著者:沼田まほかる 2011年4月に双葉社から出版
ユリゴコロの主要登場人物
<亮介>(りょうすけ)
主人公。ドッグラン付きの喫茶店を経営<千絵>(ちえ)
失踪した亮介の婚約者。<細谷さん>(ほそやさん)
喫茶店の頼れる店員。千絵の母親的な存在<美沙子>(みさこ)
亮介の母親<洋介>(ようすけ)
亮介の弟
ユリゴコロ の簡単なあらすじ
沼田まほかるの実写化もされたストーリー。
涼介はペットと一緒に楽しめるドッグランがついた喫茶店を経営し、順風満帆だっ亮介に、多くの困難が降りかかる事なります。
一緒に経営していた婚約者・千絵の失踪、父親の末期ガンが発覚、母親の事故死などが亮介を絶望へと追いやります。
そんな中、亮介は父親に会うため実家を訪れ、普段は入ってはいけない父の書斎に何気なく足を踏み入れると、そこには女物のバックがありました。
その中には、「美沙子」という名前が添えられた黒い髪束があり、その髪は黒く若々しいものでした。
それを見た亮介は幼い頃に抱いていた疑惑を思い出し、更に茶封筒に入ったノートを発見します。
ユリゴコロ の起承転結
【起】ユリゴコロ のあらすじ①
亮介が父親の書斎で見つけたノートには「ユリゴコロ」と書かれてあり、そこには数々の殺人とそれに関する経緯が細かく記されていました。
これを書いたのは、亮介の想像通り実の母親でした。
亮介は殺人犯の子供であり、その殺人犯と結婚した父親はとんでもない父親という事になります。
ここで、亮介は殺人犯である母親を父親や親族が交通事故に見せかけて抹消したのではないかと疑い始めます。
しかし、その疑いは間違いで、亮介が幼い頃に感じた違和感の通り、母親はある時点から入れ替わっていました。
亮介がまだ幼い頃、美沙子が殺人犯である事を父の書斎で「ユリゴコロ」を読んだ妹の恵美子が気づきます。
そこで、亮介の父親を含めて家族で計画立てると、殺人犯である美沙子をダムに沈めました。
しかし、子供には母親が必要だという事になり、この頃から入れ替わり、妹である恵美子が美沙子に成りすまして亮介の母親として生活をしていく事になりました。
こらるが、亮介が幼い頃に感じた違和感の正体でした。
【承】ユリゴコロ のあらすじ②
美佐子は小さい頃から脳にコブがあり、全く人と会話をしない子供でした。
何度も医者に連れていかれ、母親に対して医者は繰り返し「この子はユリゴコロがない」と言われた言葉を美沙子は覚えていました。
この場合のユリゴコロとは拠り所を表し、美沙子は生まれてから楽しさや幸せを感じる心が欠落していました。
美佐子は小学生の頃によく遊びに行っていた友人の家の庭にある井戸の暗闇に心を飲み込まれてしまいます。
井戸に落ちたら死ぬという恐怖に襲われた美沙子は自分の代わりに井戸に虫を落とします。
そうする事で安心感を得た美沙子は遊びに行く度に義務化されたかのように井戸に虫を落としていました。
そんなある日、井戸で友人が溺れている姿を美沙子が目撃し、友人が溺れて動かなくなる姿を見てつめ、満たされていく心と、命が消える瞬間に立ち会う事が自分のユリゴコロだと確信しました。
その後、美沙子は他の子や家族にバレないように静かにその場を去りました。
【転】ユリゴコロ のあらすじ③
美沙子は誰かを殺す事にユリゴコロを見つけ、それからは学校でも上手く世渡り出来るようになっていました。
実際は友人を殺めていますが、表向きは問題を起す事なく社会人になりました。
しかし、社会人になり職場を追い出された美沙子は娼婦になり、公園さ迷っている時に出会ったのが亮介の父親でした。
美沙子は父親の事をアナタと呼び、そんな父親は体を求める事もせず、やつれた美沙子に食事を与え、徐々に仲が深まっていきます。
しかし、他人から見たら話しかけたくないような美沙子に親切にするアナタには理由がありました。
美沙子は子供の頃に妹の帽子を取る兄に遭遇しており、そこに通りかかった男性は帽子が取りやすいように足を押さえます。
しかし、帽子にはあと少しで届かず、美沙子は手伝うフリをして男性を押し、男の子をマンホールの中に落としてしまいます。
その時の男性がアナタでした。
アナタは、男の子を死なせてしまった、手伝った女の子に傷を与えてしまったと罪の意識に苦しみます。
【結】ユリゴコロ のあらすじ④
美沙子はアナタと過ごす中、安心感、幸せ、楽しさなどの新たな感情に出会います。
そんな中、客との間に子供が出来てしまった美沙子にアナタは産んで欲しい、結婚しようと告げます。
二人は結婚し、生まれた亮介を育てる事にしました。
しかし、美沙子は過去の殺人から警察に事情聴取を受け、元の生活を忘れ幸せにはなれないて言って亮介と一緒に死のうとします。
この自殺未遂が原因で美沙子のユリゴコロの存在が恵美子に知られ、家族に抹消されてしまいます。
しかし、抹消されたはずの美沙子は生きており、亮介が経営していた店の店員である細谷さんが美沙子でした。
美沙子の両親は結局は殺す事が出来ず、美沙子に対して子供とは違う人生を歩くように言っていました。
最終的には美沙子は亮介と繋がりを持っていました。
失踪したとされていた千絵には夫がいて、その夫に暴力を受け、娼婦として働きながらお金を渡していました。
しかし、美沙子が夫を殺めた事により、千絵は解放され亮介は千絵を取り戻す事が出来ました。
全てが明るみになり、美沙子はアナタと一緒にアナタの人生を終えるための度に出ます。
そんな話を亮介から聞いた弟の洋介は「とんでもない愛の物語じゃないか」と感想を述べます。
ユリゴコロ を読んだ読書感想
ユリゴコロの表紙は見た目も暗くい感じがしましたし、ストーリー全体が歪んだ感覚が目立つ作品のように思いましたが、最後まで読み進める事によってストーリーが紐解かれていき、ようやく理解できる点が繋がるような作品だと思います。
小説の前半から母親が殺人犯という衝撃的な始まりでしたが、最後は息子のための曲がった愛情表現だったのかと思いました。
死んだと思っていた母親は一緒に働いていて、息子の婚約者のためにまた人を殺めるという点には恐怖をかんじしたが、最後の弟がとんでもない愛の物語といった所に個人的には弟も実は変なのではないかと感じるような作品でした。
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