「炎の色」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|ピエール・ルメートル

「炎の色」

【ネタバレ有り】炎の色 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:ピエール・ルメートル 2018年11月に早川書房から出版

炎の色 の主要登場人物

マドレーヌ・ペリクール(まどれーぬ・ぺりくーる)
資産家の娘。のちに財産を失う。

ポール(ぽーる)
マドレーヌの息子。祖父の葬式の日に自宅3階から転落する。

デュプレ(でゅぷれ)
マドレーヌの元夫の右腕だった男。

レオンス・ピカール(れおんす・ぴかーる)
マドレーヌのお付き役。

アンドレ・デルクール(あんどれ・でるくーる)
ポールの家庭教師。マドレーヌの愛人。

炎の色 の簡単なあらすじ

『天国でまた会おう』の続編。

前作主人公の姉マドレーヌは、夫メルランと離婚して、平穏な生活をしていました。

しかし、父が死んでからどんどん状況が悪いほうへ向かっていきます。

息子ポールは転落事故で二度と歩けない身体になり、彼女の周りにいた人々が次々に裏切り、すべてを失ってしまいます。

そして、息子の身に起きた真相を知った彼女は、自分を裏切った者たちに復讐を誓うのです。

炎の色 の起承転結

【起】炎の色 のあらすじ①

 

暗雲

事件はマドレーヌの父マルセル・ペリクールの葬儀に起きました。

彼女の息子ポールが屋敷の3階から転落して、意識を失います。

マドレーヌは葬儀を抜け出して、ポールを病院に連れていきます。

ポールは何とか一命をとりとめましたが、対麻痺となり、二度と歩けない身体になってしまったのです。

それ以降マドレーヌはポールにすべてを注ぐようになりました。

幸い、マドレーヌには父が残してくれた遺産がありました。

マルセル・ペリクールは銀行を所有していて、かなりの資産家でした。

マドレーヌは600万フランと、250万フラン相当の価値がある屋敷を相続し、息子ポールには300万フランの国債が遺されていたのです。

彼女はペリクール氏の遺産の大部分を受け取ることになりました。

しかし、これを面白くないと思う人々がいます。

長年ペリクール氏の右腕として活躍してきたギュスターヴと、彼女の叔父のシャルルです。

さらに、彼女がポールにかかりきりになったことで、周りの人間関係にもすきま風が吹くようになっていました。

【承】炎の色 のあらすじ②

 

破滅へのカウントダウン

シャルルは議員を務めており、不祥事のもみ消しと次の選挙のために大金を欲していました。

ところが期待していた兄からの遺贈がほとんどなく、再選が危うくなったのです。

一方、長年銀行のために尽くしてきたギュスターヴは、贅沢な暮らしは望まぬものの、わずかばかりの遺贈に失望していました。

そこで彼は、マドレーヌに結婚を申し込み、彼女の夫となろうとしたのですが、平手打ちを受けて拒まれてしまいました。

この一件で、ギュスターヴはマドレーヌを憎むようになり、彼はひそかにマドレーヌを破滅させて、自分が儲かるための策略を練り始めたのです。

ペリクール氏が亡くなったあと、銀行の責任者はマドレーヌでした。

しかし、実際のまとめ役はギュスターヴがになっていたのです。

彼は、マドレーヌをそれとなく誘導し、どんどん彼女の不利益になるようなことをさせていきます。

マドレーヌはお付き役のレオンスが、ルーマニア油田の株がいいと聞かされます。

叔父のシャルルもその話には好意的で、彼女が読む新聞もルーマニア油田を持ち上げていました。

大恐慌が発生し、資産に不安を覚えたマドレーヌは、ルーマニア油田への投資を決めます。

ギュスターヴは反対しますが、これは彼の策略でした。

このころのマドレーヌは彼に反発心を抱いていて、彼が反対すればするほど、ルーマニア油田の株を購入に意固地になると踏んだのです。

結局、マドレーヌは資産の大半を、ルーマニア油田とその関連会社に投資しました。

こうして、他の油田の株が急落し、ギュスターヴは一番見込みのあるイラン油田の株を購入しました。

この陰謀にはシャルルとレオンスも関わっていて、シャルルもイラン油田の株を購入、レオンスはのちにギュスターヴと結婚して富を手にします。

その後、ルーマニア油田は急落、イランのほうは高騰して、マドレーヌはすべてを失い、ギュスターヴたちは莫大な富を手に入れたのです。

【転】炎の色 のあらすじ③

 

復讐の女神

破産したマドレーヌは屋敷を格安で売り払うことになりました。

ポールと介護士のヴラディとともに安アパートへ引っ越し、購入した2つのうちの一部屋を貸し出すことで何とか生計を立てていました。

つましい生活のなか、転落事故に口を閉ざしていたポールは、ついにその真相を口にします。

原因は、彼の家庭教師のアンドレ・デルクールでした。

アンドレは、教育と称してポールに厳しい折檻を加え、マドレーヌが見ていないところで彼に性的虐待まで加えていたのです。

ポールは、ペリクール氏に慰めを求めましたが、その彼が亡くなったことで絶望し、葬儀当日のアンドレの平手打ちが引き金となり、自ら身を投げたのでした。

それを知ったマドレーヌは怒りにとりつかれます。

ポールを虐待したアンドレ。

それと、自分たちをこの生活に追いやった、ギュスターヴ、シャルル、レオンスに復讐を誓ったのです。

彼女が頼ったのは、元夫メルランの一番の部下であるデュプレでした。

彼はメルランのもとで汚れ仕事を請け負っていた時期があり、マドレーヌの計画にうってつけの人物でした。

彼はマドレーヌに協力します。

まず、デュプレは、レオンスが重婚していたという秘密を暴きました。

マドレーヌは、この事実を暴露されたくなければと、彼女のその愛人を仲間に引き入れます。

こうして、彼女の復習は始まったのです。

【結】炎の色 のあらすじ④

 

再び歩き出す

ギュスターヴは株で大儲けしたあとは、銀行をやめて<フランス再興の会>という団体を立ち上げ、ジェットエンジンの研究を進めていました。

マドレーヌはそこにレオンスの愛人であるロベールを送り込み、さまざまな妨害工作をさせます。

その結果、私財を投じたプロジェクトは失敗し、ギュスターヴは資産の大半を失います。

マドレーヌは、さらに彼がナチスと裏で通じていて、ジェットエンジンの設計図を提供したように見せかけました。

フランス諜報部は、これを資産を失ったギュスターヴが、金のためにナチスに協力したとみて彼を逮捕します。

シャルルは税務担当の委員長となっていましたが、マドレーヌは彼が脱税を行ったように見せかけます。

こうしてシャルルも逮捕され、残るはアンドレ一人です。

マドレーヌは、彼を殺人事件の犯人に仕立て上げることにしました。

デュプレはアンドレの自宅に忍び込み、彼の所持品をいくつか持ち出し、それを鑑識の手がまだ入っていない殺人現場に残したのです。

現場からはアンドレに繋がる証拠が出てきたことで彼は逮捕されます。

マドレーヌが復讐を行っている間、ポールは商才を発揮するようになりました。

彼は美容クリームの製造・販売に乗り出したのですが、重要なのはクリームの効果ではなく、宣伝だと考えたのです。

ポールは魅力的な宣伝文句を考え、大きな利益を得ることに成功したのです。

こうして、マドレーヌとポールは再起を果たしました。

炎の色 を読んだ読書感想

一人の女の復讐劇というのが、このストーリーの根幹にあります。

作者のルメートル氏は、そこに当時の人々の生活や空気感を生き生きを描いています。

これはサスペンスでありながら、時代小説でもあると言えるでしょう。

本書の時代は、アメリカで起きた大恐慌や、ナチスの台頭が起きています。

それらの史実を、ストーリーに絡めることで、物語全体に厚みが出ているのです。

マドレーヌの復讐劇は爽快感こそありませんが、緻密に計算された計画は読ませるものがありました。

また、オペラを通じて徐々に自分を取り戻していくポールの成長も見どころの一つと言えます。

前作『天国でまた会おう』を読んでいなくても、十分楽しめることができる作品です。

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