 。富山県魚深市の職員で元受刑者の受け入れを担当。バンドではベース担当。文のことが好き。
石田文(木村文乃)
元受刑者の宮腰と付き合う。バンドではギターを担当。
宮腰一郎(松田龍平 )
元受刑者で、魚深市に移住してくる。月末を友達だと思っている。
羊の木 の簡単なあらすじ
過疎対策のための新釈放制度魚深市は、問題の少ない受刑者を仮釈放し、身元引受人の代わりに自治体が住居と雇用を保障することによって仮釈放が認められるという、新釈放制度を過疎対策と税金を抑えるために実行します。
そのため6人の元受刑者を受け入れました。
その6名は、人生をやり直そうとする者、反省しつづける者、退屈になりまた犯罪をしようと思う者と様々でした。
その中の1人、宮腰は、魚深市職員で受け入れ担当の月末に親しみを感じていたのですが…。
羊の木 の起承転結
【起】羊の木 のあらすじ①
魚深市の職員の月末は、魚深市に移住してくる新規受け入れ者6名を1人づつ迎えに行きました。
しかし、その6名は全て刑務所帰りなのでした。
その理由は、受刑者の生活は税金で賄われているのでその経費を抑えるため、問題の少ない受刑者を仮釈放し身元引受人の代わりに自治体が住居と雇用を保障することによって仮釈放が認められるという新釈放制度のためです。
これは、10年の定住を条件に仮釈放するという過疎対策でした。
しかし、大家さんや雇い主には元受刑者と教えず、月末も何の罪で捕まった人達なのか知らされていません。
月末は徒党を組むのを避けるために、上司から6人が接触するのを防ぐように指示されます。
ある日港に変死が浮かび、殺人事件だと騒ぎになりました。
野次馬の中に6人の元受刑者のうちの1人の杉山が居て月末は不審に思います。
次の日、部下・田代は6人もの新規受け入れを不思議に思い、課長のパソコンを探り真実を知ってしまいました。
そして、月末も知らなかった6人すべて殺人犯だという情報を掴んでいました。
暴行致死で刑務所に入っていた杉山は、今回の事件に関し疑われていると察し、やってないと月末に言いました。
月末は、プライベートでバンドをしていて担当はベース。
メンバーは、月末がずっと片思いしているギターの文と、同級生でドラム担当の須藤勇雄。
元受刑者・栗本清美は、清掃の仕事に就き、木になる羊が描かれた缶を拾って帰ります。
栗本は命を失った生物は必ず土に埋めるのでした。
高齢者施設で働く太田理江子は、ホームの高齢者を魅了し、月末の父と関係を持ち始めます。
因縁をつけられ過剰防衛でつかまっていた宮腰は、月末がバンドを組んでいると知りエレキギターを購入。
いつもクールな文が珍しく宮腰に楽しそうにギターを教えるのでした。
【承】羊の木 のあらすじ②
この地域では、のろろを祀り練り歩くお祭りがあり、のろろとは、海から来た邪悪なもので今は守り神でした。
見てはいけないという言い伝えと、選ばれた2人がお祭りの日に同時に飛び込むと1人は助かり1人は遺体も上がらないという伝説があります。
お祭り当日。
変死体の死因は脳梗塞とわかり、杉山が犯人ではありませんでした。
杉山は元受刑者6人全員に祭りに行こうと声をかけていました。
のろろ様を迎える列には、宮腰と杉山の姿がありましたが、杉山は途中で帰っていきます。
突然の大雨でのろろの祭りは中止となりました。
月末の父は結婚を考えるほど理江子に入れ込んでいたので、月末は、理江子から刑務所にいた理由を聞きます。
理江子は、夫との最中、首を絞めるようにいつも言われて、いつもそうしていたらその日は締めすぎて殺してしまったというのです。
月末は、父と会わないでと理江子に言いますが、自分はもう二度と人を好きになってはいけないのかと理江子に問われてしまいます。
杉山は、大野を再び悪事に誘いますが、昔の自分を見ているようだとかわされてしまうのでした。
大野の働くクリーニング屋は客が減り、雇い主の内藤は、客が減ったのは大野せいだが、あんたは何も悪いことはしていないといいます。
最初大野を疎ましく思っていた内藤も祭りで大野の顔を見るなりやくざかとシーンとなったことを思い出し、失礼だと怒るまで大野に対し情が湧いていたのでした。
それを受けて、人が肌で感じることはたいてい正しいと大野は言い、組にいて人を殺めたことを内藤に打ち明けます。
嘘をついていたことに怒り、辞めてもらうと言い放つ内藤でしたが、出ていく大野を追いかけて自分はあんたが悪い人だと肌で感じなかった言い引き留めるのでした。
【転】羊の木 のあらすじ③
新聞に載った宮腰を見た男が、この人を探して欲しいと市役所に来ました。
その男は宮腰に息子が以前世話になったと言い、しかし課長は個人情報保護法により教えられないと断ります。
杉山は、次は宮腰にここに10年いるのは退屈だから相談したいと持ち掛けると、宮腰は退屈じゃない、いいところだと相手にしません。
栗本は、亀が亡くなり泣いてる女の子のために亀を土に埋め、こうすれば、木が生えてまた亀に会えるからと女の子を慰めます。
文と宮腰は、鈍感な月末が気が付かないうちに付き合いはじめていました。
月末は、嫉妬から文に宮腰が殺人犯の元受刑者だとバラしてしまいます。
すぐに謝る月末は、友達として謝っているというと宮腰は許すのでした。
市役所に断られた男は、自力で宮腰を捜索し、杉山に宮腰の居所をきいた男は、宮腰の居場所を突き止め襲い掛かってきました。
その男は、宮腰が殺した人の父親でしたが、宮腰は、その男を殺害してしまうのでした。
それを杉山に気付かれ宮腰は、まるでハエを殺すように杉山をひき殺します。
宮腰はその後文を迎えに行き、2人は車に乗ると突然宮腰は文の首を絞め、驚いた文は慌てて車から降りました。
理江子は、月末の父に元受刑者だと打ち明けましたが、お互いの気持ちは変わらず付き合い続けています。
もう刑務所には入らないという理江子の決意を聞き、月末はもともと自分が口出すことではなかったと理江子に言いました。
元受刑者を目の当たりにして田代は刑法について好奇心が湧いていて、過剰防衛で刑に服した宮腰について疑問に思っていました。
初犯なら捕まらないはずなのに、捕まった宮腰は少年院にいたのではないかと推測します。
【結】羊の木 のあらすじ④
月末が仕事から家に帰ると家で宮腰が待ち伏せしていて、エレキギターの練習をしようと言う宮腰を、月末は何の抵抗もなく家に入れました。
そして、月末は少年院に行ったことがあるのか友達として確かめます。
宮腰の過去を知ってもギターが上手くならないと言う宮腰に月末は自分が教えると言い、そんな月末を宮腰は海に誘いました。
元々、文は月末の家に行く約束して留守のため携帯に連絡すると宮腰が出て、2人で岬に行くことを知ります。
慌てて、文も岬に向い、同じ頃警察は、殺人容疑の宮腰を追跡中でした。
宮腰は、月末に一緒に海に飛び込もうと誘い、のろろ様に決めてもらおうと言うのです。
月末は警察に行くことを勧めて待ってると言いますが、死刑だから無駄だと宮腰に言われますが、何でそんなこというんだ友達だろ?と返します。
宮腰は、月末の首を絞めますが、とどめは刺しませんでした。
そして、宮腰は月末の手を取り一緒に海へ。
先に顔出したのは宮腰でしたが、地鳴りが起こりのろろ様像が宮腰の上に落ちて姿が見えなくなりました。
ある日、栗本が家を出ると、今まで埋めた生き物の墓から芽が出ています。
その後、のろろ様像は海からひきあげられ、いい雇い主に恵まれた大野と福元は幸せそうに過ごし、理江子も月末の父の世話を続けています。
ぶじ生還した月末は、自転車に乗った文と車ですれ違いざまに文の口がラーメンと動かしたことに気がつきました。
以前、遠回しに月末が誘ったラーメンのことを言ったのだと感じます。
羊の木 を観た感想
6人の元受刑者の6人6様の仮釈放期間の過ごし方に興味をひきます。
ほっこり感動したのは、雇い主に恵まれた大野がクリーニング屋で第二の人生を歩むところです。
分かってくれる人は必ずいると信じたくなるシーンでした。
サイコパスのような宮腰にも、恋人や友達を求める心があって悪い結果に終わりましたが、魚深市に移住して楽しかったのではないかと思います。
亡くなった人が羊の木となり、また会えると信じる気持ちは、被害者の家族からしたら腹立たしくも感じ温度差があるでしょうが、杉山と宮腰以外の元受刑者の反省を見ると羊の木を信じたいです。
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