著者:二宮 敦人 2022年3月にTOブックスから出版
四段式狂気の主要登場人物
マユリ(まゆり)
本作の主人公。白い肌に鮮やかな赤い唇の美少女。女子高生で夕方にコンビニでジュースを飲むのが習慣。本当の名前はユウミで、娘になりきっているだけの40代女性。
ギンちゃん(ぎんちゃん)
マユリの幼馴染。中性的な顔と少し高い声が特徴。夕方の公園でマユリといつもジュースを飲むのだが、いつもマユリと同じジュースを飲んでいる。実はマユリがいつも持ち歩いている鏡。
リョウタ(りょうた)
マユリが通うコンビニの店員。ストーカーに悩むマユリの力になりたいと思っている、実は本人がストーカーだった。
パパ(パパ)
マユリの父親。精神科医。
マユリ(まゆり)
本物のマユリ。歌舞伎町でキャバ嬢をやっている。
四段式狂気 の簡単なあらすじ
美少女女子高生のマユリはストーカーに悩まされていました。
コンビニバイトのリョウタは大好きなマユリがストーカーに悩まされているのを知り、ストーカーを撃退したいと思っていました。
しかし、マユリのストーカーは実はリョウタだったのです。
さらにマユリの本当の名前はユウミだったのです。
彼女は自分の娘、マユリに完全になりきっていたのでした。
四段式狂気 の起承転結
【起】四段式狂気 のあらすじ①
マユリは白い肌に鮮やかな赤い唇の美少女です。
彼女は幼馴染のギンちゃんと一緒に夕方の公園でジュースを飲むのが日課でした。
最近はストーカーに悩まされているので、ギンちゃんとの会話はもっぱらストーカーについてばかりです。
リョウタは大好きなマユリがストーカーに悩まされているのを知り、マユリの力になりたいと思っていました。
いつも「ギンちゃん。
ギンちゃん」と笑顔を向けてくるマユリ。
そんな彼女が愛おしくてたまりません。
そんな時、マユリの部屋の窓に1枚のメッセージカードが貼られていました。
宛名にはなんと「マユリへ」と書かれていました。
マユリはすぐさまギンちゃんに相談をしました。
ギンちゃんは「ここ数日で顔を合わせた人で、マユリの名前を知ることができた人ではないか」と聞きました。
マユリはギンちゃんの言葉に一人の人物を思い浮かべました。
それが行きつけのコンビニで会計をするリョウタだったのです。
マユリは意を決してリョウタにストーカーを止めるように言いました。
【承】四段式狂気 のあらすじ②
マユリが帰るとマユリが大切にしている鏡が粉々になっていました。
粉々になった鏡には無数のギンちゃんが写っています。
なんと鏡はパパが壊したのです。
マユリは鏡に縋りついて大泣きするのですが、なぜか時々ギンちゃんの声が自分の声に聞こえるのです。
そしてギンちゃんが時々自分の顔になるのです。
自分の顔と交互に入れ替わりながら消えかけていくギンちゃん。
そしてついに、ギンちゃんは消えてしまいました。
「僕に会えなくても元気で」という言葉を残して。
パパは鏡を壊した後、次の行動に移ります。
夕食時、マユリに医者を手配することを告げます。
マユリは「学校は?」と聞きますが、そもそも学校はすでに卒業したことをパパから聞かされます。
マユリは自分が虚像と実像の区別がつかない病気があることが信じられず、ただただショックを受けます。
次の日、ショックが抜けないまま、パパが手配した医者のカウンセリングを受けるマユリ。
先生はパパとは違いマユリの話を真摯に聞いてくれます。
そんな先生にマユリは次第に心を開いていくのです。
マユリはついにパパの過剰な愛情が重いこと、そしてストーカー被害に合っていることを先生に相談します。
それを聞いた先生はパパに自重するように、そしてストーカーに注意するように伝えました。
しかし、一連の様子を見ていた男がいました。
ストーカーのリョウタです。
リョウタは一人二役をするパパを不審に思い、ずっと観察していたのです。
そしてついに、マユリを助けるために家に押し入りました。
リョウタは両手に警棒、パパは金槌を持ち、乱闘を繰り広げました。
マユリが部屋から出て階段下を覗くと2人の男が戦っていました。
一人はリョウタ、そしてもうひとりは先生です。
しかし、リョウタと先生が乱闘をするうちに先生の白衣が取れ、先生がパパになったのです。
先生が急にパパになったことに目眩を感じたマユリはついに絶叫し、嘔吐して倒れてしまいました。
【転】四段式狂気 のあらすじ③
パパがマユリを連れて車で飛び出した後、リョウタは何度も自分を責めました。
しかし、ある夕方、若く美しい少女が家の前に立っていました。
その少女はなんとマユリだったのです。
恐る恐る話しかけたリョウタですが、マユリと名乗る少女と会話が噛み合わないことに困惑します。
いつまで立っても埒が明かないと思った少女はリョウタの家に行くことを提案しました。
マユリだと思っていた少女は、明るいところで見てみるとまるで別人でした。
マユリにあった皺は無く、身体もマユリより細いのです。
リョウタは簡単にこれまでの顛末を話し、次にマユリが家庭の事情を話しました。
マユリの本当の名前はユウミで、彼女は目の前のマユリの母親だったのです。
元々精神科医と患者だった関係のパパとユウミはいつしか恋に落ち、マユリを授かるのです。
マユリは幼い頃から可愛がられており、さらに男をたらし込む術に長けていました。
そんな我が子に危機感を抱いたユウミはいつしかマユリになりきるようになり、次第に自分は女子高生のマユリという妄想にとらわれてしまったのです。
マユリはユウミを入院させるようにパパに進言するのですが、パパは受け入れず、結局自分が出ていくハメになったのです。
家族の経緯を聞いたリョウタはそれでもユウミを愛していると断言します。
そこでマユリはパパを殺害する計画を持ちかけました。
そして、準備が整った2人はパパの別荘に向かいました。
リョウタはパパを瀕死になるまで殴り、そのままショックで失神したユウミを地下室に監禁します。
トドメをマユリに任せていたのですが、戻っても彼女はブツブツ呟くだけで一向に動こうとしません。
仕方がなく、トドメを刺したリョウタは虚ろな目をしたマユリに刺されます。
なんとかマユリを地下室に閉じ込めたリョウタですが、寒さと眠気が押し寄せてきて、そのまま静かに眠りにつきました。
【結】四段式狂気 のあらすじ④
気がつくと地下室に監禁されていました。
なぜ自分が監禁されているのか、パパは結局死んだのか、何もかもが思い出せない状態になっていたのです。
頭が痛くなり、洗面台まで歩くと鏡がありました。
鏡に写っている自分はすごく疲れた顔をしていました。
まるでそれはユウミのよう。
そして、ユウミが自分がユウミであることを思い出して嬉しくなり笑うと、鏡の中マユリも笑いました。
しかし、その顔がユウミそっくりで思わず後すざりしてしまいました。
見間違えなのかと思い、思わず鏡に向かって「あなたは誰?」「私はマユリ」を繰り返します。
しかし、繰り返していくうちに発狂してしまい、さらに別荘で再開したユウミの気持ちを想像し、また発狂してしまいます。
そうしていく内に、マユリの精神はすり減り、自分がマユリなのかユウミなのかわからなくなってきました。
しかし、最後はこれはこれで幸せなのではないのかと思い始め、そしてゆっくり目を閉じるのでした。
四段式狂気 を読んだ読書感想
前半までは普通にマユリは女子高生だと思っていました。
ショーウィンドウを見つめるマユリを舐め回すような男性たちの視線、公園でチラチラと見る男性。
よほどマユリは魅力的な少女だったのだな。
と思っていました。
さらにパパとマユリのやり取りを読んで、パパの変態さに引いていました。
しかし、本物のマユリが登場してからは見方が一気に変わりました。
男性の視線の数々、パパとのやり取り、全てに納得がいきました。
そして、最後の最後で狂気に落ちていくマユリ。
小説には珍しい各キャラの視点の切り替えが、さらに物語を面白くしていました。
各キャラが見ている世界が矛盾しているのが、さらに狂気を感じさせ、目が話せませんでした。
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