【ネタバレ有り】その女アレックス のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:ピエール・ルメートル 2014年9月に文藝春秋から出版
その女アレックス の主要登場人物
アレックス(あれっくす)
非常勤の看護師。
カミーユ・ヴェルーヴェン(かみーゆ・ヴぇるーヴぇん)
パリ警察庁の警部。
ジャン=ピエール・トラリユー(じゃん=ぴえーる・とらりゆー)
アレックスを監禁した男。
トマ・ヴァスール(とま・ヴぁすーる)
アレックスの異父兄。
その女アレックス の簡単なあらすじ
『その女アレックス』は、さまざまな文学賞を受賞し、10冠に輝いた驚異のミステリです。
アレックスという女性がいきなり監禁されるシーンから始まります。
彼女は何とか脱出するのですが、その後、驚くべきことにアレックスは殺人を繰り返すのです。
ここまででも衝撃的ですが、アレックスは自ら命を絶つのです。
この一連の不可解な行動の裏には、彼女の凄惨な過去があったのです。
その女アレックス の起承転結
【起】その女アレックス のあらすじ①
アレックスは非常勤の看護師。
ある日、彼女はジャン=ピエール・トラリユーという男に誘拐され、監禁されてしまいます。
ジャン=ピエールは「おまえが死ぬのを見たい」と言います。
死の恐怖におびえるアレックスですが、警察が誘拐事件を知り、捜査を開始します。
その指揮をとるのは、カミーユ警部です。
カミーユ警部は、殺人事件で妻を亡くしてからまだ完全に立ち直っていない状態でした。
それでも捜査を担当し、誘拐犯がジャン=ピーエルだと突き止めて、彼を探し回ります。
しかし、ようやく見つけ、彼を追い込んだところ、ジャン=ピエールは高架橋から身を投げて自殺をしてしまいます。
これで、アレックスの居場所を彼の口から聞くことができなくなりました。
一方、アレックスは衰弱するなか、決死の脱出を試みます。
そして、ついに自力での脱出に成功するのです。
警察もようやくアレックスが監禁されていると思われる居場所を突き止めますが、アレックスは脱出したあとで、そこはすでにもぬけの殻となっていました。
【承】その女アレックス のあらすじ②
無事に脱出したアレックスは、警察に駆け込むことなく自宅に戻り、途中まで進めていた計画を実行します。
それは殺人でした。
ジャン=ピエール・トラリユーは、パスカル・トラリユーというアレックスが殺害した男の父親だったのです。
ジャン=ピエールは復讐のために、アレックスを監禁していたのです。
アレックスが殺害したのは、パスカルだけではありませんでした。
そして、彼女の殺人は続きます。
アレックスは硫酸を使って、ホテルの女主人、IT機器のサービスマン、トラックの運転手を次々に殺害していきました。
その犯行は行き当たりばったりではなく、どれも計算されたものでした。
一方、カミーユは、監禁事件の被害者が警察に助けを求めていないことを不審に思います。
そんな彼が、今度は硫酸による連続殺人事件の捜査を任されます。
カミーユは、一連の事件を調べ、犯人が監禁事件の被害者だと推測します。
予審判事との摩擦もありながら、アレックスを追うカミーユでしたが、アレックスは意外な形で発見されました。
【転】その女アレックス のあらすじ③
殺人を繰り返したアレックスは、ホテルの一室で、ウイスキーと睡眠薬を一緒に呷り、洗面台に自分の頭をたたきつけて自殺したのです。
その通報を受けた警察は現場に駆け付け、連続殺人者アレックスを見つけることになります。
カミーユは最初、アレックスの死が、他殺か自殺かわかりませんでした。
アレックスの行動は自殺をする人間のものではありませんでした。
航空券を購入し、旅行の準備をし、タクシーの予約まで入れていました。
また、洗面台で頭を砕くのは、自殺としては考えにくい方法です。
アレックスの死を捜査するカミーユの前に、ある男の名が出てきます。
トマ・ヴァスール、アレックスの異父兄でした。
彼はアレックスが死んだ夜に、そのホテルに来ていたのです。
トマの話を聞くと、彼は電話でアレックスに呼び出され、ホテルに行ったけど彼女が約束の場所に現れなかったのでそのまま帰ったと証言しました。
アレックスの部屋には入っていないということでしたが、彼女の部屋からはトマの髪と指紋のついた睡眠薬の容器が発見されました。
カミーユは、これらの証拠がアレックスによる偽装だと見破ります。
しかし、カミーユ警部はトマの勾留を決定します。
【結】その女アレックス のあらすじ④
検死の結果、アレックスは何年も前に生殖器を硫酸で焼かれて、生殖機能を失っていたことが判明しました。
トマは、かつてアレックスに違法な売春をさせて、死ぬ寸前まで追い詰めていたのです。
彼女が殺害して回った人々は、昔アレックスを買ったか、トマの売春行為に協力していた人物だったのです。
彼女は、復讐のために殺人を繰り返し、自分の死をトマの犯行に見せかけることで、復讐を完了させようとしたのです。
アレックスの秘密を知ったカミーユは、捜査チームを集めて会議を開きました。
彼らはアレックスの遺志をくみ取ることにしたのです。
予備判事と話を合わせ、トマをアレックス殺害の犯人として逮捕することにしました。
トマは必死に自分がアレックスを殺したのではないと訴えますが、カミーユ警部は、アレックスが残した証拠を一つずつ上げていき、何もかもお前が犯人だと指し示しているとトマを糾弾しました。
こうして、トマは無実の殺人罪で逮捕されることとなったのです。
トマを逮捕したカミーユたちに後悔はありませんでした。
彼らは正義の元で働いているのです。
こうして、アレックスの無念を晴らしたのです。
その女アレックス を読んだ読書感想
とにかく大転換と言えるような、プロットの変化が見どころの作品です。
アレックスの行動に翻弄されて、彼女が死んでから明らかになる事実に衝撃を受けました。
復讐劇による殺人というのはミステリによくある構図ですが、その前後に監禁と自殺を挟み、アレックスの動機を伏せることで驚きのストーリーが出来上がっているのです。
そして、本書の何よりも特異な点は、最終的に警察が殺人者の遺志を汲みとり、一連の事件の根幹にあった悪に正義の鉄槌を下すという展開ではないでしょうか。
カミーユがトマを追い詰めるシーンは読んでいて胸が熱くなりました。
ミステリの面白さを再確認させてくれる作品です。
コメント