【ネタバレ有り】むらさきのスカートの女 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:今村夏子 2019年6月に朝日新聞社から出版
むらさきのスカートの女の主要登場人物
日野まゆ子(ひの まゆこ)
通称むらさきのスカートの女。
権藤(ごんどう)
この物語の語り手、「わたし」。むらさきのスカートの女が気になっている。
所長(しょちょう)
むらさきのスカートの女と不倫関係を結ぶ。
塚田チーフ(つかだちーふ)
むらさきのスカートの女の新人教育を担当する。ベテランホテル清掃スタッフ。
むらさきのスカートの女 の見どころ!
・むらさきのスカートの女が社会に出てからの変化
・「わたし」がむらさきのスカートの女に対して抱く異常なほどの執着心
・むらさきのスカートの女を巡っての周囲の混乱
むらさきのスカートの女 の簡単なあらすじ
むらさきのスカートの女は近所でも有名な風変わりな女性です。
しかし、「わたし」はむらさきのスカートの女と友達になりたいと思っていました。
ある日、「わたし」は自分の働いているホテルの清掃の仕事にむらさきのスカートの女を誘導させることに成功します。
「わたし」の予想に反して、むらさきのスカートの女は職場に馴染んでいきました。
しかし、しばらくすると、職場内でトラブルが頻発するのです。
むらさきのスカートの女 の起承転結
【起】むらさきのスカートの女 のあらすじ①
「わたし」の住む町には、「むらさきのスカートの女」と呼ばれる、風変わりな女性が住んでいました。
その名の通り、いつも紫色のスカートを履いて、髪はぼさぼさ、爪は真っ黒なのです。
むらさきのスカートの女は、近所のパン屋でクリームパンを買い、公園にある「むらさきのスカートの女専用シート」の真ん中でそれを食べるのが日課でした。
子どもたちはむらさきのスカートの女をからかって遊ぶのが好きで、女に声をかけたり、女の肩にタッチしてはすぐに逃げるということを繰り返していました。
「わたし」は長い間、むらさきのスカートの女のことが気にかかっていました。
むらさきのスカートの女のパンの食べ方や、ふとした仕草が「わたし」の姉によく似ていたのです。
しかし、「わたし」はむらさきのスカートの女に声をかけることはしませんでした。
「わたし」はいつも黄色いカーディガンを着ていたので、さしずめ「黄色いカーディガンの女」とでも呼ばれるところでしたが、「わたし」の存在感は薄く、誰も「わたし」のことは気にしていません。
「わたし」はむらさきのスカートの女の家や、就業状況なども把握していました。
むらさきのスカートの女は働いていたり働いていなかったりと、コロコロと状況が変わります。
職場もあらゆる業種を転々としているようです。
むらさきのスカートの女が働くときは、フルタイム勤務ときまっていて、いつも疲れたような顔をします。
しかし、今は働いていない時期のようで、頻繁に町でむらさきのスカートの女を見かけますし、私の見る限りでは元気そうです。
「わたし」はむらさきのスカートの女と友達になりたいと思っていました。
一番自然に友達になる方法は、むらさきのスカートの女と同じ職場で働くことです。
「わたし」は自分が清掃として働いているホテルで、むらさきのスカートの女も働くように仕向ける作戦を企てました。
公園の「むらさきのスカートの女専用シート」に、「わたし」の勤めるホテルの情報が掲載された求人情報誌をこっそり置いたのです。
それを読んだむらさきのスカートの女は三回ほどホテルとは関係のない仕事に応募してしまいましたが、その面接は全て不採用で、最終的に「わたし」の勤めるホテルに応募しました。
面接直前、「わたし」はむらさきのスカートの女が綺麗な身なりで面接に臨めるように、むらさきのスカートの女の家のドアノブに良い香りのするシャンプーの試供品の袋をかけておきました。
「わたし」のたくさんのバックアップのおかげもあり、むらさきのスカートの女は無事に面接に合格します。
【承】むらさきのスカートの女 のあらすじ②
むらさきのスカートの女の勤務が始まりました。
最初は声が小さくてやせっぽちのむらさきのスカートの女は周囲に心配されていましたが、所長との発声練習を経て、大きな声が出せるようになりました。
むらさきのスカートの女が普通に挨拶をするだけで、周囲の評価は変わりました。
むらさきのスカートの女は周囲から可愛がられるようになりました。
「わたし」はむらさきのスカートの女と仲良くなる機会を逃したまま、遠くからいつもむらさきのスカートの女のことを見守っていました。
町では子どもたちからからかいの対象になっていたむらさきのスカートの女の評価が「まじめ」「まとも」であることに、「わたし」は驚いていました。
むらさきのスカートの女が今まで仕事が長続きしてこなかったのが不思議でした。
むらさきのスカートの女は塚田チーフの元で、新人トレーニングを受けていました。
その塚田チーフからの評価も高く、むらさきのスカートの女はどんどん人気者になります。
清掃スタッフたちは、ホテルで廃棄される果物やホテルの備品をこっそりと持ち帰っていました。
むらさきのスカートの女にもそのやり方を教え、むらさきのスカートの女も次第にホテルの備品を持ち出すようになります。
むらさきのスカートの女は体力勝負な清掃の仕事で疲れているようでしたが、今までの仕事とは違って充実しているようでした。
そんな彼女の変化は、公園にいる子どもたちにも伝わったようで、今まではむらさきのスカートの女をからかっていた子どもたちと一緒に鬼ごっこをして遊ぶようになります。
ホテルから盗んできたお菓子を分けているうちに、むらさきのスカートの女は子どもたちの間で人気者になりました。
【転】むらさきのスカートの女 のあらすじ③
むらさきのスカートの女は異例のスピードで新人研修を修了し、一人前だと認められました。
塚田チーフやその他の従業員とも仲が良く、定期的に退勤後に飲みに行くようになりました。
入社後に比べて、むらさきのスカートの女は綺麗になり、髪にコシがでて、全体的にふっくらとした雰囲気をまとうようになりました。
一人前になった清掃スタッフは、基本的に仕事は一人で行います。
むらさきのスカートの女はホテルの客室清掃を行うとき、本来は禁止されているのですが、室内のカギをかけました。
そして、客室に残された食べ物を食べたり、テレビを見たり、浴槽で足湯をしたりするのです。
そんなむらさきのスカートの女にも、よくない噂が流れだしました。
妻子のいる所長と付き合っているというのです。
私は驚きましたが、それは本当でした。
むらさきのスカートの女は毎朝所長の車で通勤していました。
この噂が広まってから、清掃スタッフの間でのむらさきのスカートの女の評価は落ちていきます。
ありえない高時給を貰っているという噂が広まった矢先、ホテルの備品がバザーに出されているという情報が入ります。
バザーで売られたタオル類の数は、ホテルから紛失したものと一致しました。
そのバザーはむらさきのスカートの女の近所で、スタッフたちはむらさきの女のことを疑いますが、女が犯人だという確証はつかめませんでした。
しかし、むらさきの女が清掃中にカギをかけていることや、客室に残されているものを勝手に飲み食いしていることを同僚たちは激しく攻めたてます。
「わたし」はハラハラしながらその様子を伺っていました。
【結】むらさきのスカートの女 のあらすじ④
同僚たちから攻め立てられたむらさきのスカートの女は怒って帰ってしまいました。
心配した「わたし」がむらさきのスカートの女の家にいくと、むらさきのスカートの女と所長の言い争う声が聞こえました。
所長はむらさきのスカートの女に、ホテルの備品をバザーに出したことを責めました。
むらさきのスカートの女は否定しますが、所長は信じてくれません。
本当は、備品をバザーに出しているのは「わたし」なのですが、存在感の薄い「わたし」の行為は誰にも気づかれず、むらさきのスカートの女のやったことだと思われているのです。
所長とむらさきのスカートの女の言い争いはエスカレートし、所長は部屋を飛び出していこうとした矢先、所長はアパートの階段から足を滑らせて落ちてしまいました。
意識を失った所長を見て、むらさきのスカートの女は取り乱します。
「わたし」は今こそむらさきのスカートの女に近づくときだと感じました。
「わたし」はむらさきのスカートの女に対して所長はおそらく死んでいるから、今のうちに逃げなさいと告げます。
金銭的に困っている「わたし」はいつでも逃げられるように、駅前のコインロッカーに着替えや金を備えていました。
それをむらさきのスカートの女に教え、逃げた後は駅前のビジネスホテルで合流しようと持ち掛けます。
むらさきのスカートの女は動転したまま駆け出します。
「わたし」は急いで家に帰り、金目のものを持ち出してむらさきのスカートの女のもとへ向かいますが、むらさきのスカートの女は現れませんでした。
何日待っても、むらさきのスカートの女は行方不明のままでした。
所長は死んではいませんでした。
「わたし」は職場の同僚たちと所長のお見舞いに行きました。
むらさきの女と所長は不倫関係にあったはずなのに、むらさきのスカートの女は所長のストーカーということになっていました。
所長の説明によると、むらさきのスカートの女は所長に随分前から言い寄っていて、備品をバザーに出した件でむらさきの女を注意しに行った所長のことを、激高して突き落としたのだと言います。
「わたし」は病室から同僚たちが出ていった隙に、所長に賃上げを要求します。
なにしろ、コインロッカーに隠していた財産までもをむらさきのスカートの女に持ってかれてしまったのです。
始め、所長はそれを拒否しますが、「わたし」がむらさきのスカートの女と所長の口論を聞いていたことを指摘すると、所長はしぶしぶ認めました。
その後、むらさきのスカートの女は一切姿を現しません。
「わたし」は自分がむらさきのスカートの女になろうと決心します。
今では、「むらさきのスカートの女専用シート」には「わたし」が座っています。
むらさきのスカートの女 を読んだ読書感想
童話のような不思議な雰囲気の物語でした。
「わたし」はむらさきのスカートの女と友達になりたいだけなのに、どんどん話が展開していき、結局はむらさきのスカートの女を失ってしまいます。
「わたし」が望むものは結局なんだったのか、読み終わったあとも掴むことができませんでした。
何とも言葉にしがたい余韻の残る一冊でした。
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