監督:ジャウム・コレット=セラ 2009年10月にワーナー・ブラザースから配給
エスターの主要登場人物
ケイト・コールマン(ヴェラ・ファーミガ)
この物語の主人公。コールマン家の母。
エスター(イザベル・ファーマン)
児童養護施設から引き取った小学生の女の子。落ち着いた雰囲気の変わった少女。
ジョン・コールマン(ピーター・サースガード)
ケイトの夫でコールマン家の父
ダニエル・コールマン(ジミー・ベネット)
コールマン家の長男で小学生の男の子。最初から、エスターを歓迎していない。
マックス・コールマン(アリアーナ・エンジニア)
ダニエルの妹。耳が不自由なため、主に手話で会話をする。
エスター の簡単なあらすじ
3人目の子供を流産してからつらい日々を送っていた夫妻は「エスター」という名の女の子を、養女として迎え入れます。
ところがこの美しい少女エスターは、徐々に家族をさまざまな形で脅かし始めました。
母親であるケイトはすぐにエスターの不審な行動に気づきますが、父親であるジョンはこれに気付けません。
一方エスターを紹介したシスターは、エスターの過去に疑問を持ち、彼女について調べ始めます。
しかしこれを見越したエスターは、シスターをむごたらしく殺害してしまうのです。
「何かがおかしい」というケイトの予感は的中、エスターは精神科病院から逃亡してきた殺人犯だったのです。
ケイトは家族を守るべくエスターと戦い、勝利します。
エスター の起承転結
【起】エスター のあらすじ①
主人公コールマン・ケイトは、3人目の子供を流産してからというもの、ゆううつな日々を送っています。
ケイトには小学生の息子ダニエルと、まだまだ幼い娘マックスがいます。
マックスは耳が不自由なので、補聴器をつけ、手話で会話をします。
夫のジョンはケイトを元気付けるためにも、3人目の子供を児童養護施設から引き取る提案をします。
そこで週末にケイトとジョンは女子児童養護施設へ出向き、エスターという物静かな女の子に出会います。
エスターは他の子供とは群れず、2階で1人で絵を描いているような女の子でした。
マックスは彼女の利口な雰囲気が気に入り、ケイトもそれに同意します。
そして夫婦はエスターを家族として迎え入れる決意をし、家に連れて帰りました。
ジョンは、ダニエルやマックス、それにジョンの母であるバーバラにエスターを紹介しました。
しかしダニエルはいつも通り自分が注目されないことに腹を立て、出ていきます。
ダニエルにはお気に入りの隠れ家であるツリーハウスがあり、そこへ向かいました。
さて、初登校日の日、エスターはレトロなドレスを着て行きます。
ダニエルはこの格好を笑い、周囲もさりげなく別のファッションを薦めますが、エスターは全く聞き入れませんでした。
またエスターは常に首と手首に可愛らしくリボンを巻いていますが、これを人前で外すこともありません。
さらに彼女は子供であるにもかかわらず入浴中に必ず施錠するくせがあり、ケイトにこれを注意されても反抗的な態度を取るのでした。
【承】エスター のあらすじ②
しばらくすると、ケイトはエスターのやや意地悪な側面に気づきました。
またダニエルは、エスターが死にかけたハトを残酷に殺すところを見てしまいます。
エスターは手話を覚え、口のきけないマックスを手なずけていました。
そんなある日キッチンで愛し合おうとしたケイトとジョンは、エスターにその姿を見られてしまいます。
翌日エスターの口から猥褻な言葉を聞いたケイトは、エスターの精神状態に疑問を持ち、夫に相談します。
しかし夫は笑うだけで、話を真剣に聞いてくれません。
なぜならエスターは、ジョンの前では完璧ないい子を演じているからです。
エスターは非常に要領が良く、狙ったターゲットすなわちケイトにだけを、精神的に追い詰めているようでした。
そんな折、児童福祉施設でエスターを紹介したシスター・アビゲイルが、コールマン家を訪ねてきます。
シスターは、「エスターの周りで怪我をする人がたくさん出ている」ということが、最近の調査で分かったと言いました。
シスターもまたケイトと同じく、エスターの何かが変だと疑っているのです。
シスターはその後、自身の運転する車で帰宅しようとしますが、エスターはこれを待ち伏せしていました。
エスターはまずマックスを道路に突き飛ばし、慌てたシスターがマックスに歩み寄った時、無残にもハンマーで殴り殺したのです。
子供とは思えないまるで犯罪者のようなエスターの姿を、幼いマックスは見てしまいます。
【転】エスター のあらすじ③
夫妻はエスターにカウンセリングを受けさせますが、分析医の目に映るエスターに異常はなく、逆にケイトに問題があるのでは?と言われてしまいます。
その後夫妻は、シスターが殺害されたことを知り取り調べを受けました。
エスターはその後もケイトの神経を逆なでし、ケイトがさも悪者であるように仕立て上げます。
追いつめられたケイトは、当分止めていたアルコールに手を出してしまい、夫やバーバラからなおさら信頼されなくなってしまいました。
一方長男のダニエルは、エスターのシスター殺害を疑っており、マックスにそのことを尋ねます。
しかしその事に気付いたエスターは、証拠隠滅の目的も兼ね、ダニエルのツリーハウスに火を着け燃やしました。
これによりダニエルはツリーハウスから転落し、入院することとなります。
ケイトはエスターの過去を知るため、手当たり次第調査をはじめます。
そしてエスターの聖書に押してあったスタンプからその場所を調べてみると、精神科病院であることが分かりました。
また、ダニエルの入院している病院では、エスターが追い打ちをかけるかのように彼の酸素吸入器を外し心拍停止の状態にします。
これはきっとエスターの仕業だと思ったケイトは、カッとなり彼女に手をあげてしまいました。
ダニエルは一命をとりとめますが、精神状態が不安定だと判断されたケイトは、一晩病院に入院させられます。
マックス、エスターはジョンと共に帰宅しました。
【結】エスター のあらすじ④
ケイトのいない晩、エスターはやけに色っぽい服装でジョンの前に現れます。
化粧までして、妙にセクシーさをアピールし誘惑してくるエスター。
しかし、ジョンはこれを拒否しました。
エスターは自分の部屋に戻り、怒り狂ったように泣きます。
その頃病院ではケイトにある連絡が入ります。
それは以前エスターが入院していた、精神科医師からの電話でした。
その医者はエスターを危険人物とみなしているようで、ケイトに「直ちに家族から遠ざける」よう忠告します。
なぜならエスターは少女のように見えますが、実はそうではなかったからです。
エスターの実年齢は33歳で、子供に見えるのは病気のせいでした。
さらに問題なのは、エスターは過去に前科があり逃亡してきた人物だったことです。
彼女は、過去に推定で7人程度殺害していることでした。
この話を聞いたケイトはギョッとし、すぐさま帰宅します。
その頃ジョンはエスターの部屋の絵を見て、がくぜんとします。
エスターが日々描いていた絵は、ブラックライトで照らすと全く違う意味合いの不気味な絵に見えるのでした。
エスターが正常ではないと確信したジョンは、その矢先に彼女から殺害されてしまいます。
帰宅したケイトはジョンの死を知り、ひどくショックを受けますが、どこかで生きているはずのマックスを必死で探します。
その後、警察がやってきました。
エスターとケイトと湖の氷の上でもみ合いますが、間一髪のところで幼いマックスが銃の引き金を引き、湖の氷が割れます。
エスターはケイトに助けを求めますが、そのまま湖へ沈んでいきました。
エスター を観た感想
『エスター』は低予算で作られたホラー映画です。
この映画は「アイデア次第でこんなに怖くて面白い映画ができる」ことを証明してくれました。
劇中のエスターは巧みな工作により、エグイ心理戦をけしかけては「夫婦の分断」へと導いていきます。
また父親であるジョンがエスターの本性を見抜いていないからこそ、ハラハラさせられるシーンというのが多数存在します。
シスターを殺害するシーンや、ブレンダを滑り台から突き落とすシーンなどは、何も言えない子供だけが知るエスターの姿なのです。
本作品をよく注意してみると、エスターが要注意人物であるというフラグは、ストーリー序盤からあちこちに立っていると気付けるでしょう。
そしてその伏線が後半一気に回収されるシナリオが心地良く、秀逸です。
また俳優陣の迫力のある演技やギョッとさせられるようなカメラワークなど、見どころは山ほどあり、極上のホラーと言っても過言ではありません。
さらに『エスター』はホラー映画であると同時に、どこかもの悲しいラストが印象的な作品でもあります。
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