「葡萄が目にしみる」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|林真理子

「葡萄が目にしみる」

【ネタバレ有り】葡萄が目にしみる のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:林真理子 1984年11月に角川書店から出版

葡萄が目にしみるの主要登場人物

岡崎乃里子(おかざきのりこ)
ヒロイン。実家のブドウづくりを手伝いながら高校に通う。

祐子(ゆうこ)
乃里子の友人。 高校3年間で同じクラス。

菊代(きくよ)
乃里子の1年の時のクラスメート。

保坂(ほさか)
乃里子の2歳年上の先輩。 生徒会書記長。

岩永健男(いわながたけお)
乃里子の3年生の時のクラスメート。 ラグビー部員。

葡萄が目にしみる の簡単なあらすじ

岡崎乃里子が生まれ育ったのは山に囲まれた田舎町で、実家は種なしブドウをつくる農家です。地元でも有名な進学校に進学した乃里子は、親友との時間や放送部での活動を通して次第に東京への漠然とした憧れを抱いていきます。大学を卒業した後にアナウンサーとしてキャリアを積んでいく彼女は、思わぬ人との再会を果たすのでした。

葡萄が目にしみる の起承転結

【起】葡萄が目にしみる のあらすじ①

ブドウの中から桃の上へ

東京から急行列車で2時間くらい離れた場所にある、山に囲まれた町で岡崎乃里子は生まれました。

両親はブドウの栽培で収入を得ている比較的に裕福な農業従事者で、乃里子も県内で名門の1つと言われている弘明館高校へ進学します。

弘明館は桃畑に囲まれた丘の上にあり、ブドウ地帯にある乃里子の家からは自転車で通学が可能な距離です。

入学早々に仲良くなったふたりの女の子は、まるっきり正反対のタイプでした。

裕子は越境入学してきた奥手でおとなしい性格で、菊代は早口でよく喋りスポーツが得意で男子からも人気があります。

クラスと担任の先生が決まった途端に、乃里子は放送委員に任命されました。

新入生の間は大した仕事はできませんでしたが、昼休みにマイクに向かってスピーカーから自分の声が聞こえてくるだけでうれしくなります。

生徒会からの伝達をメモ用紙に纏めて、毎日のように放送室へやって来るのが書記長の保坂です。

生徒会の活動だけでなくウエイトリフティング部の有力選手である彼とは、自然と言葉を交わす機会が多くなりました。

【承】葡萄が目にしみる のあらすじ②

憧れの先輩への届かぬ思い

夏休みが終わって9月に入ると3年生はクラブ活動や生徒会から距離を置いて勉強に集中するために、 保坂も以前のように放送室にぶらりと現れることはありません。

乃里子は深夜のラジオ放送にはまり始めて、昼休みにはディスクジョッキーの真似事をして部員たちで作った番組を流すようになりました。

3年生の教室のどこかで自分の声を聞いてくれているであろう、保坂の顔を思い浮かべながらマイクに語りかけています。

乃里子が憧れの先輩への思いを相談する相手は、菊代と祐子です。

菊代は応援部の3年生で、地元の自動車販売会社への内定が決まっている先輩と毎日のように会う仲になっていました。

祐子にも気になる異性がいるようでしたが、内気な彼女は相手の名前までは教えてくれません。

菊代と祐子のアドバイスに従ってラブレターを書いて、ふたりに保坂のもとへ届けてもらいます。

保坂が2年前からひそかに付き合っていた隣町の女子高生と妊娠騒ぎを起こしたのは、卒業間際の3学期のことです。

【転】葡萄が目にしみる のあらすじ③

ラグビースターの本命彼女

3年生になった乃里子は、ラグビー部のエースである岩橋健男という生徒の隣の席になりました。

その年の正月に花園ラグビー場で行われた全国大会で活躍した岩橋は学校中の人気者でしたが、乃里子は始業式の日に些細ないざこざを起こして以来彼と口を利くことはありません。

3年になってからはクラスは違いますが相変わらず交流が続いている菊代から、 岩橋の知られていない過去を聞きます。

岩橋の家がブドウを入れる竹のかごを作っている農家であること、あまり裕福な家庭ではなく母親が東京から来た商人と駆け落ちしたこと、年の離れた姉が母親代わりに彼の面倒を見ていること。

やがて乃里子は東京の駿河台にある共学の大学に合格して、岩橋はスポーツ推薦で早稲田大学への入学が決まりました。

同じ東京への進学組ながらもまるで接点のないふたりは、卒業式の3日前に偶然にも列車の中で鉢合わせします。

岩橋の隣に彼女として寄り添っていたのは、女子大の英文科に進む祐子です。

ショックを受けた乃里子は祐子が列車を降りる瞬間に、「裏切り者」と叫びました。

【結】葡萄が目にしみる のあらすじ④

再会のブドウ酒

大学でも放送研究会に入部した乃里子は、サークルの部長からラジオ局のアルバイトを紹介してもらいました。

卒業後に放送局に就職して、パーソナリティーとして長寿番組を担当します。

幅広いジャンルでの仕事をするためにフリーアナウンサーになることを決意したのは、乃里子が30歳を越えた頃です。

送別会は六本木にある芸能関係者の御用達のお店で行われることになり、そこで乃里子は大沢美弥子という女性と意気投合しました。

送別会も二次会、三次会と流れていくうちに乃里子はいつの間にか美弥子とふたりっきりで飲んでいます。

建築家の夫と優雅な暮らしを送っている彼女と、1年前まで恋愛関係にあったのが岩橋です。

大学を出て一流の広告代理店に勤務している岩橋は、 地元の友人とは交わることはありません。

それから数日後に美弥子に連れられて、乃里子は10数年ぶりに岩橋と青山のレストランで再会します。

美弥子と岩橋はカクテルで、乃里子はシェリーというスペインのブドウ酒で乾杯した後に高校時代の思い出話に花を咲かせるのでした。

葡萄が目にしみる を読んだ読書感想

豊かな自然に包まれたブドウ畑と、 一度しかない青春を楽しむヒロインの岡崎乃里子の姿がみずみずしく描かれていました。

東京へ出荷するブドウは「ジベ液」と呼ばれる薬品で実の中の種を消し去るのに、自分たちは無農薬の種があるブドウを食べているシーンが印象深かったです。

見栄えばかりを気にする都会人と、ありのままを大切にする地方生活者とのコントラストが浮かび上がっています。

純朴だったはずの乃里子が東京へ憧れていき、田舎町から抜け出すために上京を決意する場面が切ないです。

地元を捨てたふたりの男女が、偶然にも巡り合うラストも心に残りました。

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