「墓地を見おろす家」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|小池真理子

「墓地を見おろす家」

著者:小池真理子 1988年7月に角川文庫から出版

墓地を見おろす家の主要登場人物

加納哲平(かのうてっぺい)
本作の主人公で、セントラルプラザマンションに引っ越してきて、心霊現象に遭遇する。

美沙緒(みさお)
哲平の妻。家族と一緒に住んでいて、マンションの怪異に苦しめられる。

玉緒(たまお)
哲平と美沙緒の娘。

井上栄子(いのうええいこ)
同じ402号室に住んでいる住人で、心霊現象を通じて加納家と懇意にしている。

田端光枝(たばたみつえ)
マンションの管理人で、加納家と共に怪異に遭遇する。

墓地を見おろす家 の簡単なあらすじ

都内の墓地に囲まれた、マンションの一室を購入した加納家。

しかし引っ越してそうそうに、マンションのエレベーターや地下室などで怪奇現象が連続するのでした。

そうした中で住人たちが、次々と引っ越してしまいます。

最後まで残された加納家や管理人らは、マンションに巣食う悪霊に苦しめられ続けるのでした。

墓地を見おろす家 の起承転結

【起】墓地を見おろす家 のあらすじ①

新築マンションに転居してきた加納一家の不幸の始まり

ある時に加納哲平と妻と娘の3人一家が、東京のN区に建つ新築のセントラルプラザマンションに引っ越してきました。

マンションの周辺は緑が多く、幼稚園が近くにあって利便性も高いところでした。

また哲平らが入居した8階の801号室は南向きで広々として、2LDKなのに3500万円と格安なお値段。

色んな好条件が揃っていたのが、この物件を選んだ理由でした。

実は哲平は数年前に前妻を自殺で無くしていたので、哲平にとってはここが人生のやり直しの拠点になっていました。

しかしマンションは万世寺の広大な墓地と火葬場に囲まれたような寂しい立地にあり、それが新築ながらも値段が安い理由になっていました。

そんな環境が理由になってか、加納家が入居した時には、全14戸のうち半分ほどが空き家になっている状態でした。

そして加納家は一面に広がる墓地のことは気にしないように過ごし始めたのですが、初日にペットの白文鳥が死んでしまうというショッキングな出来事が起こります。

【承】墓地を見おろす家 のあらすじ②

住人が次々と転居する中で心霊現象の発端を知る美沙緒

加納家が入居してから、マンションではエレベーターなどで怪現象が頻発していて、住人が地下の「なにか」で怖い思いをしていることが明らかになります。

そして墓地に囲まれた立地も関係して、マンションから退去する世帯が続出し始めてしまいました。

この時点でマンションに残っているのは、加納家と仲良くなった井上家、そして大家の夫婦のみとなってしまいます。

建物ではさらに不可解な出来事が連続しはじめ、相変わらずエレベーターは勝手に停止したり選んでいない階へ向かうし、テレビに不吉な影が映るし、飼っている犬のクッキーが部屋の中を警戒し始めたりもするのでした。

命の危険を感じたのは、娘の玉緒が地下室で足を怪我してしまうという出来事です。

そこで美沙緒がマンションの過去の調査に乗り出します。

するとかつて霊園の移転問題があり、霊園の真下に地下道の建設工事をして、それが頓挫して埋め戻しているといった不可解な経緯が明らかになったのでした。

【転】墓地を見おろす家 のあらすじ③

転居を希望する者に次々に襲い来る悪霊の妨害行為

とうとう仲良くなった井上家までも、マンションから引っ越してしまう時が来ました。

しかし引っ越し当日にエントランスのドアが開かなくなって、窓ガラスには手がびっしり張り付くなど、墓地の悪霊に妨害されてしまうのでした。

しかし井上家は辛くもマンションから脱出することができました。

加納家ももうこの場所にはいられないと考えて、新たな転居先を探しに行きます。

しかし契約した物件が火災で焼失したり、候補だったマンションの一室の住人が死亡するなどの不可解な出来事が頻発してしまいます。

加納家の場合はマンションだけでなく、遠隔地でも悪霊に妨害されるという、とんでもない状況になっていました。

一方で管理人夫妻のほうは無事に転居が決定しますが、出ていく時に悪霊の妨害にあってしまうのでした。

こうした中でもマンションを管理する不動産は、幽霊マンションを優良物件と宣伝して売り出しているなど、まるで悪霊に操られているかのような状況も明らかになってきます。

【結】墓地を見おろす家 のあらすじ④

引越し当日に起きる悪霊の猛威に抵抗を諦めた加納家

最後まで取り残されてしまった加納家ですが、ようやく一軒家を見つけることができて転居が決定しました。

そして引っ越しの当日になって、引越や電気や水道など各種の業者も訪れることになりますが、悪霊によるとんでもない攻撃が待っていました。

まず引越し業者のスタッフはエントランスから中に入ることができず、うめき声を出して所在がわからなくなります。

哲平たちが屋上から確認して見ると、元は作業員だった人の黒いシミが地面に残って、湯気を立てているのでした。

哲平らは電気業者に対して、警察を呼んで欲しいと書いたメモを落とします。

それを作業員が拾い上げたのですが、その時に悪霊の謎光線が作業員に当たって、体をどろどろに溶かしてしまったのです。

引越の作業員も同じようにやられたのでしょう。

外に出ることのできなくなった加納家は、自室に閉じこもります。

しかし悪霊がエレベーターで上がって来ているのが分かったところで、物語は幕を引くことになります。

墓地を見おろす家 を読んだ読書感想

正直言って墓地が見えるマンションならどこにでもあるので、同じような住環境の人が怖がる作品かもしれません。

そもそも悪霊が発生した理由は墓地のトラブルと地下工事にあったようですが、餌食となる住人は墓地トラブルとは無関係だったので、理不尽というか運が悪かったとしか思えません。

極めつけは悪霊のあまりの攻撃レベルの高さで、自在にエレベーターを操作するだけに留まらず、遠隔地の関係者まで殺したり、ビームを放って殺害するなど信じられない内容でした。

業者の作業員が複数行方不明になったので、確実に事件となりニュースになっていると思われます。

小説が終わった後、政府や警察がどう対応しているのか気がかりです。

もしかすると対応する警察まで、悪霊に溶かされてしまうかも。

そのうち自衛隊が出てきてミサイルで墓地とマンションを破壊しようとするも、悪霊には敵わず全滅するのだろうかと、色々と派手な結末を想像してしまう小説でした。

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