【ネタバレ有り】愛なき世界 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:三浦しをん 2018年9月に中央公論新社から出版
愛なき世界の主要登場人物
藤丸 陽太(ふじまる ようた)
主人公 洋食屋「円服亭(えんぷくてい)」の住み込み店員。22〜23歳。
円谷 正一(つぶらや しょういち)
円服亭店主。70歳ぐらい。頑固そうな痩身の料理一徹、はなちゃんと同棲中。
松田 賢三郎(まつだ けんざぶろう)
T大学生物科学教授。
本村 紗英(もとむら さえ)
ヒロイン。松田研究室院生。変な柄のTシャツを愛用。葉っぱの研究をしている。
中岡(なかおか)
松田研究室、秘書。女性。
川井(かわい)
松田研究室、助教。男性。30歳前後。
岩間(いわま)
松田研究室、ポスドク。女性。20歳代後半。
加藤(かとう)
松田研究室、院生。男性。サボテンのとげの研究をしている。
諸岡 悟平(もろおか ごへい)
定年まであと数年の教授。イモの研究をしている。
愛なき世界 の簡単なあらすじ
洋食屋「円服亭」の住み込み店員、藤丸は、店主円谷にしごかれながら、円服亭の味を習得すべく修行中。配達先のT大松田研究室で、出会った本村に恋をするも、本村は、愛のない世界を生きる植物の研究にすべてを捧げるときめている。藤丸は本村に告白してふられるも、一途に植物の研究をしている本村を知れば知るほど好きになる。円服亭と松田研究室を舞台に、見た目が殺し屋の教授、サボテンを巨大化させる後輩男子など、変り者たちに囲まれながら、藤丸の恋は、本村の研究は成就するのか?
愛なき世界 の起承転結
【起】愛なき世界 のあらすじ①
洋食屋「円服亭」は、東京都文京区本郷の高台、ちょうど国立T大学の赤門の向かいあたり、本郷通りから細い道にちょっと入ったところにあります。
住み込み店員の藤丸と、頑固かついい加減という困った性格の店主、円谷の2人、昼時ともなれば、幅広い年齢層で満員となる店です。
藤丸は、円谷の厳しい指導のもと、ほれ込んだ円服亭の味を習得すべく、充実した日々を送っています。
ある日、円谷がうきうき空色の自転車に乗ってきて、デリバリーを始めることになります。
常連の松田教授の依頼で、松田研究室へデリバリーを届けます。
ドアが開かず困っているところに現れたのは本村が現れます。
藤丸はその女性に見覚えがあり、さりげない気遣いをするのが印象的だったのです。
松田研究室には、松田教授はじめ、植物学を研究する、個性的な面々がそろっています。
藤丸は植物学に興味をもちます。
松田研究室では10日に一度は宅配を頼んでくれるので、藤丸は少しずつ本村たちと打ち解けてきます。
ある日、藤丸は本村から葉っぱの研究について教えてもらい、シロイヌナズナの葉っぱを顕微鏡でみせてもらいます。
藤丸は美しい細胞にも感動し、顕微鏡をのぞく本村にも心惹かれるのでした。
店に戻った藤丸は、円谷に浮ついた気持ちで研究の邪魔をするなと注意されるも、松田研究室からの注文を心待ちにするのでした。
藤丸は、芽を出したシロイヌナズナを見るため、栽培室を本村に案内してもらい、一心にシロイヌナズナをみつめる本村に、「好きです」と告白するのでした。
返事はもらえぬままも、元気のない藤丸を、円谷と円服亭の常連客はフラ丸とからかいつつ、励ますのでした。
告白から3日後、本村から電話があり、告白の返事をしたいと誘われ、藤丸は顕微鏡室に行きます。
藤丸は、顕微鏡をみて、核分裂の核が光るのを、無数の星のようだと感動します。
そして、藤丸は本村から「思いにこたえることはできません」と告げられ断られるのでした。
本村は言う、「愛のない世界を生きる植物の研究に、すべてを捧げると決めています。
だれともつきあうことはできないし、しないのです。」
藤丸は「わかりました」と答えました。
しかし、本村も、植物の研究も謎に満ちているから、ますます知りたくなり、これからも観察し続けようと決意するのでした。
【承】愛なき世界 のあらすじ②
【本村について】本村は学部の4年間はT大でなはい私立大学で大腸菌を研究していました。
しかし本村は幼いころから植物が好きでした。
大腸菌ではなく、長年好きだった植物を通して生命について研究したいという思いを抑えがたくなり、迷いつつも大学院に行くことを決めました。
大学院進学を両親に頼み込み、植物学を専攻できる院を調べ、松田研究室に白羽の矢を立てました。
「ごめんね、お母さん。
私は植物と結婚したんです。」
両親に悪いと思いつつも、本村は後悔はしていません。
アパートでパキラやポンセチアなどの植物を育て、掃除洗濯を日曜日にし、適当な自炊と化粧もときどきわすれつつ、日々、研究に没頭しています。
【イモ掘り】ある日、松田研究室に諸岡教授がやってきます。
温室を占領している代わりに、イモ掘りを手伝うことになります。
円服亭の食器を回収に来ていた藤丸も居合わせ、松田研究室のメンバーと藤丸とイモ掘りをすることになるのでした。
【本村の研究とスイートポテトとラッパイチョウ】本村は、シロイヌナズナの研究で、栽培室に籠もり、ひたすら種をとっていると、おかしくなっているようで、皆に心配され、ラッパのように丸まるイチョウの葉を見に行きます。
そこに藤丸がスイートポテトを持ってきます。
二人でイチョウをみて、語り合うのでした。
【学生実習】学生実習がおこなわれるようになり、松田研究室で卒業研究をしたいという学生を獲得するため、松田研究室は、頑張るが、松田教授がアロハを着たりして、新たな学生はこなかったが、本村達には気分転換になったようです。
【大掃除とサボテンと忘年会】本村が年末の大掃除の手伝いに温室へ行くと、藤丸がいました。
加藤があげたサボテンの元気がなくなったので相談に来て、大掃除を手伝っていたところでした。
サボテン愛好家の加藤は、的確なアドバイスをし、うれしそうにサボテンについて語るのでした。
その日の夜の忘年会は円服亭で行われ、円谷含め、藤丸、松田研究室メンバーと楽しい忘年会を過ごすのでした。
【川井さんのボルネオ行きと松田先生】本村がお正月の帰省から帰ってくると、松田教授の様子がおかしいと川井が言ってきます。
川井のボルネオ行きを心配してのことでした。
川井が松田につめよる場面に居合わせた本村は、松田から同僚がなくなったときのこと、松田が責任を感じていることを聞かされるのでした。
【転】愛なき世界 のあらすじ③
本村はいつものようにイロイヌナズナの栽培をしています。
そのなかで葉っぱの大きい芽を発見し、四重変異体ができなのではないかと喜びます。
しかし、今後の実験方法の確認で過去の論文を読み返し、実験の手順を整理したところ、一番はじめの実験に選ぶ遺伝子を取り間違えていたことに気づきます。
本村は初歩の間違いをだれにも言えず悶々と過ごしますが、研究室の皆は本村が元気がないことに気づいています。
川井、岩間、加藤から飲みに誘われ、円服亭に行き、藤丸の前でミスを打ち明けることが出来たのでした。
翌日、松田教授にもうちあけ、研究を続けることで方針が決まり、藤丸にタッパーを返しに行くのでした。
3月に川井がボルネオに旅立ち、本村は研究を順調に進めます。
藤丸は本村から夏のセミナーの50人分の2日分のお昼のお弁当を2日目の夕方からの打ち上げの料理を頼まれます。
4月になり、松田研究室の少しの変化は、松田がたまにアロハシャツを着るようになったことです。
そして川井も無事に帰ってきました。
そして本村の実験も最終段階、DNAの確認のをしているところに、お弁当の相談にきた藤丸がやってきます。
藤丸が見守る前で機械にスイッチをいれると、結果は成功でした。
二人でぴょんぴょん飛び跳ねて喜びます。
そして、「俺、やっぱり本村さんのことが好きです」と、藤丸は静かに告げました。
そして、「すみません」と、本村も同じように静かに答えます。
「たったいま、確信したところです。
私は、藤丸さんの思いには応えられません」
【結】愛なき世界 のあらすじ④
円服亭では、藤丸は全くうちあけなかったものの、雰囲気の変化をかぎ取った店主円谷と常連客に、フラフラ丸と命名されつつ、会議と称した飲み会ではげまされました。
藤丸は、本村に恋をしたころと後悔はしていないのでした。
その後、藤丸は淡々を生活を送り、本村ともこれまで通り接していました。
本村への思いがさめることはないまま、本村はセミナーの準備、藤丸はセミナーの注文の準備をすすめます。
合同セミナーの2日分のお弁当と2目の打ち上げの料理の準備をすすめます。
合同セミナー1日目、お弁当は和風。
お弁当の配達に行った藤丸は、岩間と遠距離恋愛中の彼氏との微妙な距離感を感じます。
藤丸は本村と植物について話して帰るのでした。
合同セミナー2日目、円服亭では夜も明けきらぬうちから、お弁当の大量のサンドイッチを作っています。
本村の発表に間に合った藤丸は、ちらほらわかる部分があることにうれしくなり、質問が寄せられたころに、感無量となりました。
周りを見回すと、松田教授や加藤が昨日と同じ席に座る中、昨日と違う席に座る岩間が彼氏と離れた席に座っているのに気づきました。
発表が終わった本村は、質問者に囲まれていたため、藤丸は話しをせぬまま、打ち上げの料理の準備にはいります。
そこに岩間が通りかかり、先日の2度目の告白を岩間が聞いていたことを知らされます。
岩間が「藤丸くんの気持ちに応えずに、好意を利用してるようなもんでしょ」といっているところを、本村が聞いてしまっていた。
岩間は八つ当たりだったと後悔する。
藤丸は岩間さんの気持ちはわかっていると伝え、謝ってくるという岩間を見送ります。
打ち上げの料理は公表で、岩間は本村と仲直りできたとのこと、料理がひと段落し、安堵した藤丸は、談笑する皆をみて、胸を熱くするのでした。
片付け中の藤丸の元にやったきた本村、気まずい感じの本村に、藤丸は言う、「植物は光合成をして生き、その植物を食べて動物は生き、その動物を食べて生きる動物もいて…。
結局地球上の生物はみんな、光を食べて生きている」と。
微笑む本村、「ありがとうございます。
藤丸さん」円谷の待つ円服亭に帰った藤丸は、生き物の仕組みについて考えながら、幸せな眠りにつくのでした。
愛なき世界 を読んだ読書感想
円服亭と松田研究室、個性的な登場人物とおいしそうな料理がそろっています。
三浦しをんさんの小説は、いろいろ映像化されていますが、これも映像化が楽しみな小説だなと思いました。
私はサボテン大好きな加藤くんが一番好きです。
映画化されたら加藤くんはだれがいいかなあなどと考えつつ読み進めます。
藤丸の恋も本村の研究も少しずつ少しずつすすんでいきます。
愛に興味がない本村も、2度告白するも、見守り続ける藤丸も、じれったいなあと思いますが、草食男子というよりもはや草。
これは本村が好きなやつじゃないのかと思われます。
劇的な結末はありませんが、はなちゃんと円谷の楽しそうな老後も、友人の死を引きずる松田教授も、遠距離恋愛が破局した岩間も、みんなみんな幸せになってほしいなあと思います。
ぜひ続編も出してほしいです。
コメント