著者:沼田まほかる 例)2009年10月に株式会社幻冬舎から出版
彼女がその名を知らない鳥たちの主要登場人物
北原十和子(きたはらとわこ)
本作の主人公。陣治と暮らし、映画を見るか寝るか以外特に何もせず日々過ごす。
佐野陣治(さのじんじ)
十和子の別性の夫。上場企業を退職後、粗悪な建売住宅を造る小さな工務店に勤める。十和子曰く、不器用で不潔で口だけの男。
黒崎俊一(くろさきしゅんいち)
十和子の8年前の恋人。8年前、新しい仕事を得るために十和子を利用した。
水島(みずしま)
デパートの文具売り場に勤める。十和子とは故障した時計をきっかけに出会う。
彼女がその名を知らない鳥たち の簡単なあらすじ
十和子は元恋人である黒崎のことを考えながら、陣治と供に暮らしていました。
陣治に嫌悪感を抱く一方で、陣治から離れることができません。
そんな中、時計の修理をきっかけに十和子は水島と出会い、深い仲になっていきます。
そんなある日、黒崎が失踪したことを知って動揺する十和子。
十和子は黒崎との間のことを思い出すにつれて、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑っていきます。
それと供に、陣治が次は水島を殺すのではないかと疑い、十和子はその前に陣治を殺そうと計画します。
その計画をきっかけに、十和子は黒崎を殺したことを思い出しました。
十和子の罪を背負って、陣治は高台から飛び降り、そこで十和子は陣治への思いに気付きます。
彼女がその名を知らない鳥たち の起承転結
【起】彼女がその名を知らない鳥たち のあらすじ①
十和子は8年以上前に別れた元恋人である黒崎のことを考えながら、陣治と供に暮らしていました。
日々、映画を見るか夢を見るか以外何もせず、ぼんやりと過ごす十和子。
陣治に嫌悪感を抱く一方で、陣治から離れることができません。
陣治とは、建築事務所の慰労会で初めて出会いました。
陣治は一部上場の企業に勤めていながらも落ちこぼれで、会社の愚痴ばかり言い、口では辞めると言いつつも、実際に辞めることはありませんでした。
そんな口だけの陣治に嫌気が差した十和子は、会社を辞めるよう迫ります。
ついに陣治は、会社から退職を命じられ、唯一の自慢であった会社まで全てを失いました。
それから、2人はマンションを買い、一緒に暮らし始めました。
それから十和子は毎日、堕落した日々を送るようになったのです。
そんな日々の中、昔から比較されてきた姉からの電話に劣等感を刺激され、勢いで故障した時計の購入店舗にクレームの電話を入れます。
その日から舌の違和感を覚え、舌のことが頭から離れなくなっていきます。
【承】彼女がその名を知らない鳥たち のあらすじ②
故障した時計の購入店舗のセールスリーダーである水島は、時計の代替品を持って十和子の住むマンションを訪れます。
十和子は電話の相手である北島を黒崎と重ねて見ていました。
しかし、十和子の想像に反し、水島は黒崎とはかけ離れた外見をしていました。
また、水島が持参した時計の中に十和子の望むデザインのものはありませんでした。
十和子は、故障した時計と似たデザインのものを探すよう水島に言い、泣き出してしまいます。
水島が部屋から出て行ったあとも、十和子の頭から黒崎が離れません。
夜、帰ってきた陣治はいつも通り優しく、2人は穏やかな時間を過ごします。
数日後、再び水島が十和子のマンションを訪れます。
水島は十和子の希望通りのデザインの時計を見つけ出し、持参したのです。
その日をきっかけに、水島と十和子の仲は深いものになりました。
数日後、夜遅くに帰宅した十和子を心配して、陣治は十和子の姉に連絡します。
翌日に訪れた姉に黒崎とのことを責められ、再び黒崎とのことを思い出した十和子は、ついに8年振りに黒崎に電話を掛けるものの、コール途中で切ってしまいます。
【転】彼女がその名を知らない鳥たち のあらすじ③
黒崎の携帯に電話したことで、十和子の部屋に警察官が訪れます。
そこで、数年前に黒崎が失踪していたことを警察官から知らされ、動揺する十和子。
そんな中、水島から仕事を辞めて、何もかもまっさらのところからやり直したい、これからいろいろなことがあってもそばにいてほしいと告白されます。
その言葉をきっかけに、黒崎と水島が重なっていきます。
黒崎は妻と離婚しプロポーズをすると言っていたにも関わらず、自分を踏み台にして新しい仕事も妻も手に入れていました。
翌日、姉の元を訪れた十和子は、姉に黒崎の失踪のことを話します。
姉に黒崎はもしかしたらもう死んでいるのかもしれないと言われ、数年前に陣治が風呂場で夜中に血で汚れた作業着を洗っていた光景が甦ります。
それから、十和子は陣治が黒崎を殺したのではないかと疑うようになりました。
水島との密会が続いていく中、誰かが水島の妻や上司に水島が不倫をしていることを電話でばらし、水島とはしばらく会えなくなります。
その電話の主は男の声だったと聞き、十和子は陣治ではないかと疑います。
十和子は、このままだと水島も陣治に殺されると考え、黒崎の新しい妻に会い、失踪したときの状況を聞きます。
黒崎の新しい妻からの話を聞き、十和子の中で黒崎の死は確信に変わります。
ついに、十和子は陣治に黒崎の死について詰め寄ります。
陣治は、黒崎の体を自分の会社の現場に埋めたと話しました。
また、黒崎の首を絞めたとも言います。
十和子は、水島を守るために陣治を殺すことを決意します。
【結】彼女がその名を知らない鳥たち のあらすじ④
陣治を殺す前に水島に会おうと、十和子は水島を電話で呼び出します。
そこで、十和子は水島をナイフで刺そうとします。
ナイフの柄を握ったところで、陣治が現れ、十和子を止めました。
十和子は水島を殺そうとしたところで、黒崎を殺したことを思い出していました。
その日、十和子は3年ぶりの黒崎からの電話で会いたいと言われ、会いに行きました。
会いに行く途中にナイフが買いたくなり、殺そうと思っていた訳ではないのにも関わらず、購入しました。
黒崎は十和子に会い、思い出話や今の家庭の話をしたあとで、十和子に仕事で困っているから助けてほしいと頼んだのです。
黒崎を殺したあとで、十和子は陣治に電話をし、助けを求めました。
陣治は黒崎の遺体を埋め、後始末を行いました。
その間に眠っていた十和子は全てを忘れており、陣治は十和子に隠して生きていくことを決めました。
それから、陣治は十和子が思い出さないように毎日願い、十和子を大事にしてきたのです。
そのことを告白した陣治は、十和子を守るために、十和子の罪を背負って高台から飛び降りました。
陣治はたった一人の十和子の恋人でした。
彼女がその名を知らない鳥たち を読んだ読書感想
十和子が陣治を蔑み、ひどい扱いをしてきたにも関わらず、それでも十和子を大切に思っている陣治の愛の深さに感動しました。
その一方で、どんなに他に好きな人がいても、どんなに陣治のことを嫌だと思っていたとしても、陣治から離れようとしない十和子を最初は不思議に思うことでしょう。
しかし、最後の「たった一人の十和子の恋人」という一文で、全てが解決します。
冒頭では、何故二人が無理をして一緒に居るのか理解できない方も多いのではないかと思います。
しかし、読むにつれ、二人が深い絆で繋がっていることを知ることができ、大きな愛を感じる作品です。
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