「ビデオショップ・カリフォルニア」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|木下半太

「ビデオショップ・カリフォルニア」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|木下半太

著者:木下半太 2019年12月に幻冬舎から出版

ビデオショップ・カリフォルニアの主要登場人物

桃田竜(ももたりゅう)
主人公。高校卒業後にバイトを転々とする。ガツガツとした雰囲気についていけない。

出口正大(でぐちまさひろ)
桃田の悪友。キャンパスライフを満喫しつつも先を見据える。

若林(わかばやし)
桃田の同僚。スタイルはいいが愛想はない。

藪中祥子(やぶなかしょうこ)
桃田の元カノ。教育一家に生まれたが我が道を行く。

米村(よねむら)
桃田の雇い主。名画やB級ムービーに詳しく武勇伝を語ると止まらない。

ビデオショップ・カリフォルニア の簡単なあらすじ

これといった目標もなくフリーター生活を続けていた桃田竜の、現在の勤め先はレンタルビデオショップです。

先輩の若林にひと目ぼれをしますが、同じ地区に進出してきた競合店に引き抜かれて閉店の危機へと追い込まれます。

クセのある店長の米村や久しぶりに再会した藪中祥子と力を合わせて、桃田は自分たちのお店を守り抜くのでした。

ビデオショップ・カリフォルニア の起承転結

【起】ビデオショップ・カリフォルニア のあらすじ①

西海岸からは遠い洋画マニアの楽園

今年で20歳になる桃田竜がコンビニエンスストアをクビになったのは、世紀末最後の1年が始まろうとしていた頃です。

JR摂津富田駅の裏にある「ビデオショップ・カリフォルニア」で、アルバイトを募集していることを教えてくれたのが出口正大。

大学生ですが講義には出たり出なかったりで、ふたりでよくテレフォンクラブにたむろしてナンパ相手を探していました。

面接にいくと「米村」と名札をつけた異様に陽気なオーナーが現れて即採用、さっそく次の日の午前10時から出勤することに。

若き日のショーン・ペンと酒場で殴り合ったとか、無名時代のケビン・コスナーを飛行機の中で励ましたとか。

米村の昔話に付き合わされるのはウンザリでしたが、ここで1番の古株だという若林に仕事を教わる楽しみがあります。

真っ赤に染め上げた髪の毛、革ジャンに破れたジーンズ、豊満な胸元は「カリフォルニア」のロゴ入りエプロンの上からでも目をひくほど。

なんとか彼女にお近づきになりたい桃田でしたが、業務連絡以外は口を開こうともしません。

【承】ビデオショップ・カリフォルニア のあらすじ②

東北の虎に食い潰される

4月の終わり、会津地方で有名な大型チェーン「レンタル白虎隊」が国道171号線をはさんだ向かいに新規開店しました。

時給850円のカリフォルニアに対して1000円スタート、ボーナスや有給も完備、ビデオの在庫は10倍、新譜リリースのCDも。

オープンの初日に売上はガタ落ちして客足も10分の1にまで激減、個人経営の小さな店では太刀打ちできません。

勤務シフトが米村と桃田のふたりで埋まっているのは、若林の無断欠勤が続いているため。

毎日12時間以上のハードワークは体にこたえますが、それ以上にショックだったのは白虎隊の「夏祭り」を偵察した際です。

若い女性店員たちが水着でお出迎え、特に黒のビキニ身につけた若林がいるコーナーは大勢の野次馬が集まっています。

気分転換にとスバル・レックスの助手席に乗せてくれた出口、木屋町通と河原町のあいだにあるソウルミュージック・バーへ。

店内はサウナのような熱気であふれていて、中央のステージでは藪中祥子が半裸で踊っていました。

【転】ビデオショップ・カリフォルニア のあらすじ③

過去の恋人が現在の戦友に

高校3年生まで交際していたふたりでしたが、破局が決定的になったのは祥子が東京大学の文学部に合格したとき。

専門学校にも行かず半年ほど通った予備校も辞めてしまった桃田とは、到底釣り合う気はしなかったからです。

祥子のほうは在学中に映画を作っている先輩に夢中になった揚げ句に、アダルトビデオに出演したとのこと。

バレる前に退学してからはアウトローな生き方に憧れているという祥子、カリフォルニアの助っ人として駆け付けてくれました。

さらさらのロングヘアー、上半身はオレンジ色のタンクトップ、弾むように歩くたびにヒラヒラと揺れるミニスカート… 祥子をお目当てに来店者は伸びてきましたが一時的な盛り上がりで、まだまだ白虎隊には追いつていません。

店舗の一部を改装した米村、鉄板が敷かれたカウンターや生ビールのサーバーを設置します。

実家が有名店だという米村のお好み焼きはなかなかの味わいで、ドリンクを担当する祥子の人気もあって週末は必ず満員に。

桃田も慣れない手つきでキャベツを刻んだり、ひたすら皿洗いをしていました。

【結】ビデオショップ・カリフォルニア のあらすじ④

カリフォルニアからかりふぉるにあ、Californiaへ

一部の女性従業員がカメラの前でセクラハを訴えて問題になった白虎隊、全盛期のようなにぎわいは収束に向かうでしょう。

摂津富田に本格的な冬がやってきた12月、リニューアルした「お好み焼き かりふぉるにあ」は逆転勝利に酔いしれていました。

相変わらず昔の名画やハリウッド俳優に関するゴシップが大好きな米村、今後は食とエンターテイメントの両方が楽しめる店にしたいとのこと。

忘年会に桃田と一緒にくっついてきた出口、左ポケットには指輪の入った箱が。

出口のプロポーズをお断りした祥子、アメリカのカリフォルニア州へ渡って映画監督になると宣言します。

出口を慰めるためにどこかへ連れていくつもりですが、いつものテレクラしか思い付きません。

その出口もアパレルショップへの就職が決まっていて、自分がどんな職種に向いているのか分かっていないのは桃田だけです。

このまま非正規雇用で一生を過ごすつもりもなく、社会人としてバリバリ働くつもりもなく。

この1年で少しだけ成長できたことに感謝しつつ、受話器とピンクチラシで囲まれた小さな部屋で除夜の鐘を聞くのでした。

ビデオショップ・カリフォルニア を読んだ読書感想

今ではすっかり珍しくなった「ビデオショップ」が舞台、VHSからDVDへの移行がスタートした2000年を懐かしく思い出します。

大阪と京都のど真ん中にあるのに、「カリフォルニア」というネーミングセンスはいかがなものでしょうか。

ミレニアムの幕開けを風俗店の個室で迎えてしまったという、何とも残念すぎる主人公です。

魅力的な職場のお姉さんにはあっさりと裏切られて、元サヤに収まるかと思われていた祥子さんには置いてけぼりに。

最後までモラトリアムぶりが治らなかった桃田くんに、いつかステキな彼女と天職が舞い降りることを祈ってあげたくなりますね。

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