監督:片渕須直 2016年11月に東京テアトルから配給
この世界の片隅にの主要登場人物
北條すず(のん)
旧姓・浦野。18歳で北條家に嫁入りする。おっとりした性格で絵を描くのが得意
北條周作(細谷佳正)
すずの夫。軍の書記官をしている。無口で真面目な青年。
黒村径子(尾身美詞)
周作の姉。結婚して北條家を出ていたが、夫の病死後、黒村家との折り合いが悪く、娘・晴美と共に北條家に戻っている。
水原哲(小野大輔)
すずの幼なじみ。亡くなった兄と同じく海軍を志願し、「青葉」の乗組員となっている。
この世界の片隅に の簡単なあらすじ
おっとりした性格のすずは絵を描くのだけは得意です。
18歳で北條家に嫁入りし、軍港のある呉で生活することになります。
戦時下で食料や物資は不足していますが、すずはその明るく優しい性格で日々の生活を工夫して暮らしています。
空襲や広島への原爆投下で戦況は悪くなるなか、すずは自分はどこでどう生きたいかを考えるようになります。
この世界の片隅に の起承転結
【起】この世界の片隅に のあらすじ①
9歳のすずは兄の代わりに海苔を納品するおつかいをしています。
帰りにお土産を買って帰る予定でしたが、納品するお店を探すうちに迷子になってしまいます。
道を聞いた相手に「これで探してみたら?」と望遠鏡を渡されますが、その拍子にひょいと持ち上げられ肩に乗せられます。
肩から背中のかごに転げ落ちたすずは、かごの中にいる少年と出会います。
少年は「あいつは人さらい、わしらはさらわれたんじゃ」と困った様子です。
すずは機転を利かせて人さらいを眠らせ、少年と共にかごから抜け出します。
少年は別れ際「ありがとな、浦野すず」と言い、「ありゃ?いつの間にうちの名を」と不思議がるすずに「股引のすそに書いてあった。
元気でな」と言って去っていきます。
10歳になったすず。
大潮の頃に兄と妹と三人だけで叔父の家を訪ねます。
昼寝の後、見知らぬ女の子を見かけるが、すずしか見ておらず、座敷童子ではないかと言われてしまいます。
12歳になったすず。
勉強は今ひとつですが、絵を描くのは得意です。
図画の時間に校舎を描き皆に褒められます。
帰宅したすずはコクバ(炊き付け)を拾いに行き、同級生の水原に会います。
水原の兄は転覆事故で亡くなっており、家では両親が飲んだくれているそうです。
すずは水原の絵を代わりに描いてやり、水原が言う「白うさぎのような白波」を描きます。
【承】この世界の片隅に のあらすじ②
18歳になったすず。
妹と一緒に叔母の家で海苔摘みの手伝いに来ています。
用事で出かけていた叔母が慌てた様子で帰宅し、すずを嫁に欲しいという人が来ているから、すぐに帰りなさい、と言います。
帰り支度をしていると祖母がすずを呼び「嫁入りにと思うて」ときれいな花柄の着物を持たせます。
そして、嫁に行くことになったら、結婚式の晩に婿殿とどんなやりとりをすればいいか指南します。
要領がつかめず「何で?」と聞くすずに「何でもじゃ」と答えます。
家に帰るとお相手は見知らぬ青年でしたが、結局、両親が「ええ話じゃったけ、受けといた」と言い、結婚することがトントン拍子に決まりました。
そして結婚式当日。
粛々と式は進み、食事会もお開きとなり、両親と妹は帰っていきました。
その夜、すずは夫・周作に「うちらどこかで会いましたか?」と聞きます。
寡黙な周作は「小さいときに会っとる。
あんたは覚えとらんじゃろうが・・・」と話し、「よう来てくれた」とすずにそっと近づき口づけをします。
翌朝から北條家での本格的な生活が始まります。
周作の父は軍の工場で技師をしています。
周作の母は足を痛めており、家事はすずの担当、配給当番や焼夷弾の講習などにも出なくてはいけません。
周作の姉・黒村径子の機転でしばらく里帰りするすずでしたが、その後、すずは元気がありません。
慣れない土地での結婚生活が原因なのか、10円ハゲができていたのです。
晴美は「すずさんの頭に墨を塗ってあげたい」と言い、周作も気にしています。
【転】この世界の片隅に のあらすじ③
戦況はますます悪くなり、配給も滞りがちです。
すずは近所のおばさんに聞いて、食べられる草花を摘んで料理したり、楠公飯と言われる炊き方で米を炊いたりして、何とか食事作りをこなしています。
空襲に備えて、防空壕を作ったりしています。
ある日、周作が気を利かせ、二人は町へ出ることにします。
初めて出会った人さらいのかごから抜け出したときの橋の上で二人は語り合います。
しばらくして水兵になった水原が入湯上陸ですずを訪ねてきました。
周作は自分に対する態度とは違うすずの水原に対する様子を無言で見つめます。
そしてその夜、「積もる話もあるだろう、もう会えないかもしれんし」とすずと水原を二人きりにします。
すずに寄り添う水原でしたが、すずは自分の気持ちに気付き、水原を受け入れることができませんでした。
翌朝、何事もなく水原は帰っていきました。
空襲が多くなり、毎日どころか一日に何回も警報が鳴るようになりました。
周作の父は軍の工場から帰ってきません。
情報もなく、生死も分からないままでしたが、ある日、別の病院にいることが分かりました。
径子は晴美を父のお見舞いに連れて行ったあと、下関の黒村家へ疎開させようと考えていました。
すずは径子・晴美と共に駅まで出かけ、径子が切符を買う列に並んでいる間に晴美をお見舞いに連れていきます。
お見舞いを済ませ、駅に戻る途中で空襲に遭い、時限爆弾を避けられなかったすずは右手を失い、晴美は吹き飛ばされて亡くなってしまいます。
【結】この世界の片隅に のあらすじ④
すずは晴美を守れなかったことを径子に責め立てられます。
空襲は容赦なく続き、北條家にも焼夷弾が落ちますが、すずは「この家を守る」と必死に消火します。
失った右手を見つめながら、ぼんやりとこれまでに右手でしてきたことを思い出します。
妹が訪ねてきて浦野家へ戻ってこないかと言います。
精神的に参っていたすずは広島に帰ることにし、身支度をしています。
径子がそれを手伝いながら晴美のことで責めたことを謝り、すずの髪を編んでやります。
その一瞬、空が光りました。
すずは気が変わり、北條家に留まることにしました。
光ったのは広島に落とされた原子爆弾でした。
8月15日、皆でラジオの前に座り、玉音放送を聞いています。
皆は「終わったか」とため息をついていますが、すずは「まだここに5人おるのに!」と納得できない様子で外へ飛び出し、一人畑で「なんも知らんまま死にたかったなぁ」と大粒の涙を流しました。
戦後も食料不足は続きますが、闇市や物々交換で食料を手に入れ、細々と暮らしています。
径子は以前よりも丸くなり、すずと一緒に買出しに出かけたりしています。
周作と広島で待ち合わせたすず。
周作に「わしはすずさんがいつでもすぐわかる」と言われ、「ありがとう。
この世界の片隅にうちを見つけてくれて」と返します。
すずと周作は汽車を待つ間に小さな女の子に出会います。
母親を亡くした女の子を二人は呉へ連れていきます。
北條家では皆、女の子を受け入れてくれました。
「シラミだらけじゃ!」「お湯沸かさんと!」「とりあえずお風呂かのう?」と明るい声が響き、径子は晴美の服を出してきて「去年の晴美の服じゃ小さいかのう?」とつぶやきました。
この世界の片隅に を観た感想
冒頭の「うちはよう、ぼーっとした子じゃあ言われとって」という言葉通り、おっとりした性格のすずですが、その人懐っこい笑顔にほっこりした気持ちになりました。
戦時中という厳しい時代でも、毎日を工夫して明るく、懸命に生きようとする姿はとても輝いて見えました。
すずを見守る周作は言葉は少ないながらも、その眼差しはとても愛おしく、深い愛情を感じました。
最後に登場し、呉に連れて帰った女の子も一緒に素敵な家族になってほしいなと思いました。
エンドロールにはその後の展開を思わせるような描写があり、最後の最後まで楽しめました。
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