【ネタバレ有り】猫には推理がよく似合う のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:深木章子 2016年8月にKADOKAWAから出版
猫には推理がよく似合うの主要登場人物
椿花織(つばきかおり)
田沼清吉法律事務所に勤めている唯一の事務員。引っ込み思案なところがあり、弁護士先生には猫の世話ができるということで採用された節がある。
田沼清吉(たぬませいきち)
かつては敏腕の弁護士だったが、妻を亡くしてからは細々と近隣住人たちの相談にのっているアットホームな弁護士となった。職場に妻が可愛がっていた猫ひょう太を住まわせている。
スコッティ(すこってぃ)
弁護士先生の妻が飼っていた猫で、本名はひょう太。しかし、花織はスコッティと呼んでおり、作中ではほとんどスコッティという名で話が展開されている。人間の言葉を話す推理好きな猫だが、その一面は花織にしか見せていない。
睦木弁護士(むつきべんごし)
イソ弁時代に田沼のもとでお世話になっていた。今は、刑事事件専門のやり手弁護士として活躍している女性。
猫には推理がよく似合う の簡単なあらすじ
弁護士事務所には様々な依頼が舞い込んできます。それらを楽しく推理するのが、事務所職員の椿花織と先生の愛猫スコッティ。本作にはミステリー小説ファンにはたまらない仕掛けが満載に施されており、あの有栖川有栖氏が大絶賛した作品となっています。
猫には推理がよく似合う の起承転結
【起】猫には推理がよく似合う のあらすじ①
田沼清吉法律事務所で事務員として勤務している椿花織は、見た目も地味な女性です。
前の仕事を辞めてのんびりしているところに、前任者である友人が結婚退職をするため、後釜として彼女に来ないかという声をかけたのがきっかけとなり、ここで働くこととなりました。
彼女の唯一の趣味と言えば、推理小説を読むこと。
ある日、小説に没頭していた彼女に「そんなのが面白いの」と冷ややかな一言を投げかける存在が現れます。
それは、なんとあろうことか、田沼先生が事務所で飼っている猫のスコティッシュフォールド「ひょう太」だったのです。
それ以来、先生のいないところで、一人と一匹は色んな話を咲かせます。
彼の本名は「ひょう太」ですが、二人だけの時は「スコッティ」「花織たん」と呼び合い、お互いが誰にも見せたことのない本当の自分の姿で接し合うのでした。
時には、推理好きなスコッティが考えたという密室殺人事件などが作中に紹介されていたり、何気ない風景に二人で考察したりとかけがえのない時間となるのでした。
【承】猫には推理がよく似合う のあらすじ②
田沼清吉法律事務所は小さく、先生もお歳をめされたということもあり、テレビドラマで見るような忙殺されるような事務所ではありませんでした。
基本的には裁判といったあまり労力を使わない民事事件を専門に仕事を引き受けるように先生もいつしかなっていました。
しかしながら、先生の温厚な人柄を慕った人びとが次から次へと相談にやってきます。
例えば、会社のお金を不正に使っていた事件に対する詫び状作成、ある夫婦の奥さんが浮気をして男から貰った5カラットのダイヤの指輪を証拠として預かってほしいという依頼、資産家の遺言状などでした。
それらは全て先生の部屋にある金庫の中に一斉にしまわれるのですが、先生は歳のせいかずぼらな性格で鍵の置き場も暗証番号もいい加減です。
それを見て心配する花織たち。
しかし、同時に花織とスコッティは「もし先生が殺されて、金庫の中身が盗まれたら、犯人は誰だと思う」といった推理合戦を展開してゆきます。
【転】猫には推理がよく似合う のあらすじ③
土日の休日も出勤してスコッティと過ごすようになっていた花織にも、ようやく春が訪れます。
事務所に詫び状作成の協力者として会社より派遣された若くて優しそうな男性がやってきました。
彼は大の猫好きで自宅のマンションでも猫を5匹も飼っているという有り様でした。
もちろん、猫のスコッティや彼を世話している花織とも当然意気投合するようになります。
そして、日曜日に仕事のため事務所を来訪する彼のためにお洒落をして待機していた花織にまさかの事態が発生します。
一つは、スコッティと推理合戦をしていた「先生殺しとダイヤを盗んだ犯人」として、この事務所を訪れたすべての登場人物を排除して行き詰っていた時、スコッティに「犯人は花織たんだ」と言われてしまったことです。
そして、ショックのあまりクラクラしているところに、実際に後頭部を鈍器のような物で殴られ、気を失っている間に事務所の金庫荒らしの被害に遭ってしまいます。
そんな彼女の命を救ってくれたのが仕事で事務所にやってきた彼でした。
【結】猫には推理がよく似合う のあらすじ④
駆けつけた田沼先生や警察の取り調べの結果、花織がスコッティと話していたという奇天烈な内容や彼女が前の職場をストーカーまがいの行為をし辞めざるをえなくなったこと、また彼女には狂言のような症状があるということまでわかってしまいます。
そのため、犯人は花織という結論になりかけたのですが、先生は「何が真実で何が虚構なのか」がわからず、真実を知るために昔イソ弁をさせていた睦木弁護士に助けを求めます。
彼女がじっくりと花織の話に耳を傾け、一連の事件を精査していくことで、花織を殴打して金庫を漁った犯人がわかります。
それは、彼女が好意を寄せていた彼でした。
実は会社のお金を不正に使っていたのも彼で自分に不利になることを防ごうと事務所に忍び込んでおり、誤って彼女に怪我を負わせてしまったというのです。
猫は「しょう太」として先生の姪に引き取られるのですが、彼に会いに行った睦木弁護士はの耳に、一瞬「ねぇ、花織たんはどうしているの」という声が聞こえます。
もしかしたら、スコッティは本当に話せたのではという温かくも切ないラストとなっています。
猫には推理がよく似合う を読んだ読書感想
この作品は、ファンタジーかと思いきや、本格ミステリーの要素もしっかりと組み込まれています。
例えば、弁護士事務所を訪れる依頼人たちみんなが怪しくて、花織同様犯人の絞り込み(推理)を読者も参戦するのですが、それをインテリ猫のスコッティにことごとく論破されます。
そして、なんと言っても、エピローグで書かれたスコッティの一言が、読了後に良い意味での余韻に浸らせてくれる構成となっています。
主人公の妄想が大部分だったというのではあまりにも彼女が哀れな人になってしまうところを、あの一文で救った筆者深木章子さんの力量に感服させられました。
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