【ネタバレ有り】星影のステラ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:林真理子 1985年2月に角川書店から出版
星影のステラの主要登場人物
崎山富美子(さきやまふみこ)
ヒロイン。20歳。専門学校を卒業後にデザイナーを目指して働く。
ステラ(すてら)
静岡県浜松市出身の24歳。ファッションメーカー「ライト・ゼネレーション」を退職して現在は無職。
滝田省三(たきだしょうぞう)
ステラの元上司。ライト・ゼネレーションの社長。
葉子(ようこ)
文化学院を出た後に参宮橋で喫茶店を経営する。
今日子(きょうこ)
富美子の同僚。デザイナー見習い。
星影のステラ の簡単なあらすじ
崎山富美子は高校を出てから専門学校でデザインを学んで、小さなスタジオで見習いとして働き始めます。ある時に行きつけの喫茶店で紹介されたのは、ステラというニックネームで親しまれている年上の女性です。ステラの不思議な魅力のとりこになっていく富美子は、間借りしている手狭なアパートに泊めてあげてただひたすらに彼女に身を捧げるのでした。
星影のステラ の起承転結
【起】星影のステラ のあらすじ①
崎山富美子は地方の高校を卒業した後に上京して、原宿にある専門学校に通い始めました。
渋谷の小さなデザイン会社「アワーアート」に就職が決まると、中堅どころのスーパーのチラシを作る仕事を任されます。
富美子がその女性と会ったのは東京に来てから3年が過ぎようとしていたある日のことで、場所は無名のモデルやシナリオライターばかりが集まる参宮橋駅前に店を構える喫茶店です。
ジャズのスタンダード・ナンバー「星影のステラ」に因んで、彼女はみんなからステラと呼ばれていました。
スタイリストの仕事を辞めたばかりで時間があり余っているステラに誘われて、富美子は新宿のライブハウスにジャズバンドの演奏を聞きに行きます。
イッセイのブランドを身につけてミュージシャンと親し気に会話をしているステラは、富美子からすると余りにも遠い存在です。
そんな気後れしている富美子のことをステラは「友だち」として紹介してくれたために、すっかり舞い上がってしまいました。
【承】星影のステラ のあらすじ②
ステラは静岡県浜松市でホテルを経営している裕福な両親に育てられましたが、大学生の時に無理やりお見合いをさせられそうになって地元を飛び出してきました。
「ライト・ゼネレーション」という有名なファッションメーカーで、社長の滝田省三のもとで企画からスタイリングまで全てを独りでこなしますが、手柄は全て彼に独り占めにされてしまいます。
ケンカの末に着の身着のままで飛び出してきたために、会社が用意してくれた青山のマンションにも浜松の実家に帰ることもできません。
行く当てがない彼女は、参宮橋の喫茶店のマスター・葉子の家や知り合いのデザイナー・ゆかりの下宿先を泊まり歩く毎日です。
イッセイの服を着てジャズシンガーと親し気に口を聞くステラにすっかり夢中になってしまった富美子は、自分のアパートに彼女を招待します。
その日の夜に泊まっていった彼女は次の日になると身の回りのものを運び入れるようになり、落ち着き先が決まるまで富美子の家に住むことになりました。
【転】星影のステラ のあらすじ③
ステラは富美子がクローゼットにしまっている洋服を、「つまんないもの」とバッサリと切り捨てました。
ゆるくパーマをかけた富美子のショートカットも、ステラの手によって短く刈り込んだ大胆なヘアースタイルに生まれ変わります。
新しい髪形にステラのイッセイを借りた富美子が出勤すると、たちまち職場の同僚たちは大騒ぎです。
隣の席に座っていたデザイナーの今日子に事情を説明すると、彼女はステラに興味津々でした。
仕事終わりに3人で飲みに行くことになり、参宮橋駅の近くの酒場に入ります。
予想に反してステラとは初対面で打ち解けていき、今日子もあっという間に彼女に魅せられてしまったようです。
富美子に負けじと何くれとなくステラの世話を焼くようになり、美大出身というアドバンテージを生かしてスタイリストの仕事を回し始めます。
富美子はステラを後から来た他人に取られてしまったような気がして、余り面白くありません。
その上ステラは家賃も払わずに居候を続けているために、富美子の不満はたまっていく一方です。
【結】星影のステラ のあらすじ④
今日子の友だちに頼まれてファッションショーのスタイリストを担当することになったステラを、富美子はアパートの窓から見送っていました。
アスファルトの上を歩くステラは初めて会った日と同じ黒いイッセイの服を着ていて、それに比べると赤い花柄のパジャマ姿の富美子は自分のことを滑稽で惨めな存在に感じてしまいます。
ふたりの共同生活の終わりが決定的となったのは、それから半月ほどした夏の夜のことです。
給料日前で小銭しか持っていなかった富美子は、外食を控えて冷蔵庫に残っていた1個の卵を使って料理をしようと考えていました。
その1個の卵を、ステラは勝手に目玉焼きにして食べてしまいます。
口論の末にゆかりのところに行ったステラは、1度荷物を取りに戻っただけでそれ以降は姿を見せることはありません。
富美子の部屋に残ったのは、彼女が残していったブルーのストッキングと人口ダイヤのイヤリングの片方だけです。
部屋を掃除しているときにステラの忘れ物を見つけた富美子は、ラジオから流れてきた「星影のステラ」を聞いて目に涙を浮かべるのでした。
星影のステラ を読んだ読書感想
エッセイストとして活躍していた林真理子が、小説家としてのデビュー作でいきなり直木賞候補となった作品です。
何かを期待して田舎から都会に出てきたばかりのヒロインの崎山富美子の、野暮ったい一面も不思議と憎むことができません。
ある日突然に目の前に現れたイッセイのブランドを着こなして業界人と打ち解けるステラに、瞬く間に夢中になってしまう様子も微笑ましく映りました。
ふたりがつかの間一緒に過ごすことになる、6畳一間の代々木のアパートも心地よく感じてしまいます。
やがては訪れる共同生活の終わりとともに、クライマックスで「星影のステラ」が流れるシーンにはほろりとさせられました。
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