「聖の青春」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|森義隆

聖の青春

監督:森義隆 2016年11月にKADOKAWAから配給

聖の青春の主要登場人物

村山聖(松山ケンイチ)
主人公。「怪童」の異名を持つ将棋棋士だが体が弱い。趣味は少女マンガを読むこと。

羽生善治(東出昌大)
聖のライバル。同世代の棋士の中でもずば抜けている。

森信雄(リリー・フランキー)
聖の師匠。お酒とマージャンが大好き。

江川貢(染谷将太)
森の弟子で聖の後輩に当たる。20歳をすぎた頃から伸び悩む。

村山トミコ(竹下景子)
聖の母。健康を省みない我が子を心配する。

聖の青春 の簡単なあらすじ

5歳の頃に腎臓病を発症して闘病生活を続けている村山聖にとって、将棋を差すことだけが唯一無二の生きがいです。

プロとなった聖は将棋界の期待の星として脚光を浴びていた、羽生善治を打ち負かすために東京へと向かいます。

多くの名勝負を繰り広げていくふたりでしたが、聖はガンを併発して29歳の若さで帰らぬ人となるのでした。

聖の青春 の起承転結

【起】聖の青春 のあらすじ①

西の怪童が東に進出

村山聖が広島市民病院で腎臓のネフローゼと診断されたのは5歳の時で、生命に関わる病気で気長に付き合っていかなければなりません。

入院生活が長引いて退屈していた聖のために、父親の伸一は将棋盤を買ってきてルールを教えました。

聖の才能に気が付いた母親のトミ子は、大阪の森信雄の一門に弟子にしてほしいと頼みにいきます。

みるみるうちに師匠を抜き去っていった聖が、新七段へと昇進したのは1994年です。

この年に東京では羽生善治が若干24歳にして棋聖、王位、王座、棋王、名人と5つのタイトルを獲得しました。

西の怪童・村山、東の若き天才・羽生。

ふたりが初めて対局した場所は関西将棋会館の5階にある特別対局室で、結果は126手で羽生の圧勝です。

羽生の圧倒的な強さに打ちのめされた聖は、再戦のために東京進出を決意しました。

森の知り合いの「将棋世界」編集長・橋口陽二が、引っ越し先のマンションから金銭管理までをしっかりとサポートしてくれます。

【承】聖の青春 のあらすじ②

立ち去る弟分と師匠の包容力

森の門下生の中でもうひとりのプロ棋士候補として期待されているのが、聖の弟弟子・江川貢です。

地元では「神童」として騒がれて高校にも進学せずに将棋ばかりに打ち込んで三段まできましたが、間もなく23歳を迎えます。

年齢制限となる26歳までに結果を出さないと、奨励会を退会しなければなりません。

久しぶりに関西将棋開館を訪問した聖は稽古を付けてあげましたが、結果は三段リーグの第10回戦で14歳の少年に惨敗です。

試合後には森も合流して3人でスナックで打ち上げをしますが、江川はその席で引退を表明しました。

ワインを飲み過ぎて泥酔状態となった聖が、江川を「負け犬」と侮辱したために殴り合いのケンカに発展します。

突如として聖が体調の異変に襲われたために、森が慌ててタクシーに載せて病院へと運びました。

自分には時間がない、江川ともこのまま終わりにしたくない、また一緒に飲みに行きたい。

泣きじゃくる聖にほほえんだ森は、そっと頭をなでて抱きしめます。

【転】聖の青春 のあらすじ③

盤上を漂うふたりの旅人

都内の大学病院で検査を受けた聖は悪性のぼうこうガンと診断されますが、手術を受けるつもりはありません。

1997年、東北の温泉旅館で聖は羽生との対局に挑みました。

羽生は4冠で聖は8段、ふたりの通算対戦成績は6勝5敗でほぼ互角。

窓の外から夕陽が射し込んできて対局室に美しい光と影のコントラストを描く中、羽生の「負けました」が響き渡りました。

終局後に記者や棋士仲間が開いてくれたパーティーを抜け出したふたりは、静かで素朴な居酒屋で瓶ビールで乾杯をします。

聖はふたつの夢を羽生に打ち明けます。

ひとつは名人になって将棋をやめてのんびり暮らすこと、もうひとつはすてきな恋愛をして結婚すること。

羽生は今日、聖に負けて死ぬほど悔しいと告白しました。

将棋の世界は海のようなもので、深く潜りすぎると元の場所には帰ってくることはできません。

聖と一緒ならばどこまでも行けるという羽生の夢は、いつかふたりだけで誰も見たこともないような景色を見ることです。

【結】聖の青春 のあらすじ④

魂を焼き付けた棋譜

1998年、広島市民病院のベッドの上で聖は汗まみれで苦しんでいて、周りには伸一とトミコの他に医師と看護師がふたりほど控えています。

少しずつしずつ薄れてゆく意識の中で、最期に聖が残した言葉は「2七銀」でした。

市内からタクシーで村山家に駆けつけた森は聖の遺体と対面しますが、顔にかけられた白い布を取ることができません。

枕元で見守っているトミコの話では、つい先ほど羽生がここで聖との別れを済ませたそうです。

将棋世界の編集部の机は聖の写真や棋譜で散らばっていて、橋口が原稿用紙に向かっています。

完成した村山聖追悼号の原稿を印刷所まで持っていくのは、棋士をあきらめて将棋観戦記者の見習いの道を歩み始めた江川の役目です。

原稿の束を受け取って玄関を出て自転車にまたがった瞬間に、江川は誰かに名前を呼ばれます。

真っすぐに伸びている夕暮れ時の道の先に聖の姿を見たような気がしましたが、振り返ることはなくペダルをこぎ出すのでした。

聖の青春 を観た感想

実在する将棋棋士をモデルにした登場キャラクターが魅力的ですが、その中心にいるのはふたりの若者です。

松山ケンイチがウエイトを大幅にアップして、悲運の棋士・村山聖に成りきっています。

スマートで端正な顔立ちの東出昌大が、今では国民的なスターとなった羽生善治の若き日を演じているのも必見です。

激しい対局を終えたふたりが、それぞれの胸の内をさらけ出す居酒屋のシーンが忘れられません。

狭き門をくぐり抜けていくうちに、次々と仲間たちが脱落していく様子には胸が痛みました。

同じ師匠に師事しながら、聖とは対極的な道のりを歩んでいく江川貢の姿も印象的です。

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