【ネタバレ有り】億男 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:川村元気 2018年3月に文春文庫から出版
億男の主要登場人物
大倉一男(おおくらかずお)
借金を返すため、昼間は図書館の司書として働き夜はパン工場で働く。借金の肩代わりが原因で妻と一人娘のまどかと別れた。
古河九十九(ふるかわつくも)
一男が学生時代に出会った親友。大学では一男と一緒に落語サークルに入っていた。現在は起業して成功し、億万長者となった。
安田十和子(やすだとわこ)
九十九が起業した会社で働いていた秘書。美人。今は結婚して主婦となっている。
百瀬栄一(ももせえいいち)
九十九の会社のエンジニアとして働いていた。現在は億万長者。馬主としてギャンブル好き。
千住清人(せんじゅきよと)
九十九の会社の財務責任者として働いていた。現在は怪しいマネーアドバイザーとして全国各地で講演をしている。
億男 の簡単なあらすじ
一男は借金返済のために妻と一人娘のまどかと別居し、昼は図書館の司書、夜はパン工場で働いていた。ある日宝クジで3億円を当てるが、ネットには億万長者の悲惨な運命が紹介されていた。不安になった一男は大学時代の親友九十九を訪ねるが、九十九は3億円を持って失踪。一男は九十九と関わりのある人物に会いにいく。人生で大切なものとはなにか、お金で買えないものはなにか、ということを考えさせられる作品です。
億男 の起承転結
【起】億男 のあらすじ①
一男は突然消えた弟の借金を肩代わりして、昼は図書館司書として働き、夜はパン工場のベルトコンベアの前に立ち、働いています。
合わせて月に40万円弱の収入で、自分と妻と娘の生活費以外を借金返済に充て、つましい生活を送っていました。
しかし、お金の問題が家族のバランスを崩し、妻と一人娘のまどかとは1年半にわたる別居生活を送っていました。
一男は妻とは電話でやりとりをするだけとなっており、たまに会うことができる9歳のまどかと出かけたり食事をしたりすることを楽しみにしています。
しかしまどかを食事に連れ出しても、お金がないことを指摘され高いメニューは遠慮されてしまいます。
あまり会うことができない上にまどかの誕生日という特別な日にも豪華な食事も食べさせてあげられないことを残念に思っていました。
幸せな家庭だったはずなのに、お金の問題が一男の人生に大きく影響していることに、仕方ないと割り切ることができずに悔しい気持ちを抱いていました。
【承】億男 のあらすじ②
そんなとき、偶然通りかかった商店街のくじ引きで宝くじが当たります。
そして、その宝くじで3億円を当ててしまいました。
一夜にして億万長者になった一男ですが、あるサイトで宝くじに当選した人の多くは不幸になってしまうという記事を読みます。
詐欺や強盗にあったり、親族や友人にお金を無心されることも多いようでした。
お金を得ることで本当に幸せになれるのか、「お金と幸せの答え」を知りたいと思った一男は、大学時代の友人で現在は億万長者になっている九十九にアドバイスをもらいに行きます。
久しぶりに会った九十九は高層ビルに一人で住んでいるようでした。
九十九はお金を実際に見て触るべきだと主張し、一男にお金を現金に換金させました。
現金を九十九の元へ見せに行くと、九十九は高級鮨店やモデル、俳優、有名歌手たちを高層タワービルに呼び集め、パーティーを開きました。
一男は欲望と快楽に飲み込まれます。
翌朝目が覚めると部屋がすっきり片付けられており、3億円と九十九が消えていました。
【転】億男 のあらすじ③
一男が九十九の手がかりを調べると、作った会社は大手通信会社に売却したこと、売却益は会社設立時からのメンバー三人と分けあったことが分かりました。
一男は九十九への手がかりを探すためこの3人を訪ねることにしました。
一人目は安田十和子です。
彼女はかつて九十九の美人秘書として働いており、九十九の恋人だったとの噂もあるようでした。
現在十和子はぱっとしない公務員と結婚し公務員宿舎に住んでいました。
恵まれた容姿と不幸な過去によりお金を憎むようになったが、お金を愛しも憎しみもしない夫と結婚し、平凡だが幸せな日々を過ごしていると一男に語りました。
会社を売却した際に分けあった10億円に手をつけることはなく、平凡な日常を過ごすことが十和子の幸せだったのです。
二人目に一男が訪ねたのは百瀬栄一です。
百瀬はギャンブル好きで毎日大金を賭けて遊んで暮らしています。
一男にも競馬で賭けるよう促します。
一男は最初のレースで勝ち1億円を手に入れますが、もっと稼ごうと次のレースにも賭け、お金はゼロになってしまいます。
落胆する一男に百瀬は、実は賭けは百瀬が仕組んだもので実際は一男は1円も得も損もしておらず頭の中で増えたり減ったりしていただけだ、お金とは実態のないそんなものだと教えます。
一男は最後に千住に会いに行きました。
千住は詐欺まがいのマネーアドバイザーとして全国各地で講演を行っていました。
千住は九十九と立ち上げた会社について語ります。
会社は「信じることができる人を求む。」
という九十九の求人に集まった4人で苦労して大きくしたものでした。
あるとき通信会社より買収の話がありました。
値段を釣り上げられ、最後に九十九以外の3人は九十九を裏切り、買収に応じてしまったのでした。
お金は人間の信仰により成立するもので、お金と幸せの答えを千住自身も探し続けていると語ります。
【結】億男 のあらすじ④
九十九は3人のお金と幸せの物語を聞き、自分の幸せについて考えます。
妻の万佐子と出会いまどかが産まれたことを回想し、お金を取り戻してもう一度家族としてやり直そうと万佐子に話します。
万佐子は一男と話す機会を持つために、まどかのバレエの発表会に一緒に行こうと一男を誘います。
一男は万佐子に、九十九からお金を取り戻したら借金を返済して家族みんなで暮らし、好きなものを全部買ってやれたらそれでいいと伝えます。
しかし万佐子は、今の一男はお金によって欲を失ってしまっている、欲は人を狂わせるが毎日を生きていくためには必要なものであることを教えます。
一男にあるのは家族でいたいという曖昧なイメージだけで、毎日を生きていくために必要な欲を失った一男とはもう一緒には暮らせないと告げます。
発表会の帰りの電車で一男は九十九に出会います。
九十九に「お金と幸せの答えは見つかったか」と聞かれ、一男は「まだわからない」と答えたのでした。
億男 を読んだ読書感想
この本を読んで、「お金と幸せの答え」とは、なんて難しい問いなのだろうと感じました。
大部分の人はお金がもっとあればいいのにと考えていると思いますが、お金が余るほどあると本当に大切なものが見えず、逆に不幸になってしまうのかもしれません。
世の中にはお金で買えないものもたくさんあります。
たとえば十和子が、大金を手にしていてもそれを使わない平凡な日々を愛しているように、お金よりも大切なものは自分で決めるべきことなのかもしれません。
また、九十九と九十九を裏切った3人の話から、時間と信用は時にお金以上に大切なものかもしれないと感じました。
これからの人生で自分の価値観を大切に育てていきたいと思うようになれる一冊でした。
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