著者:松岡圭祐 2020年5月にKADOKAWAから出版
高校事変Ⅶの主要登場人物
優莉結衣(ゆうりゆい)
17歳の女子高生。テロ事件を起こして死刑となった半グレ集団のボス優莉匡太の次女。幼いころからテロ集団に育てられ、武器の知識と戦闘能力を持つ。
山海鈴花(やまみすずか)
17歳。泉が丘高校野球部のマネージャー。
神藤光昭(しんどうみつあき)
27歳。甲子園警察署、刑事第二課の巡査部長。
畑野御唐(はたのみとう)
甲子園警察署刑事第二課特務一係長。
柳詰哲雄(やなづめてつお)
昔、優莉匡太(結衣の父親)の半グレ集団の一員だった男。通称テツ。
高校事変Ⅶ の簡単なあらすじ
2019年夏、泉が丘高校では、野球部が甲子園大会に出場することになりました。
応援のため、生徒たちが球場へと出かけて行きます。
当時、泉が丘高校に在籍していた結衣も、もちろん応援に駆り出されました。
試合中、不審な男たちが野球部の補欠部員を連れて行くのを見た結衣は、彼らを追います。
その途中で彼女は、満員の観客をねらうテロ行為に気づき、未然に防ぐために戦うのでした。
さて、それから9か月後、結衣は新たな脅威に対面することになります……。
高校事変Ⅶ の起承転結
【起】高校事変Ⅶ のあらすじ①
前回(「高校事変Ⅵ」)、沖縄から本土に帰る飛行機で、ハイジャック犯を倒した優莉結衣は、芳窪高校を除籍になり、京都の緊急事案児童保護センターに収容されました。
そこは、問題のある児童を収容する施設です。
ある日、センターに刑事がやってきて、結衣を大阪の甲子園警察署へ連行しました。
取調室で刑事たちが結衣を取り囲み、9か月前のことを話すようにと、尋問します。
9か月前というと、結衣は武蔵小杉高校(「高校事変」の舞台)へ転校する前で、泉が丘高校へ通っていました。
当時の結衣は、学校でのけ者にされながらも、平凡な人間として暮らしていきたい、と思っていたものです。
8月、泉が丘高校野球部は、夏の甲子園大会に出場しました。
一般生徒たちは応援に駆り出されました。
結衣も、ほかの生徒たちといっしょに甲子園球場にやってきました。
試合が始まると、不審な男たちがやってきて、ベンチに入れなかった野球部の補欠部員を連れていきました。
結衣はいぶかって、彼らのあとを追います。
男たちは、補欠部員をアトラクションコーナーへつれていき、ストラックアウトで9ますの標的に投げさせました。
しかし、緊張した補欠部員は的に当てられず、逃げ出しました。
追いかける男たちを結衣も追いますが、見失いました。
結衣は原点にもどろうと、ストラックアウトですべての的に当てました。
すると、目出し帽子をかぶった男が現れ、スマホのやりとりで、結衣に奇妙な指令文を送ってきました。
目出し帽子の男に見覚えがあった結衣は、「テツ」と呼びかけました。
彼は、かつて父、優莉匡太の半グレ集団にいた男だったのです。
【承】高校事変Ⅶ のあらすじ②
結衣はテツを追って、照明塔に上りました。
塔の上で戦った末に、テツは塔から落ちて死にました。
補欠部員を連れ去った男たちが、死体にむらがってきます。
驚いたことに、彼らは刑事なのでした。
どうやら、球場にライフル魔が潜んでいて、先ほどのストラックアウトは、犯人からの要求だったようです。
球場の警備室に刑事たちが詰めかけ、防犯カメラで結衣の姿をとらえました。
刑事たちは、結衣がライフル魔の一味であるとはやしたてます。
ライフル魔に対抗するため、SATの狙撃手が配備されました。
警察から逃げ回る結衣のスマホに、ライフル魔からメッセージが届きます。
爆弾の写真と、席を離れては困る、という文です。
自分の座席に爆弾が仕掛けられている、と察知した結衣は、応援席にもどります。
取り出した爆弾をアルミ箔で包み、皿洗いのシンクに沈めました。
それから結衣は、ライフル魔らしき男を見つけます。
内野席を覆う大屋根の上にいました。
結衣はジェットパックを背負い、大屋根に飛び乗ります。
結衣はライフル魔と戦い、とうとう男を殺したのでした。
【転】高校事変Ⅶ のあらすじ③
甲子園警察署で、結衣は刑事たちに問い詰められています。
大半の刑事たちが、結衣を留置場に入れようとしています。
ひとり、神藤という刑事だけが反対しました。
神藤対その他、という構図から、結衣は見抜きます。
彼らは結衣をここへ閉じ込め、甲子園球場へ行かせないようにしようとしているのです。
というのも、今日、甲子園球場に爆弾を仕掛けた、という予告がありました。
甲子園警察署の刑事たちは、球場の警備室を乗っ取るつもりでいます。
去年のライフル魔事件は、まさかのときは、警察が球場の警備室を乗っ取るための布石でした。
彼らはよからぬことを企んでいます。
そのたくらみを、結衣に邪魔されたくないのでした。
だから留置場に押し込もうとしているのです。
そこまでして、甲子園警察署はなにをしようとしているのか? 結衣を留置しようとするボスの畑野係長は、泉が丘高校の生徒たちを数名、球場に招待してある、と結衣に教えました。
結衣がよけいなことをしないように、との人質です。
畑野係長たちが出て行ったあと、神藤は結衣を人質にとったふりをして、いっしょに警察署を脱出し、甲子園球場へ向かいました。
球場では、泉が丘高校の生徒たちが、警察の監視をふりきって、逃げ出していました。
球場に着いた結衣たちが見たのは、タイの大型輸送機CH-47が、自衛隊機をふりきって、グランドに緊急着陸する姿でした。
CH-47の底部から荷物を運び出し、グランドのシートカバー下の壕に運び込む作戦だったのです。
【結】高校事変Ⅶ のあらすじ④
この作戦を主導したのは、田代ファミリーの長男、田代勇太でした。
結衣に、沖縄の武器横流し組織をせん滅され、このような派手な方法で武器と傭兵を密輸入しようとしたのです。
神藤と結衣は、泉が丘高校の生徒たちと合流し、逃げます。
警察と傭兵がまじっての、すさまじい銃撃戦のなか、クラブハウスに充満させたスプレーガスにより、大爆発が起こりました。
そこまで大事になってしまっては、犯人側も、もう取り繕えません。
戦闘の末、田代勇太は生物兵器を持って逃走しました。
ウィルスをばらまくつもりです。
彼を追った結衣は、ウィルスの入ったケースを保護し、田代勇太もCH-47も壊滅させました。
それから数日後、田代ファミリーのボス、田代槇人は金銭的にも追い詰められ、いらだっていました。
次男の田代勇次は、さわやかなバドミントン選手という仮面をかなぐり捨て、結衣を殺すことを誓います。
一方、結衣は泉が丘高校に復学しました。
生徒たちは、以前とは違い、自分たちを助けてくれた結衣を受け入れてくれたのでした。
高校事変Ⅶ を読んだ読書感想
2020年3月のセンバツ高校野球が中止になった、ということを受けて、そのことを利用したストーリーを2020年5月に刊行する、という、なんともすごい早わざです。
そんなに早いから、雑に作られているのかというと、決してそんなことはありません。
甲子園球場の細部までがリアルに描写され、球場のレイアウトを十分に生かしたアクションが展開します。
物語は大きく前半と後半に分かれています。
前半は2019年夏の甲子園球場を舞台にし、後半は2020年春の無人の甲子園球場を舞台にしています。
前半も後半も、アクションがてんこ盛りです。
息つく暇もない、というのはこういう小説のことでしょう。
今回も優莉結衣がすさまじい活躍を見せます。
今後も楽しみなシリーズです。
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