著者:寺地はるな 2017年3月に角川春樹事務所から出版
今日のハチミツ、あしたの私の主要登場人物
塚原 碧(つかはら みどり)
本作の主人公。養蜂と出会い、いきいきとしていく。
安西 渉(あんざい わたる)
碧の彼氏。碧を連れて故郷である朝埜に帰る。
黒江(くろえ)
碧が出会う養蜂場の経営者。何やら訳ありの様子。
今日のハチミツ、あしたの私 の簡単なあらすじ
彼氏の故郷である朝埜に来た碧は様々な人と出会いかけがえのない日々を過ごします。
養蜂場を営む黒江やその娘である朝花、スナックのママであるあざみなど本当に色々な出会いを経験します。
その中でも特に昔自分の人生を変えた蜂蜜に出会ったことからこの土地で自分の居場所を作ろうと奮闘していく姿が描かれています。
今日のハチミツ、あしたの私 の起承転結
【起】今日のハチミツ、あしたの私 のあらすじ①
碧は彼氏である安西を支えるために心機一転して彼の故郷である朝埜に来ました。
元々碧はある人との出会いがきっかけで食に関わる仕事がしたいと思い食品会社に勤めていました。
一方彼氏の安西は夢であった画家としては上手くいかず、定職に就かずに碧の住むアパートで自堕落な生活をしていました。
そのことで喧嘩をすることも増え悩んでいたころ、安西があることを告げました。
地元に戻るから碧についてきてほしいというのです。
安西は隣県にある朝埜の出身で、家業を手伝うために帰るから碧に支えてほしいと伝えました。
そして碧がずっと気になっている「あさのはちみつ」についても何かわかるかもしれないと言ったです。
そのはちみつは碧が中学の時ある女性からもらったものでした。
そのころ、碧は同級生からいじめられ家族からも放置気味で生きる気力をなくしていました。
そんな中食ものどを通らずガリガリにやせ細っていた碧が歩いているところに子供を連れたある女性が声をかけはちみつを食べさせてくれました。
そしてその女性の言葉によって碧は救われて生きる力を取り戻したのです。
碧は彼女と別れた後必死に食べて勉強し食品会社で働くまで成長しました。
しかし命の恩人である女性と「あさのはちみつ」はどんなに探しても見つけることができないまま時は過ぎていました。
碧は悩んだ結果、仕事を辞め安西についていくことを選びます。
安西を支え、そして「あさなはちみつ」の手がかりを見つけるためです。
しかし、安西の実家を二人で訪れると彼の父は安西には自分が嫁を見つけるから碧は帰ってくれと言うのです。
仕事もやめてきたため後に引けない碧は安西の父に反論します。
そして安西の父は課題をこなしたら考えると言いました。
養蜂場の黒江という男から滞納している地代を回収しろというのです。
碧はここで生きていくために黒江のもとへ向かいました。
【承】今日のハチミツ、あしたの私 のあらすじ②
黒江のもとに訪れた碧は金はないと言われて帰されます。
しかし、帰りにたまたま会った老人との繋がりでスナックを営むあざみとその客であり黒江の同級生の三吉に出会います。
スナックの改装を夢見ているあざみに碧はカフェを営む食品会社で働いていたことを伝えると土日に雇ってもらえることになりました。
さらには三吉が格安アパートを紹介してくれなんとかこの街で働く場所と住む場所を得た碧は黒江のもとに再度向かいました。
自分に養蜂を教えてくれというためです。
そしてその指導料として支払ったお金を地代に充ててほしいと碧は言いました。
黒江はしぶしぶ了承し碧は養蜂を習うため黒江のもとに通うこととなりました。
そのとき碧は「あさのはちみつ」を知っているかと黒江に尋ねたものの知らないと言われました。
それから碧は土日はスナックでキッチンを担当し、平日は黒江の元で養蜂を習いました。
次第にミツバチはとても可愛く思えと碧はわくわくしながら養蜂にやりがいを見出していきます。
そんな碧の姿を見る安西は複雑そうでした。
慣れない事務作業に追われる自分とは違い碧がとても楽しそうだからです。
碧と安西の間には見えない壁ができ始めました。
ある日、碧はいつものように黒江の元に向かうと黒江の娘である朝花に出会いました。
朝花は黒江の離婚した妻の元で生活しているものの家出してきたといいます。
黒江は朝花を帰そうとしましたがそれを引き留めた碧によって朝花は黒江の家に暫く暮らすことになりました。
そして料理が苦手な黒江のために二人のごはんを碧が容易することになりました。
【転】今日のハチミツ、あしたの私 のあらすじ③
どこかぎくしゃくした親子である二人をどうにかするため碧は料理に力を入れることにしました。
その中で朝花の黒江を父として慕う気持ちに触れます。
碧は朝花の方から黒江に歩み寄ってあげてほしいと言い、朝花は黒江と少しずつ会話するようになりました。
そして自分と父を繋いでくれた碧にも心を許すようになります。
ある日碧は黒江からなぜ地代を滞納していたのか知ることになります。
黒江はろくでなし男を演じて自分と正反対である麻子と娘の朝花を遠ざけるようとしたのです。
麻子の再婚相手を安西の父であると勘違いしたことがきっかけでした。
そんな黒江の姿を見てまるで泣いた赤鬼のようだと碧は思いました。
その後、あざみのスナックで働く碧のもとに最近連絡を取っていなかった安西が彼の兄と共にやってきます。
しかし、いきいきとした碧を見て安西はなぜか怒って帰りました。
困惑する碧に安西の兄が衝撃の事実を伝えます。
安西の父が自分のところの会社の社員であり安西の同級生である中川りなという女性と安西を結婚させようとしているというのです。
しかもその中川という女性は安西の父の愛人なのです。
安西の父が離婚することはできないが息子の元に嫁いでくれたら一生面倒を見ると中川をそそのかした結果でした。
碧は安西の父の考えに嫌悪を抱き安西ときちんと話し合うことに決めました。
【結】今日のハチミツ、あしたの私 のあらすじ④
安西と話し碧は彼の幼稚さに呆れました。
自分は父に押し付けられた婚約者と仕事に気をもまれながらも碧と一緒にいるため頑張っているのに、碧は自分で居場所を見つけ笑っていて気楽そうだというのです。
碧はそんなことを言う安西にがっかりして別れることとなりました。
そのことを碧から聞いた朝花とあざみは各々碧を慰めようとしました。
そんな中黒江の養蜂場が何者かに荒らされる事件が起きました。
再建に大きな額がかかりそうなほどの損害に黒江はどこか投げやりになり、碧に先に給料を払うと言い金庫へ行きます。
そしてどうにかしなければと考えながら黒江についていった碧は金庫から落ちた書類を拾います。
そこには「あさのはちみつ事業計画書」と書かれていました。
碧は驚いて黒江を見ます。
そして思い立って黒江の元妻である麻子の元へ行きました。
麻子は黒江と別れたことを悔やみ、恩人がこんなしょうもない女になってがっかりしたでしょうと碧に言います。
そんな麻子に碧はそれでも私はあなたに救われたと伝えました。
その後養蜂場は三吉をはじめ多くの人が手伝ってくれたためなんとか続けることができるようになりました。
みんな碧がこの土地で出会った人たちです。
そして安西は中川りなとの婚約は断り、碧の元へ自分の絵を持っていきました。
その絵を見て碧は安西とこれからどうなろうと安西と過ごした日々はずっと自分に残ることを実感するのです。
碧は黒江の養蜂場に通いながら明日も生きるため精一杯今日を生きていきます。
今日のハチミツ、あしたの私 を読んだ読書感想
表紙のホットケーキの絵がとても印象的な本作は可愛い見た目とは裏腹で自分の人生とは何かについて向き合うことを余儀なくされる作品です。
主人公の碧の成長過程を読んでいくうちにとても勇気をもらうことができました。
特にこの作品ならではという点は蜂蜜です。
蜂蜜が碧にとって大きな岐路になっています。
そして黒江との出会いや安西との別れのようなことは自分の人生に起きてもおかしくないはずなのですが碧のように前を進み続けるかどうかがとても重要であると感じました。
帯の言葉のように「どこでも、何度でも、人はやり直せるし、変わっていける」を読者に伝えてくれる作品です。
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