【ネタバレ有り】夢探偵フロイトーマッド・モラン連続死事件ー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:内藤了 2018年3月に小学館から出版
夢探偵フロイトーマッド・モラン連続死事件ーの主要登場人物
城崎あかね(しろさきあかね)
主人公。未来世紀大学人文学部の4年生。足りない卒業単位をおぎなうため、夢化学研究所の手伝いをすることになる。勉学があまり得意ではない。
風路亥人(かざみちかいと)
夢化学研究所の所長で、神経心理学、社会心理学、文化情報論の学者。祖父の形見である鼈甲のロイド眼鏡をかけている。通称フロイト。
森本太志(もりもとふとし)
未来世紀大学で修士課程を学ぶ、情報工学が専門のクリエイター。長身の痩躯で、通称ヲタ森。
音羽楓花(おとばねふうか)
悪夢に悩まされ、夢化学研究所に悪夢の原因解明を依頼する。
夢探偵フロイトーマッド・モラン連続死事件ー の簡単なあらすじ
未来世紀大学に通う、4年生の城崎あかねは足りない卒業単位を補うため、夢科学研究所という、夢の可視化を研究している研究所の手伝いをすることになりました。手伝い始めて数日後、とある女性から毎日同じ悪夢に悩まされているという依頼を受けたのです。その依頼を皮切りに、悪夢が人を殺す事件を解決することになるのでした。
夢探偵フロイトーマッド・モラン連続死事件ー の起承転結
【起】夢探偵フロイトーマッド・モラン連続死事件ー のあらすじ①
城崎あかねは未来世紀大学人文学部の4年生です。
彼女は未来世紀大学のキャンパスの美しさと、大学生活への憧れからに入学しました。
そんな彼女の学生生活は、お世辞にも勉学に励んでいるとは言い難く、4年生になって卒業単位が足りないことに気づきます。
困り果てたあかねは、裏庭のバラ園を歩いていた時、作業着を着た未来世紀大学の学長に出会うのでした。
当初、あかねは彼が学長だとは気づかず、卒業単位が足りないことを愚痴っていました。
あかねが話し終えると、彼は心理学者で夢科学研究所の所長である、風路亥人を尋ねるように言います。
さらに学長は、風路氏の手伝いをすれば単位が手に入ると言うのです。
半信半疑のあかねでしたが、卒業の危機に面している自分の現状を鑑みて、風路を手伝うことを決意するのでした。
夢科学研究所であかねは、フロイトこと風路と、ヲタ森こと森本と共に夢の可視化を研究することになったのです。
可視化の方法とは、研究所のサイトで睡眠時に見た夢を募り、その内容をフロイトが分析し、映像クリエイターであるヲタ森が、投稿された夢を映像化するというものでした。
あかねはそのサイトの管理を任されます。
通い始めた数日後、あかねは、友人から聞いた人を殺す悪夢の調査を、夢科学研究所で行なっていたことを知りました。
悪夢を見ていた会社員の男性が亡くなる前、男性の母親から息子の悪夢を調査してほしいと言う旨の相談受けていたのでした。
しかし、調査する前に男性は死んでしまうのでした。
公には、男性が亡くなった原因はインフルエンザによって見た幻覚で錯乱状態に陥り、自宅マンションから転落死したことになっていました。
このニュースがネットで拡散された際、自分も同じような悪夢を見るという人が何人かいたのです。
この後、男性が見た悪夢と全く同じものを何年も見続けている、という女性の相談を受けることになるのでした。
【承】夢探偵フロイトーマッド・モラン連続死事件ー のあらすじ②
人を殺す悪夢を何年にも渡って見ている女性、音羽楓花からの相談を受けることになりました。
楓花によると、この悪夢は昔から何度か見ていて、一年程前から毎日間断なく見るようになってしまったというのです。
夢の内容は、泥で酷くぬかるんだ見知らぬ山道を、化け物から逃げます。
そして、夢の終盤には必ず廃墟が現れ、そこに逃げ込んで目が醒めるというものでした。
夢科学研究所の三人は、楓花からの悪夢の情報を元に映像化して、楓花自身に追体験してもらうことで、悪夢の原因を追求しようとします。
ですが、その時から楓花の様子がおかしくなってしまったのです。
楓花の変化に気づいた3人でしたが、悪夢の原因は三人にも、楓花自身にも分かりません。
ただ、楓花は悪夢の風景に見に覚えがあるかもしれないというのでした。
その日の調査はそこで終わります。
楓花の悪夢はほかにも複数人が見るという可能性が考えられました。
そこで、この悪夢をマッド・モランの悪夢と銘打ち、夢科学研究所のサイトで多くの人に見てもらうことで、悪夢の更なる情報を集めるのでした。
するとすぐに、ほぼ同じ夢をみたことがあるという投稿が、2件サイトに寄せらました。
一つは、悪夢に出てくる廃墟の風景が全く同じで、違う点は廃墟の中の風景画のみというものです。
もう一つは、高校生の時に病死した友人が見ていた夢と同じであるというものでした。
翌日あかねは、大学内の食堂でマッド・モランの廃墟を知っているという女子学生の話を耳にします。
彼女によると、木曾の山奥にある心霊スポットと、そこにあった心霊スポットをがいた風景画に酷似していると話すのでした。
その情報を手に、あかねは研究所に向かいます。
フロイトとヲタ森の二人も、新しい情報を手にしていました。
新しい情報は、巨大な蛇から逃げる人を俯瞰で見ている夢に関するものです。
しかしまだ、情報は足りません。
三人はその後も、調査を継続するのでした。
【転】夢探偵フロイトーマッド・モラン連続死事件ー のあらすじ③
フロイトは新たな情報を得るために、悪夢の風景を画像にしてサイトに投稿することにしました。
ヲタ森が作成した画像を投稿した夜、食堂にいた女子学生から木曾の心霊スポットにあった風景画とよく似ていると連絡が来たのでした。
しかし、翌日女子学生から、廃墟の心霊スポットに一緒に行った兄に詳しい場所を聞き出すことができなかった、と連絡が来たのでした。
けれども、調査を続けるうちに、実際にマッド・モランの悪夢を見た人物を四名に絞ることができました。
さらに、四名全員の年齢層を特定するに至ったのでした。
その中の一人のユカリという女性に連絡を取ろうとしたとき、彼女からSOSが届いたのでした。
あかねの機転により彼女は助かりましたが、悪夢のせいで精神的に患ってしまい、衰弱死する寸前だったのです。
また、ユカリの母親から、悪夢についての情報を得ることができました。
ユカリだけでなく彼女の息子も同じような悪夢に悩まされていたというのです。
彼は悪夢の原因に薄々感づいていたようでした。
彼曰く、幼いころに目撃した土砂災害が悪夢の原因だというのです。
その土砂災害とは二十一年前に発生した大規模な災害で何人もの死者が出たものでした。
そんな中、風景画を投稿した日から連絡が取れずにいた、楓花からマッド・モランの廃墟の写真が送られてきたのでした。
写真を調べると、信濃の大滝村という場所だということが判明します。
翌日、フロイトとあかねの二人で大滝村まで楓花を追いかけることになったのです。
大滝村に着いてすぐ村民に廃墟について聞きこみます。
そうして、廃墟が「光里の家」という社会法人の施設だと明らかになりました。
村民に廃墟の場所を聞いて早速向かうのでした。
建物の調査を始めた二人でしたが、内部を探索するうちに、冷たくなった楓花の遺体を発見してしまったのです。
【結】夢探偵フロイトーマッド・モラン連続死事件ー のあらすじ④
楓花の死によって、地元の警察も動き始めたのでした。
需要参考人となったフロイトとあかねは、夢科学研究所と楓花の悪夢、これまで調べたことを警察に打ち明けます。
二人を担当した刑事は、楓花の死の真相とマッド・モランの調査のために、夢科学研究所に情報提供をするのでした。
警察の助力によってさまざまな真相が明らかになったのです。
マッド・モランの悪夢を見た四人は、皆「光里の家」、またはその近辺で土砂災害を経験したのでした。
警察が、「光里の家」の名簿を提供してくれたことで明らかにななったのです。
当時まだ幼かった彼らは、記憶には残らなくてもトラウマとして心に強く焼き付いてしまったのでした。
大人になってから見た土砂災害のニュースでそのトラウマが呼び起こされて、マッド・モランの悪夢になったのです。
ではなぜ、楓花は廃墟に向かったのでしょうか。
それは、「光里の家」が隠していた別の真実が原因でした。
「光里の家」はもともと結核を治療するためのサナトリウムとして利用されていました。
それを、買い取って病気の子どものための治療施設として再利用し始めたのです。
しかし、治療施設以外の別の顔も持っていました。
それは、子どもを捨てたい親から子どもを引き取って、別の人の元へ受け渡すという、人身売買にも似たことを行っていたのでした。
楓花は昔、捨てられた子どもとして、「光里の家」にいたのです。
土砂災害があった日、捨てられた子どもたちは、その大半が救助されることなく土砂に埋まり、死んでしまったのでした。
楓花はその事実に気づいてしまい、かつての家族がいたところで、共に眠ることを選んだというのが、彼女の死の真相です。
マッド・モラン飲み込んだ、すべての真相を知ったあかねは、楓花の死と、見捨てられた子どもの悲しみを悼み涙を零すのでした。
夢探偵フロイトーマッド・モラン連続死事件ー を読んだ読書感想
夢探偵フロイトは、まずタイトルに惹かれました。
心霊探偵や超能力探偵など、特殊な能力を使い謎を解く探偵たちはあまりに非現実的で、いかにもエンタメという感じがして個人的に好きなのです。
夢探偵フロイトは、特殊な能力を使うわけではありませんが、夢から謎を解くという、現実では困難な切り口で謎を解きます。
しかし、夢を解析する方法は、現実的であり得そうだと思いました。
作中の登場人物も、現実にいそうな人物ばかりで場面を想像しやすいので、あまり本を読まない人でも楽しめる、良いエンタメ小説ではないかと思います。
内藤了さんの他の作品も同じように、取っ付きやすいキャラクターが魅力的です。
特に、主人公の女性は、努めて普通の人物にしているように感じます。
それが内藤さんの魅力であり、小説により一層の魅力を与えるエッセンスではないかと思うのです。
夢や心理学などに興味がある方はご一読してみてはいかがでしょうか。
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