【ネタバレ有り】名前のない星の物語 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:藍沢季 2014年8月にKADOKAWAから出版
名前のない星の物語の主要登場人物
ニコル
《名付け親》を職業にする青年。
セッタ
ニコルの相棒。
キュキュ
エパヌウィールで名を付けたお嬢さん。
コレー・トワイライト
ニコルに改名を依頼した男性。
名前のない星の物語 の簡単なあらすじ
ほとんどの人が名前を持たない世界。その世界で名前を持つには多額のお金が必要でした。ニコルは《名付け親》という職業に従事していました。世界中を旅し、依頼者にあった名前を付けていました。これは、長い旅の中で《名前》にまつわる物語。
名前のない星の物語 の起承転結
【起】名前のない星の物語 のあらすじ①
《名付け親》のニコルは相棒のセッタとともに“花を咲かせる”という意味を街、エパヌウィールに来ていました。
依頼人はランタナの花が目印の家のご婦人。
名を付けるのは、そこのお嬢さん。
街でそのお嬢さんに関する噂を耳にしました。
“死神に気に入られている”依頼主の家に着くまでの道程、ニコルはまるで後ろ指を指されるような囁きが聞こえてきました。
その囁きはどうやらこれから向かう依頼主の娘に関わることのようでした。
出迎えてくれたのは二十代にも見える若々しい女性だった。
女性に案内されるまま家に上がり、彼女の娘が現れるのを待っていました。
しかし、いくら待っても娘は部屋から出てきません。
母親はまた朝方にでも来てほしいと申し出ます。
「娘は夜な夜な街に出歩いているようなのです」太陽信仰の街で夜に出歩く人はいません。
それ自体が後ろ指を指されるからです。
名付け対象の娘は、名付けられることを拒みました。
そして、ニコルとセッタは夜に出歩く彼女のあとを追うことにしました。
【承】名前のない星の物語 のあらすじ②
夜光虫のような光が散らばったカラットの街で出逢った依頼には、ニコルの話しをまともに聞こうとしませんでした。
依頼人はすでに名を持っていました。
コレー・トワイライト。
それが依頼人の名前でした。
彼の依頼は、名付けではなく改名でした。
14回目。
彼がこれまで改名を行った数です。
彼にとって改名は初めてではなく、幾度と行ってきた通例のようなものでした。
彼が名を変えるときは決まって女性が関係していました。
「愛した数の女性だけ」今回も同じように女性が彼から離れてしまったから改名を行うというのです。
そんな彼に、もう止めませんかとニコルは言います。
そんなニコルを他所にコレーは商談があるからと出かけて行きました。
スミレと呼ばれていた女性が、コレーに代わってニコルの話し相手になりました。
スミレにコニーの生い立ちや一代で財を築いた出来事などを教えてもらいました。
そして、ニコルは一つの、これしかないという名をコニーに名付けることにしました。
【転】名前のない星の物語 のあらすじ③
依頼人が飼っているわけでもない野良猫へ名付けをした夜、彗星が尾を引いて流れていました。
光はセッタの肢体へと届きました。
その光はニコルたちにとって不吉なものが届いたことを意味していました。
セッタは説明もなしにパブル森林公園へすぐに向かえと真剣な眼差しで言います。
一日に一本しかないパブル森林公園行きの列車に飛び乗ったニコルはセッタにメッセージの内容を尋ねます。
今回は別の名付け親と二人一組で行うと説明します。
名付け親の名前はダイア。
ニコルよりもずっと先輩のベテランです。
ダイアと組んで行う仕事の内容は、『解名』。
名を奪う仕事になります。
対象者の名はエレスチャル・ハーキマー。
ハーキマーはパブル森林公園のある地の名で、エレスチャルはその辺り一帯の地主の名でした。
その彼が、何故『解名』を受けることになったのか。
両親から受け継いだはずの財がありながら、エレスチャル・ハーキマーは名をはく奪されることとなった理由が明かされる。
【結】名前のない星の物語 のあらすじ④
ソラ。
剥き出しの岩場に取って付けたような家屋が並んだだけの、町ともいえないこの辺り一帯の通称。
正式な名称などこれまでに一度も付けられたことがない場所。
依頼人の下へ向かうニコルとセッタはソラに来ていました。
久しぶりの名付けの依頼人は、長期旅行中だと何度も名付けを先延ばしにしていました。
依頼人の下へ向かう途中にあったソラで宿泊を考えましたが、ホテルなど一件もあるはずがありません。
宿泊に困っているニコルに、1人の少年が近づいてきて、片方の手を三本指立て、もう片方を全て立てました。
八枚でいいよ。
少年は家に泊めてあげる代わりに、金銭を要求しました。
ニコルは少年の提案を受け入れて、泊めてもらうことにしました。
少年は、鉱石を探し集めることを仕事にしていると言います。
少年との会話の中で、懐かしい名前を耳にしました。
ニコルの次の依頼までの数日間の間にできた心優しく逞しい小さな友人と交わした約束にまつわる物語。
名前のない星の物語 を読んだ読書感想
名付け親を題材にした物語は珍しいです。
まだ若いニコルが名を求める人たちと出逢い、その人となりに触れることで、新しい名前が生まれます。
人の良いニコルは、依頼人の些細な仕草を見逃さず、本人たちに今、そしてこれから必要となる名に意味を込めます。
誰かを想う気持ちや想いを伝えきれず天邪鬼になってしまう依頼人に、自らの中にある気持ちに気付かせる意味も込めてそれにふさわしい名を与えます。
きっとニコルは誰にでも優しく、何に対しても思いやりも持てるのだと思います。
だからこそ、『解名』と背景に胸を痛ませるのでしょう。
例え名がなくても強く生きようとする少年の気持ちに触れ、またニコルは前を向いて歩き始めます。
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