【ネタバレ有り】桐島、部活やめるってよ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:朝井リョウ 2010年2月に集英社から出版
桐島、部活やめるってよの主要登場人物
小泉風助(こいずみふうすけ)
バレー部員。桐島の代わりに試合に出場する。
沢島亜矢(さわじまあや)
ブラスバンド部の部長。
前田涼也(まえだりょうや)
映画部に所属。高校生映画コンクールで特別賞を受賞する。
宮部実果(みやべみか)
ソフトボール部員。バレー部の副キャプテンと付き合っている。
菊池宏樹(きくちひろき)
野球部の幽霊部員。
桐島、部活やめるってよ の簡単なあらすじ
とある田舎町にある県立高校で、ある日突然に衝撃的なニュースが生徒たちの間を駆け回ります。バレー部のしっかり者のキャプテンとして有名な桐島が、部活を辞めるといううわさ話です。その影響は残されたバレー部のメンバーや彼の友人に彼女ばかりではなく、直接的には面識のない文科系の部員たちにも及ぼし始めていくのでした。
桐島、部活やめるってよ の起承転結
【起】桐島、部活やめるってよ のあらすじ①
バレー部のキャプテン・桐島がある日突然に部活に来なくなったために、小泉風助は次の試合に彼の代わりにリベロとして出場することになりました。風助はパスと対人レシーブの練習はいつも桐島とペアを組んでいたために、別のメンバーのところに入れてもらいます。風助は身長こそ低いものの運動神経には恵まれていましたが、リベロとしては桐島に到底敵いません。小学生からバレーをやっていたという桐島は優秀な選手でありリーダーシップも発揮してチームを纏め上げていましたが、周りに遠慮することなく少し言葉がキツイのが玉に瑕です。
副キャプテンはここ最近はイライラしてばかりで、1年生の頃のように桐島と談笑することもなく部活終わりに一緒にカラオケに繰り出すこともありません。
桐島抜きで挑むことになった試合当日、相手チームに圧倒されっぱなしで点差も開いています。風助は桐島が戻ってくるまでの間は、何とか自分がボールを繋ごうとコートの中を跳び跳ねていました。
【承】桐島、部活やめるってよ のあらすじ②
沢島亜矢はブラスバンド部の部長としてコンクールに臨んでいましたが、練習に集中することが出来ません。
放課後にグラウンドのバスケットゴールで遊んでいる、ある男子生徒のことが気になっていたからです。
彼は桐島と仲が良くて、バレー部の練習が終わるのを待つ間にバスケで時間を潰すのが恒例になっています。
桐島は部活を辞めたようで、亜矢は音楽室から誰もいないバスケットゴールを眺めるばかりでした。
前田涼也は映画甲子園で特別賞に輝き表彰されましたが、バレー部などの運動部と比べるとステージの上では浮いていました。
教室でも目立たない涼也は、休み時間には同じ映画部の友達とキネマ旬報を読んだり女優の話をするばかりです。青春ドラマを制作中の映画部はバレー部の練習風景を撮影することになり、涼也たちはカメラを持って体育館に入ります。
桐島がいるうちは毎日のように体育館を使っていたバレー部も、今ではバドミントン部と交代で使っているためその姿はありません。
【転】桐島、部活やめるってよ のあらすじ③
宮部実果はソフトボール部の練習が終わった後は、バレー部の副キャプテンを務めている彼氏を待って時間を潰していました。
彼は桐島が部活に行かなくなってからはバレー部の中心選手となっていたために、この頃では構ってくれません。
更には来週の日曜日のデートの時にカレーライスを食べるのかハヤシライスを食べるのかで揉めてしまい、些細なケンカはそのまま別れ話にまで発展しています。
カレーはカオリの大好物だったために、実果は余り食べたくありません。
カオリというのは母が1回目の結婚相手との間に授かった女の子の名前で、彼女が交通事故で亡くなったのは1年前のことです。
血の繋がったただ1人の娘の死を受け入れられない母は、それ以来再婚相手の連れ子である実果のことを「カオリ」として認識するようになってしまいました。
実果は久しぶりに早い時間帯に帰宅して、本当はハヤシライスの方が良かったのですがカオリが好きだった母の手作りカレーを食べます。
【結】桐島、部活やめるってよ のあらすじ④
菊池宏樹はクラスでも「上」のグループにいて、お洒落で目立つ仲間と可愛い彼女に囲まれて上手くやっていました。
高校入学と同時に入部した野球部は今ではすっかりサボりがちになっていましたが、スポーツは得意なために試合になると毎回キャプテンに呼ばれています。
いつものように放課後に向かった先は、野球部員たちが練習するグラウンドではなく気の合う友達が集まるバスケットゴールの下です。
桐島のバレー部での練習が終わるまでここでバスケをするのが日課になっていましたが、彼が部活を辞めたために今日はカラオケに行くことになりました。
桐島が熱くなり過ぎてバレー部のみんなから嫌われ役になったという話を聞いて、宏樹は何故かイライラしてしまいます。
宏樹は本気で野球に取り組んで、失敗してしまうことが怖かったからです。
自分と違って本気でバレーに立ち向かってきた桐島に、宏樹は「お前はやり直せるよ」と声をかけてやることを決意するのでした。
桐島、部活やめるってよ を読んだ読書感想
バレー部の中心プレイヤーの突然の退部をきっかけにして、静かに波紋が広がっていくような高校内の人間模様が丁寧に描かれていました。
サッカー部や野球部の花形選手やクラスの人気者ばかりではなく、普段は目立つことのない映画部員にまでスポットライトが当てられていて共感できました。
3年間の高校生活において自ずから形成されていくヒエラルキーや、お互いに抱えているコンプレックスや無い物ねだりがほろ苦いです。
主人公であるはずの「桐島」が最後まで登場することのない異色の青春小説でもあり、群像劇としても斬新な味わいでした。
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