著者:相沢沙呼 2019年9月に講談社から出版
medium 霊媒探偵城塚翡翠の主要登場人物
城塚翡翠(じょうづかひすい)
霊媒で、死者の言葉を伝えることができる美少女。香月とともに事件の解決に挑む。
香月史郎(こうづきしろう)
推理作家。過去に作家としての視点から難事件を解決に導いたことがあり、それ以降もたまに警察に協力している。翡翠とともに事件の解決に挑む。
鶴丘文樹(つるおかふみき)
巷を騒がせている連続殺人鬼。若い女性を狙っている。
鐘場正和(かねばまさかず)
警察官。香月に事件解決のアドバイスをもらいにきたり、情報を提供してくれたりする。
medium 霊媒探偵城塚翡翠 の簡単なあらすじ
3つのミステリーランキングで1位を獲得した本格ミステリーです。
小説家の香月史郎は、ある日霊媒を名乗るの城塚翡翠と知り合います。
翡翠が伝える死者の声に香月の理論を組み合わせることで、2人は殺人事件の解決に挑んでいきます。
一方、巷では若い女性を狙った連続殺人が起こっており、翡翠が狙われます。
最終章では翡翠と殺人鬼の対決が繰り広げられ、すべての種明かしがされて、物語は幕を下ろします。
medium 霊媒探偵城塚翡翠 の起承転結
【起】medium 霊媒探偵城塚翡翠 のあらすじ①
香月は、大学時代の後輩・結花から「女の霊がついているらしいので、霊媒に会うことになった。
一緒に来てほしい」と頼まれ、霊媒である翡翠と出会います。
後日、結花の部屋に行くことになり、香月と翡翠は結花の家に向かいますが、返事はありません。
部屋に入ると、頭から血を流した結花の遺体が見つかります。
床には割れたグラスと、小さな水滴。
翡翠が結花の霊を下ろすと、犯人が女性であること・床に落とした何かを探していたことが分かります。
香月は、翡翠から得た情報を立証する論理的な説明を考え、犯人を割り出そうとします。
後日、香月は喫茶店に結花の親友・舞衣を呼び出し、自首を勧めます。
舞衣は同僚の西村のことを好きでしたが、西村が好きになったのは結花の方でした。
結花が西村のことを気味悪って悪口を言ったため、カッとなった舞衣は結花と口論になり、結花を殴って殺してしまったのです。
結花が死に際に見たのは、割れた眼鏡の破片を探す舞衣の姿だったのでした。
一方で、連続殺人鬼の鶴丘は、若い女性の腹部をナイフで刺し、痛いかと聞きます。
苦しみながらこと切れていく被害者を見て、実験が失敗してしまったことを悟り、遺体の処理をするのでした。
【承】medium 霊媒探偵城塚翡翠 のあらすじ②
香月は翡翠とともに、小説家の黒越が持つ水鏡荘にやってきます。
若手作家や編集者たちとバーベキューをした翌日、書斎で黒越の遺体が発見されます。
犯行が可能だったのは別所・有本・新谷の3人ですが、翡翠は「犯人は、別所さんです」と香月に伝えます。
しかし、黒越と不倫関係にあったことや、書斎から指紋が見つかったことから、新谷が逮捕されることになってしまいます。
誤認逮捕だとして止めようとするものの、「新谷が犯人ではないなら、合理的な説明を持ってこい」と鐘場に言われる香月。
翡翠が見た「洗面所にあった鏡目線での視点の夢」や黒越のPCにパスワードロックがかかる時間をヒントに、新谷が犯人の場合は不合理な状況が起こり、最も合理的な状況が揃うのは別所が犯人の場合であるとして事件を解決に導きます。
別所は、自分が考えたアイデアが黒越の新作に使われていることに気づき、抗議に行ったところ、「お前には才能がない」と言われて激昂し、黒越を殺してしまったのでした。
一方で、鶴丘はまた「実験」に失敗していました。
今、彼が目をつけているのは翡翠で、いつか翡翠で実験を行いたいと考えていました。
【転】medium 霊媒探偵城塚翡翠 のあらすじ③
香月のサイン会に、女子高生の菜月がやってきて、「学校で起こった殺人事件を解決してほしい」と頼みます。
第一の事件の被害者は、菜月と同じ写真部で1年の遥香で、公園で首を絞められて殺害されていました。
第二の被害者は図書委員で2年生の由里で、同じく首を絞められ、建設現場の跡地で発見されます。
2人とも爪が切られていました。
翡翠の霊媒で、犯人が女性で、被害者から見て先輩であることが分かります。
写真部で図書委員・3年生の綾子や図書委員で3年生の琴音の話を聞きますが、犯人を特定できません。
そんな中、菜月が遺体となって発見されます。
これまでの事件と同じく何かで首を絞められ、公園に放置されていました。
香月と翡翠は、実家がカメラ屋で遥香・由里・菜月と繋がりがあった琴音が犯人だと特定し、指紋の採取に成功。
現場に残された指紋と一致したことで事件は解決するかと思われましたが、琴音が写真部のさくらと一緒に消えてしまいます。
翡翠は菜月が発見された現場の公園で霊媒を行い、琴音の居場所を伝えたため、さくらは助かります。
琴音は、可愛い女の子が息絶える瞬間を見たいという気持ちから、スカーフで被害者たちを殺害し、作品として写真撮影していたのでした。
そして、連続殺人鬼の鶴丘は、翡翠で実験を行うことを決め、実行に移します。
【結】medium 霊媒探偵城塚翡翠 のあらすじ④
香月と翡翠は、連続殺人鬼の正体を突き止めるために捜査をしていました。
手掛かりは得られず帰りにサービスエリアに立ち寄りますが、そのまま良い雰囲気になった2人は、香月の別荘に泊まることにします。
別荘に着くや否や、翡翠を縛る香月。
香月が、連続殺人鬼の鶴丘だったことが明かされます。
鶴丘は、幼少期に姉を強盗に殺されており、自分がナイフを抜いたことで失血死してしまったのではないかと考えていました。
そこで、姉が亡くなった年齢に近い女性をターゲットとして、姉は亡くなる際に苦しかったかを知るために実験を繰り返していたのでした。
翡翠を椅子に縛りつけ、姉を霊媒で下ろして話をさせろと命令する鶴丘ですが、翡翠が笑い始めます。
翡翠には霊媒としての能力は全くなく、人の微表情を読む力を暗示、マジックのテクニック、そして推理力によって、香月に翡翠は本物の霊媒だと信じこませていたのです。
翡翠は縛られたまま、これまで解決してきた事件の「解決編」を香月に聞かせます。
論理的に犯人を特定し、ヒントを出して鶴丘を誘導していたのでした。
一通り話し種明かしが終わったところで鐘場が踏み込んできて、連続殺人犯の鶴丘は逮捕されます。
実は翡翠も警察に協力しているひとりだったのでした。
medium 霊媒探偵城塚翡翠 を読んだ読書感想
ミステリーをよく読む人であれば、香月=鶴丘までは予想がつくかもしれませんが、それぞれの事件を少し変わったミステリーとして読んでいた状態から、最終章で正統派ミステリーであったことに気づかされる構成は予想できず、とても面白くて一気読みしてしまいました。
「すべてが、伏線」と帯に書いてありますが、その文言に偽りはありません。
翡翠ちゃんの変わりっぷりも笑えます。
真相が分かった後でもう一度読むと、色々な言葉の真意が分かって二度楽しめる作品だと思います。
作者の手のひらで転がされ、最後にあっと言わされるのがミステリーの醍醐味なんだなと再確認できる作品でした。
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