監督:行定勲 2005年10月に東宝から配給
春の雪の主要登場人物
松枝清顕(妻夫木聡)侯爵家の嫡男。自尊心が高く、聡子を傷つけてばかり居る。綾倉聡子(竹内結子)伯爵家令嬢。清顕とは幼なじみであり、彼に恋している女性。本多繁邦(高岡蒼祐)清顕の友人。一番彼を理解し、叱咤激励する青年。蓼科(大楠道代)綾倉家女中であり、聡子の世話をする。
春の雪 の簡単なあらすじ
三島由紀夫の最後の長編・豊穣の海1巻である【春の雪】を映画化した作品です。
永遠を約束された筈のふたり。
ですが運命は残酷でした。
幼なじみとして育った清顕と聡子。
当たり前の様に惹かれ合う二人ですが、自尊心の高さから聡子に本心を打ち明けられない清顕。
聡子は周りが知るほど清顕に恋焦がれています。
それを知りながら、不器用にも彼女を振り回す清顕。
やがてその行為が2人の運命を狂わししていくのです。
春の雪 の起承転結
【起】春の雪 のあらすじ①
大正初期の日本。
侯爵家の嫡子である松枝清顕と伯爵家令嬢の綾倉聡子。
幼い頃、雅な精神を身につけされるために、清顕は綾倉家へと預けられていました。
そうして維新の功臣によって得た地位に大してどこかコンプレックスを抱いている松枝家と傾き始めている地位にしがみつく綾倉家。
そんな狭間で2人は一緒にいることが当たり前のように育ちました。
綾倉家の当主である聡子の父は、将来聡子をき娘のまま嫁に出すこと禁ずるを蓼科に伝えます。
そうして十数年の後。
松枝家の庭で友人である本多と共に船に乗り、遊覧していました。
そんな所に綾倉家の一行が。
その中に美しい空色の着物を来た聡子もいました。
美しくなった彼女に清顕はどこかニヒルな笑顔を向けます。
本多は聡子を一目見て気に入りました。
本多を馬鹿にしつつ、綾倉家の元へ。
ひょんなことから聡子と二人きりになったところで、聡子はとても奇妙なことを問います。
「私が急にいなくなったら、清様はどうすなさる?」と。
清顕は気恥づかしさからはぐらかします。
実際は惹かれあっている2人なのにも関わらず、清顕は子供っぽい自尊心から聡子を傷つけてばかりです。
その夜、清顕は夢を見ます。
森の中を彷徨い、そこで棺を見つけます。
中には聡子の姿が。
そこで目を覚まし、清顕は夢を日記に書き記しました。
数日後、聡子の話が夕食の席で出てきます。
これまで松枝家が縁談を世話しているものの、聡子は首を縦にふりませんでした。
しかし縁談は不可欠、綾倉家は没落に向かっているのです。
そうして侯爵は聡子に断れない縁談を考えます。
【承】春の雪 のあらすじ②
翌日。
学校内の道場で剣道をする本多を見つめる清顕。
そんな中で本多は聡子と気があるか問います。
その中で自身は父である侯爵に聡子のことを問われ、はぐらかした話をします。
その夜、清顕の元へ女中の女性を向かわせます。
清顕は彼女を抱くことになります。
そんな一連の流れを聡子への手紙に書いたと言うのです。
帰宅した清顕は祖母の部屋へ。
彼女の部屋にある仏壇へと手を合わせる清顕に、祖母は何があったかを見抜いています。
そうして「父を見習うな」と忠告するのでした。
その言葉で考えを改めた清顕は蓼科に手紙を見せぬよう電話で伝え、聡子を演劇に誘います。
演劇の会場には本多や他の友人も一緒でした。
美しく着飾った聡子が来ると、本多の視線を奪います。
清顕はどこか楽しげです。
清顕の学校の留学生であるタイの王子たちに大絶賛されます。
観劇中でもそっと清顕を盗み見る聡子。
彼女の心は周りが見ても分かる程、清顕にありました。
その夜、清顕は再び夢を見ます。
棺の中を覗くと、蝶が飛び出します。
そうしてもう一度棺の中を覗くと、自身が横たわっていたのでした。
翌朝・降りしきる雪の中、馬車の中で聡子が待っていました。
彼女は雪見に誘います。
馬車の中で2人は初めての接吻をするのです。
馬車は静かに通りを走り抜けます。
校内にある剣道場。
そこで本多は鍛錬を続けています。
そこで清顕に自身の幼稚さによって本多までを利用したことを叱責します。
そんな中、聡子にある縁談が持ち上がります。
お相手は宮家の親王です。
焦る聡子は清顕に連絡を取ろうとしますが、清顕は取り合いません。
そうして天皇の勅許が出てしまい、聡子は公式な婚約をします。
聡子から連絡が途絶え、清顕はやっと聡子と会うことを決意します。
蓼科を呼び出し、実際は自身で破り捨てた手紙を切り札に聡子を自身のてに抱きます。
一度きりという蓼科に、清顕は首を縦に振ることはなく、その後も何度も逢瀬を重ねます。
【転】春の雪 のあらすじ③
そうしている内に聡子は清顕との子を身ごもってしまいます。
蓼科は2人が会うことを禁じます。
しかしそうしても聡子は勅許の下りた身。
綾倉家はおしまい、清顕も将来が閉ざされてしまいます。
初めて聡子への気持ちを公に出すことが出来るようになった清顕。
雨の中綾倉家の前に立ってましたが、聡子に会うことは叶いません。
蓼科の自殺の演技によって伯爵に全てを話します。
そうして8年前の約束を守ったと告げます。
そうして松枝家、綾倉家双方に聡子の懐妊が知られます。
勿論激怒する侯爵。
それを聞いた祖母は、子を始末するのだと指南します。
聡子は清顕には黙っておくことを約束させ、堕胎を了承します。
最後に清顕に会うことを願いますが、侯爵は受け入れません。
その頃の清顕は風邪をこじらせてしまいました。
そんな中、執事である山田の計らいで聡子の旅立つ列車の時間を知るのです。
聡子の乗る汽車を追いかけますが、彼女は何も話さず、一枚の百人一首の札を渡します。
それは彼女が好きだと言った札でした。
父である侯爵に清顕は聡子と結婚したいと告げます。
そしてそこで初めて子が出来ていたことを知ります。
しかしその頃、手術を終えてしまった聡子。
自身の欠陥により大切な人を傷つけて、大切なものまで失ってしまいます。
【結】春の雪 のあらすじ④
その後奈良にある月修寺へと挨拶に寄る母と聡子。
聡子はその夜、出家を決意し、自身の髪を切ってしまいます。
新聞には聡子が精神病により入院、宮家との結婚は破談になりました。
そんな中咳をしながら清顕がやってきます。
松枝家のみを守る為に考えられた嘘だと清顕は言います。
清顕はやっと決心が付き、奈良へ聡子に逢いに行くと言い出します。
祖母が大事に保管していた戦争の遺族給付金を勝手に持っていこうとします。
祖母はそしらぬ振りをします。
奈良へ付き、月修寺へお目通しを頼み込みますが、断られます。
清顕は会えるまでそこにいると言い出します。
何日もそうしていたことで、清顕は寝込んでしまいます。
しかし今日こそ聡子は会ってくれるかもしれない、そう思いまた逢いに向かいます。
本多は清顕の気持ちを汲み、自身が逢いに行くと言います。
門跡に会うことは出来たものの、聡子には会えずじまいでした。
そこに清顕もやってきます。
倒れ込んだ清顕を抱く本多、彼らを雪が包み込みます。
東京への汽車の中で清顕は再び会えると言います。
夢の中で夢日記の頁が風によって開いていきます。
水辺を蝶が舞っています。
そうして雪は桜の花びらに変わる、と清明の声がします。
天に舞う2匹の蝶。
まるで清顕と聡子のようです。
春の雪 を観た感想
三島由紀夫文学にして最高の出来であった豊饒の海・第一巻からなく今作。
悲恋を描き、なんとも言えない不器用さと幼稚さで人を傷つけ、結果悲劇をもたらす清顕にほとほと苛苛させられます。
しかし聡子を演じた竹内結子さんの凛とした演技が美しく、ずっと見つめてしまうような映画でした。
監督である行定勲監督はこう言った美しい悲恋であったり、世界観を上手に汲み取り、描くのが上手い監督だと感じます。
映像の中でも聡子の衣装であったり、風景であったりと日本の美しさを象徴するかのような世界観。
難しい三島文学をここまで表現する監督の手腕にいつも感嘆させられます。
原作とは少し手を加えている部分もありますが、そこもすんなりと受け入れられる変化なので、とても良かったと思います。
とても良い映画でした。
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