「硝子のハンマー」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|貴志祐介

硝子のハンマー

【ネタバレ有り】硝子のハンマー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:貴志祐介 2004年4月に角川書店から出版

硝子のハンマーの主要登場人物

榎本径(えのもとけい)
本作の主人公で表の顔は防犯コンサルタントで、裏の顔は泥棒。密室破りを得意とし、事件解決に協力する。防犯ショップ「F&Fセキュリティショップ」を経営している。

青砥純子(あおとじゅんこ)
美人弁護士。容疑者となったベイリーフ専務の依頼で弁護を担当することとなり、過去に松戸市の密室破りを行ったという榎本の助けを借りる。

松本さやか(まつもとさやか)
ベイリーフ副社長付きの秘書。可憐な外見で、会社に隠れて劇団員としても活動している。

河村忍(かわむらしのぶ)
ベイリーフ専務付きの秘書。専務は無実だと信じている。

椎名章(しいなあきら)
ビルの清掃員、佐藤学として働いている。ベイリーフ社長殺人事件の第一発見者。

硝子のハンマー の簡単なあらすじ

介護サービス事業を手掛ける会社ベイリーフでは、株式上場を前に社員総出で休日出勤し新たな目玉として介護猿と介護ロボットのどちらを採用するか実演しながら検討していました。昼食後には社長はいつも通り昼寝し、部屋には鍵が掛かっていました。社長室直通の通路は専務と副社長室にもありますが、専務も昼寝しており、副社長は外出していたため、昼寝中に社長が殺されるまで誰も社長室に入ってはいませんでした。

硝子のハンマー の起承転結

【起】硝子のハンマー のあらすじ①

密室殺人と防犯コンサルタント

専務付き秘書の河村忍は日曜に休日出勤すると、社長秘書の伊東寛美、副社長秘書の松本さやかと共に重役達を迎えます。

株式会社ベイリーフは介護サービスを手掛けており、近々株式上場を控えていることもあり、最近では重役達の休日出勤が当たり前になっていました。

社長の潁原昭造、副社長の潁原雅樹、専務の久永篤二が揃うと新サービスの要となる介護システムを決める為の実演会が行われます。

1つは介護猿であり介護者役は忍が務め、もう1つは介護ロボット「ルピナスV」でさやかが介護者役を務めました。

昼食後、社長と専務は昼寝をし、雅樹は2時間ほど外出します。

雅樹が戻ってもまだ社長と専務は寝ており不審に思っていたところ、窓拭きの清掃員から社長が倒れていると聞かされます。

社長室に入り確認すると既に社長の脈はありませんでした。

また、社長の頭には鈍器で殴られたような傷があり殺人だと判断します。

専務以外には犯行が可能だった者がいないため、容疑者は専務の久永だけとなり勾留されてしまいます。

久永から弁護士青砥純子に依頼があり、事件を調べ始めますが警察に邪魔されて思うように調査が進みません。

このため、青砥は知り合いの弁護士から過去に松戸市の事件で密室破りに協力したという榎本を紹介され今回の事件にも協力してもらうこととします。

様々な視点から調査し推理を進めますが、なかなか専務が犯人でないという証明ができません。

秘書の忍の証言によると、昼寝していた専務に毛布をかけ固定していたが専務を起こすまで全く動いていなかったそうです。

このため、明らかに専務は犯人でないと言えそうでした。

【承】硝子のハンマー のあらすじ②

見えない殺人者

人間以外の可能性として、介護猿とルピナスVを疑いますが、どちらにも犯行はできそうにありませんでした。

介護猿は社長室へ侵入していない事が確認でき、ルピナスVには完璧なセキュリティプログラムがあるため人を傷つけるような使い方ができません。

青砥はベイリーフへ行った際、受付にいた松本さやかがあまりに綺麗であったため、まるで女優のようだと褒めると本当に女優をやっていると思わぬ返答をされます。

実はさやかは密かに劇団に所属して不定期に公演にも参加しているとのことでした。

青砥は潁原雅樹らとの会合を終えると先に帰りますが、榎本は一人残り密室殺人の方法について考えます。

実は榎本は青砥のような知的美人が好みで、自分の能力を見せつけたいという性癖がありました。

榎本は知り合いの刑事鴻野と連絡を取り、警察の実況見分結果を確認します。

すると、警察としても専務が犯行を行なったという証拠が見つからずに困っているようでした。

気になることがあったため、鴻野に1つ調査を依頼しておきます。

榎本が休憩をしてから店に戻ると青砥から真相が分かったとの連絡があります。

しかしルピナスVを使った実験では青砥の思いついた方法は使えないことが分かっただけでした。

さらに、真犯人だと疑っていた雅樹から、亡くなった昭造は脳腫瘍を患っていて余命一年しか無かったと知らされます。

また雅樹には完璧なアリバイもありました。

雅樹は新社長就任後、経理資料を見直すと不明朗な金の動きがあり元社長と専務で約6億を横領していたことが判明します。

青砥は接見時に久永に確認すると、横領を認め金は社長室にあるはずだと答えます。

榎本は社長が隠した金を確認しようとして誤って死んでしまったという仮説に辿り着き、青砥はそれが真相だと喜びます。

しかし、青砥と話しているうちにさらなる可能性を思いつき、榎本はこれは計画殺人だと言い切ります。

【転】硝子のハンマー のあらすじ③

ダイヤモンド

椎名章の父親は莫大な財産を相続した後、ハイエナのように群がる者達に騙されて投資で失敗し闇金からの借金を残して姿を消しました。

ヤクザに親の借金は子供が返すものだと脅されると章は逃げ出します。

クレカのショッピング枠で金のネックレスを買い、悪友の英夫から聞いた引きこもりの佐藤学の身分を借りることとします。

佐藤学の住所を調べ住民票を取ると原付の免許を取得します。

神社で寝泊まりしている所をヤクザに見つかりますが、英夫からもらったナイフで刺して逃げ、大阪から東京へと高速バスで移動しました。

佐藤学の身分証を使い職と住家を確保しつつ何とか東京で生活します。

最初はガラス工房で2年ほど働き、技術習得と共に給料も上がっていきます。

久しぶりに英夫に連絡を取ると、ヤクザはまだ諦めておらずしかも今住んでいる場所の近くにヤクザの事務所がある事が分かり、章はすぐに引っ越します。

次の職として渋谷ビルメンテナンスという清掃業者に入ります。

そこでの仕事中、たまたま日曜の作業時にビルの中を除くと老人がダイヤモンドを前に作業している姿が目につきます。

調べるとベイリーフという介護の会社で、部屋にいたのは社長だと分かりますが、何故ダイヤモンドを社長室で大切そうに保管しているのか気になります。

章は防犯についての知識を身につけ、ベイリーフに潜入しようと試みます。

しかし、何度か忍び込んで社長室を調べたもののなかなかダイヤモンドの隠し場所は分かりませんでした。

【結】硝子のハンマー のあらすじ④

硝子のハンマー

章は社長室に盗聴器を仕掛け、清掃作業中に盗聴をします。

すると、社長がルピナスVを起動させる音が聞こえ、その後でダイヤモンドを数えている声を聞くことが出来ました。

音声だけではありますが、遂に大きなヒントを手に入れることができます。

しかし盗み出した後のことまで考えると、社長の潁原は殺すしかないと結論づけます。

殺人方法をどうするかが最大の問題となりますが、窓ガラスこそが密室殺人を行なう武器になると閃きます。

社長室に忍び込みガラスに細工をし、また犯行時には確実に社長に眠っていてもらうために睡眠剤を入手します。

決行当日、後輩のバイクに細工をしわざと遅れて現場に着くようにしておき、章は一人でビルの屋上へ向かいます。

ゴンドラに乗り社長室前へ来ると、リモコンでカーテンを開けルピナスVを起動して社長を持ち上げます。

窓ガラスに社長の頭を押し当てさせると、章はボウリングの球で外から窓を殴ります。

大きな衝撃と共に窓ガラス全体がへこみ、社長の頭が吹っ飛びます。

証拠を始末していると後輩からもうすぐ着くと連絡が入ります。

章は後輩と合流後、何事も無かったように清掃作業を行ない社長の死体の第一発見者となります。

警察からは特に疑われることはありませんでしたが、いざダイヤモンドを手にすると全く落ち着かず、ほとんど家から離れることが出来なくなりました。

ある日、ベイリーフ専務の弁護士を務める青砥から呼び出されてバーへ行きます。

バーには榎本もおり、犯行に使ったトリックは榎本に見破られており章の部屋に忍び込んでダイヤの所在まで確認されていました。

章は追い詰められ青砥と共に自首することとなり、その流れで青砥は弁護を担当することとなります。

硝子のハンマー を読んだ読書感想

防犯探偵榎本シリーズの第1作目であり、美人弁護士青砥純子と泥棒榎本が協力して密室事件に挑みます。

前半は謎解きに挑むまで、後半は犯人の章視点で幼少期から犯行に至るまでが描かれます。

榎本は本職が泥棒ですが、青砥も薄々どころかほぼ気づいており、恋人のいない青砥は候補者として榎本を考えますが危険すぎるとすぐに考えを改めます。

榎本は青砥のことを初対面時から気に入っているようで、章も青砥と初めて会った時に美人だと言っており、青砥はかなりモテそうな感じがします。

この後、榎本と青砥の間に恋心が芽生えるのか楽しみです。

青砥は弁護士としても優秀で、たとえ弁護をする相手が犯罪者であろうときっちり仕事をしてくれます。

ただし、本作ではあまりその気配が見られませんが、実はド天然で2作目以降では青砥の面白さが目立つようになっていきます。

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