著者:ロバート・ベイリー 2020年1月に小学館から出版
黒と白のはざまの主要登場人物
トム・ジャクソン・マクマートリー(とむ・じゃくそん・まくまーとりー)
弁護士。もとアラバマ大学ロースクールの教授。
リック・ドレイク(りっく・どれいく)
弁護士。トムの共同経営者。
ボー・ヘインズ(ぼー・ヘインズ)
ヘネシー州プラスキの弁護士。トムのもと教え子。
アンディ・ウォルトン(あんでぃ・うぉるとん)
プラスキの実業家。元KKK(クー・クラックス・クラン)。
ボーン・ウィーラー(ぼーん・うぃーらー)
トムたちを狙う始末屋。
黒と白のはざま の簡単なあらすじ
トムのもと教え子のボーが殺人容疑で逮捕されました。
被害者のアンディは、ボーの父親を殺害を主導したとみられる男で、ボーは長年彼に恨みを抱いていました。
さらに発見された証拠はボーに不利なものばかりです。
トムはボーの無罪を信じて、彼の弁護に当たることを決意します。
しかし、そんな彼らを始末屋ボーンが付け狙っていたのです。
黒と白のはざま の起承転結
【起】黒と白のはざま のあらすじ①
ボーは父親の命日に荒れていました。
彼の父親は45年前にKKKにリンチされて殺害されたのでした。
母親は、父親が殺害された後に失踪。
それからボーは叔父と叔母に育てられた過去があります。
ボーは酔っ払っている最中に、父親の殺害を主導したと確信しているアンディに偶然出会います。
ボーは「眼には眼を」と言ってアンディを脅します。
アンディが去った後に、ボーはアンディの妻マギーにアンディは癌で余命がほとんどないことを知らされるのでした。
その日の深夜、アンディは何者かに殺害されてしまいます。
アンディに対する脅しと現場に残された証拠から、警察はボーを逮捕します。
ボーは酩酊していたため犯行時刻の記憶が曖昧でした。
彼は自分の弁護士として、恩師のトムを指名しました。
トムはもと教え子のリックとともに弁護士事務所を経営していて、ボーが連絡をするとすぐに彼の元へ駆けつけました。
トムはアラバマ州の弁護士だったので、ボーのいるテネシー州で弁護活動をするには地元弁護士の協力が必要でした。
そこでトムは友人のレイモンド(通称レイレイ)をチームに加えてボーの弁護にあたることにします。
相手の検事は刑事事件で無敗を誇るヘレン・ルイス、おまけに証拠と証言はボーに不利なものばかりと、厳しい戦いが予想されます。
【承】黒と白のはざま のあらすじ②
トムたちが裁判の準備にとりかかっている裏では、始末屋のボーンが暗躍していました。
ボーンはかつて、トム、リック、ボーに煮え湯を飲まされた経験があり、彼らのことを憎んでいました。
とくにボーには直接仕事を邪魔された過去があり、自分の手で殺害することを望むほどです。
そんなとき、ある人物からボーの弁護を妨害するように頼まれ、この依頼を嬉々として受けたのでした。
まずボーンはトムを襲撃して怪我を負わせました。
トムは裁判が始まるときまで動けなくなりました。
トムたちは状況の悪いなかでも明るい材料を見つけられました。
アンディは殺害される直前に地元のストリップ・クラブを訪れていました。
そこでダンサーをしているダーラはアンディのお気に入りだったのです。
ダーラは店をやめてフロリダにオイスター・バーをオープンしていました。
アンディがダーラに何か重要なことを話していないか確かめるために、リックはフロリダに向かいます。
しかし、ボーンは密かにリックの後をつけていたのでした。
リックは無事にダーラと接触できましたが、ボーンが見張っていました。
彼は二人を始末するつもりでしたが、ボーンを追ってきた捜査官に阻止されます。
トムはボーンが介入してくることを想定して捜査官を向かわせていたのでした。
ボーンは海に飛び込んで警察の手から逃れます。
人相を変えて再び機会をうかがうのでした。
【転】黒と白のはざま のあらすじ③
とうとうアンディ・ウォルトン殺害事件の裁判がやってきました。
トムとリックはダーラを証言台に立たせるなどして、ボーに対する疑惑を払拭しようとしますがなかなか思うようにいきません。
しかし、レイレイがボーの父親殺しの真相を知る証人を連れてくるというメッセージをトムに送ります。
しかし、裁判所に現れたのはレイレイだけ。
実は彼のいう証人とは彼自身のことでした。
なんとレイレイ自身も元KKKで、ボーの父親殺害の現場に立ち会っていたのです。
レイレイは、アンディ・ウォルトンがボーの父親殺しを主導したことを証言し、当時殺人現場にいたメンバーの名前を全員あげました。
さらに、アンディが死亡した夜、ボーは事務所に入ったままそれっきりで、代わりにマギーの弟であるジョージがボーの車を使って走り去ったことを証言したのです。
この証言によってヘレンは直ちにボーに対する起訴を取り下げ、今も生き残っているKKKの元メンバーは逮捕されることとなりました。
レイレイも逮捕され、警察に連行されて外に連れ出されましたが、ボーがその後を追います。
ボーは父親殺害の理由について聞き出そうとしたのです。
裁判所の前ではKKK支持者を始めとする多くの人々が集まっていました。
そのなかにボーンが潜んでいました。
ボーンはボーの姿を見つけるや、銃を取りだし発砲します。
しかし、ボーンに気づいたレイレイがボーをかばって代わりに撃たれてしまうのでした。
ボーンは彼を追ってきた捜査官たちに逮捕されますが、レイレイは瀕死の重傷でした。
レイレイは最後の力を振り絞り、ボーに「父親の死はバースデイ・プレゼント」ということを言い残したのです。
【結】黒と白のはざま のあらすじ④
発砲の混乱が収まったとき、トムはボーの姿がなくなっていることに気づきます。
ボーはアンディ・ウォルトンの農場を訪れていました。
彼は真実を知るためにその場所を訪れたのです。
しかし、そこにはアンディの妻マギーが銃を持って待ち構えていました。
ボーは今までアンディがプラスキのKKKの指導者と思っていましたが、実はマギーこそ黒幕だったのです。
アンディは死の直前に警察に駆け込み、過去の悪事を洗いざらい吐くつもりだったのですが、それを許さないマギーが元KKKメンバーとボーンを使って彼を殺害したのです。
その場にヘレンが駆け付けますが、逆にマギーに重傷を負わされてしまいます。
ボーも膝を撃ち抜かれて逃げることができません。
マギーは冥途の土産にボーに父親殺しの真実を教えます。
ボーの父親はボーと血のつながった親子ではなかったのです。
ボーは、アンディ・ウォルトンとボーの母親の間に生まれた子供だったのです。
ボーの父親は自分の妻との一件でアンディを脅していたのでした。
この脅迫を一番不快に思っていたのはマギーでした。
だから、彼女はバースデイ・プレゼントとしてボーの父親の死を要求したのです。
そして、マギーはボーの母親も殺害してその遺体を隠していたのです。
マギーが銃を放とうとしたとき、再び立ち上がったヘレンと駆け付けたトムによってボーは助けられます。
そして、ボーは自分の本当の出自を背負って新たな人生を踏み出すのでした。
黒と白のはざま を読んだ読書感想
トムとリックが活躍するリーガル・スリラーの第二作目です。
前作が面白くて購入したのですが、期待を裏切らない面白さでした。
法廷劇としては前作のほうが熱量がありましたが、今回は殺人事件の犯人はだれかという謎と、サスペンスフルな展開が楽しめました。
もと教え子で友人でもあるボーのため戦うトムの姿はカッコよかったです。
裁判が始まるまでは人から話を聞いたりするシーンがメインで中だるみになりがちなのですが、そこはボーンを使ってうまく盛り上げていると感じました。
タイトルの「黒と白のはざま」は黒人と白人の間のわだかまりという意味にもなるし、白黒はっきりしないという容疑者という立場を指す言葉でもあります。
しかし、すべての真相が明かされたときに、これはボー自身のことを表すものでもあると感じ、深い意味のある言葉だと思いました。
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