【ネタバレ有り】老後の資金がありません のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:柿谷美雨 2018年3月に中央公論新社から出版
老後の資金がありませんの主要登場人物
後藤篤子(ごとうあつこ)
住宅節約しながらローンを繰り上げ返済した、しっかり者の主人公。
後藤章(ごとうあきら)
篤子の夫。人は良いがノンビリ屋。
後藤さやか(ごとうさやk)
気が弱く大人しい篤子の娘。結婚が決まり両親を安心させる。
後藤芳子(ごとうよしこ)
篤子の姑。篤子夫婦と同居してから活動的になる。
サツキ(さつき)
篤子の友人。質素倹約をモットーに生きている。夫婦でパン屋を経営。
老後の資金がありません の簡単なあらすじ
せっせと節約を重ね住宅ローンも繰り上げ返済し、二人の子供の私立大学の学費も払い終わり、気づけば手元にあるのは1,200万円の預金だけ。ただでさえ老後の資金が心配な篤子ですが、娘の結婚式費用に500万、舅の葬儀費用には400万と、羽が生えたようにお金は篤子のもとから飛んでいきます。手元の資金はアッと言う間に300万円を切ってしまい不安にかられる篤子。誰もが迎える老後について指南する家計応援小説。
老後の資金がありません の起承転結
【起】老後の資金がありません のあらすじ①
後藤篤子は夫と娘の結婚式について話し合っています。
親の目から見ても出来が良いとは言いかねる、長女の結婚が決まったので喜ばしいことなのですが、篤子は結婚式費用に600万円もかかる事が納得できません。
それなのに見栄っ張りの夫・章は半分出してやるつもりです。
フラワーアレンジメント仲間のサツキの長男は地味婚をするようで、サツキが出すお金は30万円と聞いて羨ましく思う篤子。
そんなある日、夫の妹・桜堂志々子から舅危篤の知らせが入ります。
「今夜は大丈夫でしょう」という医師の言葉に、病室をあとに志々子の家に寄った篤子夫婦。
そこで章は「父さんの葬儀は兄さんが取り仕切り、費用もすべて持ってほしい」と志々子から頼まれます。
章の両親は浅草で老舗の菓子店を引退後、浅草の土地を売り志々子夫婦の住まいの近くに平屋の家を建てましたが、数年で二人とも体が弱り高級ケアマンションへと移りました。
現在、舅は病院に入院することになり、姑・芳子はケアマンションの一人部屋に住んでいます。
土地を売った二億円は底をつき、章と志々子が毎月9万円ずつ出し合ったお金で両親は暮らしています。
篤子としては姑を志々子に引き取ってもらい、誰も住んでいない両親の家を売って葬儀費用に充ててもらいたいというのが本音でした。
結婚費用・葬儀費用だけでも頭を悩ます篤子でしたが、ある日、会社の人事課から呼び出され期間満了つまりクビを言い渡されてしまいます。
秋風が吹くころ、さやかは無事に結婚式を挙げたのですが、新婚旅行・新居の費用と篤子が貯金を取り崩した金額は結局500万円になりました。
そして、紅葉が進んだころ舅が亡くなり葬儀代と墓代として、さらに400万円が預金から出ていったのです。
【承】老後の資金がありません のあらすじ②
まだ仕事が見つからず家で掃除機をかけている篤子に章から電話があり、「俺の会社だめらしい」と衝撃の言葉を聞かされます。
夫婦そろって無職になってしまった頃、娘のさやかが夫の暴力にあっているのではないかという心配も持ち上がります。
一緒にさやかのことを心配してくれる、息子の勇人が頼りになるのが救いでした。
こんな状況のなか唯一の楽しみであるフラワーアレンジメントの教室で、篤子は美乃留という女性とお茶を飲みに行きます。
ジャガーに乗り服もバッグも高級品な美乃留と話して勉強になったと思いつつも、世界の違いを感じ惨めな気持ちにもなる篤子でした。
マンションの主婦達からは「お宅の旦那さんどこか悪いの?」と話しかけれ、監視されているような煩わしさを感じ夫の章にも報告します。
最近の篤子は先行きが不安で仕方がなく、色々な事を自分一人で抱え込むことに限界を感じていたのです。
そんなある日、篤子に幼馴染の鈴子から電話がかかってきます。
幼馴染といっても東京に出てきた篤子と、地元に残る鈴子はだんだん考え方も違ってきています。
そんな鈴子に話の流れで、さやかが麻布寿園で結婚式をしたこと、自分は見栄を張らない家庭で育ったので盛大な式に納得がいかなかったことを伝えました。
すると鈴子から「見栄を張らない家庭で育った?本気で言っているの?篤子ちゃんは誰よりも見栄っ張りなんよ」という言葉が返ってきます。
そんな事はないと言い返したかったのですが、そのまま電話を切り「見栄っ張りで何が悪い」と声に出し、少しだけスッキリした篤子でした。
【転】老後の資金がありません のあらすじ③
その日の午後、篤子は「老後の資金について」という講演を聞きに来ていました。
そこで偶然サツキ・美乃留の二人に会います。
講演では新しい情報は得られなかったものの、サツキの家で聞いた二人の話は驚くものでした。
サツキは近くに新しいベーカーリーが2軒も出来て店が危ないといい、美乃留は夫の浮気相手に子供ができてしまったので、子供のいない自分が離婚されそうだというのです。
幸せそうに見えていた二人にも色々あるのだと思う篤子でしたが、自分の身にも更に大変な事態が起こります。
月々9万円の仕送りが不可能と結論を出し、意を決し志々子に電話をかける篤子。
しかし話し合いはうまくいかず、なぜか姑を引き取ることになってしまったのです。
引き取ると宣言したものの姑が納得するか心配する篤子でしたが、意外にも姑・芳子は腹を決めていました。
「お世話になりますが、よろしくお願いします」という芳子の姿は、いつものぼんやりした様子と違うものでした。
篤子がコンビニの仕事を見つけてしばらくしたころ、芳子が夫婦のマンションに越してきます。
その日の夜、芳子は6万円の年金が振り込まれる通帳を、篤子に自由に使って欲しいと差し出します。
お小遣いが必要ではないかと心配する篤子に、「亡くなった主人の恩給が4万円入るから大丈夫」と答える芳子。
9万円の仕送りがなくなり、6万円の年金が入ってくることで金銭的に助かると素直に感謝する篤子でした。
お互い遠慮しあっていた嫁姑の関係も、本音を話したことで少しずつうまく回り始めたある日、篤子のもとにサツキから電話がかかってきます。
【結】老後の資金がありません のあらすじ④
サツキからの電話の内容は、サツキの姑の身代わりとして芳子を貸してくれないかというものでした。
入院していたと聞いていたサツキの姑が、1ヶ月以上前から行方不明だというのです。
サツキの姑は年金を貰っており、役所の人が家庭訪問に来るので、芳子に身代わりを頼んできたのでした。
篤子は断ろうと思いますが、芳子は10万円もらえるなら引き受けても良いと言います。
替え玉作戦が成功してすぐのころ、今度はサツキの従妹のお姑さんの身代わりになってほしいと頼まれます。
今回は公務員の遺族年金ということで、身代わり代は50万円です。
しかしサツキの従妹夫婦と話すうち、芳子の気が変わり手を引くことにしました。
もう身代わりは二度と引き受けないと決めた篤子でしたがサツキに泣きつかれ、今回は県会議員をしていたおじいさんの替え玉をすることになってしまいました。
身代わりはうまくいったものの、おじいさんの写真がネットに出ていることが分かります。
お礼の150万円も受け取らず、慌てて部屋を出る篤子・芳子・サツキ。
替え玉騒動も落ち着いたころ、さやかが遊びにやってきます。
子供もできて芳子からは逞しくなったと言われ、夫から暴力を受けているというのも篤子の取り越し苦労だったと分かります。
そして志々子が芳子を引き取りたいと言ってきました。
篤子と芳子が仲良くやっている姿を見て寂しくなったようです。
良いことは続くようで、章の再就職先も見つかりました。
サツキ夫婦は奄美に帰り自給自足の生活をすることになり、篤子は美乃留と二人で奄美に遊びに行くことを考え、久しぶりにウキウキした気分になるのでした。
老後の資金がありません を読んだ読書感想
最近ニュースでも話題になっている老後問題。
タイムリーな話題だと思い、この本を読み始めました。
篤子や芳子が年金詐欺の片棒を担いだのには驚きましたが、実際にそういう事件も多いのだなと関心を持ちました。
そして、お葬式・お墓代のことなど、避けて通れない問題のことについて詳しく書かれていたのが興味深かったです。
篤子は舅の葬儀・墓代に500万円かかっていますが、サツキのように簡略かしてお金のかからない葬儀の仕方もあります。
冠婚葬祭にしても、年金についても、今はネットなどで調べることができるので、自分なりに勉強するのが大事なのだと実感しました。
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